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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      30 邂逅 その3

30 邂逅 その3



 シドが入り口から声をかけた。


「急げ!奥殿で非常の鐘が鳴っとる!

 宝物庫に残してきた仲間たちが心配じゃ!」


「さてと。どうやってここから連れ出すかだな」

 レイヴンが頭を掻いた。


 外ではすでに、反乱ののろしが上がっている頃だ。


 どっちか一人が竜になってシルヴァーンを連れ出して、残った二人がジョンたちに合流するか・・・。


「このまま通路を埋めちゃったら?」

 ライラの言葉に男二人はぎょっとする。


「シルヴァーンかかえてちゃ、助けに行けないわ。

 起きるまで時間がかかりそうだから、このままここに寝かせておいて、だれも入れないように入り口を閉じちゃえばいいのよ」


 シルヴァーンを埋葬するような気がしてルオーは身震いしたが、レイヴンは考え込んだ。


「そいつは・・・いい考えかもしれねぇ・・・」

「入り口のあの柱、石を何個か抜けば崩れると思うわ。心配なら竜に戻って、空から岩を五、六個落っことせばいいし」


 どこまでも過激なライラだった。






 取り急ぎジョン達の救援に向かうことにして、二人の竜は奥の部屋をそのままに入り口だけ塞ぐ方法を検討中だ。


 ・・・やっと、この手に取り戻したのに。

 ルオーは固く目を閉ざした竜王の髪に手を触れる。

 大丈夫。大丈夫だ。シルヴァーンは目を覚ます。

 たとえ何年かかろうと。


「よし。危ないから外に出ててくれ、ちび」

 

 立ち上がったルオーは、一度だけ振り返った。

 これでもう、会うことは出来ないかもしれない、彼の竜王。

 熱い塊が喉を塞ぐ。


 肩を落として部屋を出ようとしたルオーの頭を、ライラががしっと押さえた。

「大丈夫、あたしがずっとシルヴァーンを守るからね、ルオー。

 あんたが年取って死んじゃっても、目覚めるまでちゃんと見守って、あんたのこと話してあげるからね」


 ライラの気遣いはよくわかった。


 しかしライラといいレイヴンといい、どうしてこうヘッドロックが好きなんだっ!

 じたばたするルオーに、ライラが笑って力をこめて締め上げる。


「やーね、人間って首が短いんだもの。

 首を絡ませる一番親密な形とれなくて困っちゃうのよ」



 ライラと岩窟の外で待つが、レイヴンがなかなか戻ってこない。


「遅いっ!何やってんのよ、あのバカラスっ!」


 中で土砂の崩れる激しい音がした。

 埃にむせながらレイヴンが走ってくる。


「やー、悪い悪い!手間取っちまったぜいっ!」

「遅いわよっ!ばかっ!」


 手前の岩窟の入り口部分の通路が、しっかりと埋まっていた。


「奥にはまったく被害ないはずだぜ。

 もめ事が収まったら、掘り出しに来よう」

 竜に戻った二人にかかれば、簡単に岩をどけられるから、とルオーの肩を抱く。


「さあてー。ひと暴れして来るかっ」

「いいわねー。ストレス解消っ!」


 ワクワクしながら二人が駆けだす。


 しんがりを走るルオーは首をかしげた。

 走るレイヴンの格好が違う。


 マントに包んだ大きな荷物を背負っているのだ。

 荒っぽく包んであるその大きさと隙間から漏れる輝き。

 シルヴァーンを傷つけていた、武器。


「レイヴン、それは」

 レイヴンがにっと笑って親指を立てる。


「結構な重さだぜ。純金製に間違いない。いい値で売れるぜ、こいつは!」

 ライラが歓声を上げる。


「素敵!後で最高のワイン飲み放題っ!」

「こっから無事に出られたらなっ!」


 したたかな二人の竜を先頭に、ルオーたちはジョンを助けに走っていった。

 

 




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