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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      26 ラウンドウェル

26 ラウンドウェル



 少し下ると、ジョンが壁を探り、小さなくぐり戸を開けた。

 腰の高さまでしかない小さな戸をくぐると、山の奥深くにいると思ったのに、あたりは明るい。

 山に囲まれた小さな盆地に出たのだ。

 部屋の一面が、盆地に向けて開いている。

 ライラがふーっとため息をついた。

「ふう、岩の下って、苦手よ。

 あそこで変身がとけたら、なんて考えちゃうから」 


 岩の中で竜体に戻る・・・たしかに、それは怖いだろう・・・。



 ジョンは太陽の位置を確かめた。

「外ではそろそろ騒ぎが始まっている頃だ」

 ガランとした部屋。

 長い事使われていないらしく、作り付けの家具は埃をかぶり、床には吹き込んだ落ち葉が散らばっている。


「ジョン、君たちは仲間の所へ戻ってくれ。

 ここからは僕らだけで大丈夫だ」


 いざとなったら、二人の竜と空へ逃げられる。


 案内役のシド老人だけを共に、ルオーたちは『井戸』へ向かった。




「奥殿のさらに奥のここが、斎王の間と呼ばれる区画です。

 盆地を中心に斎王様とお付きの方々の居室が造られておりました」


 かわいらしい小さな盆地は、立ち枯れた秋草で埋まっている。


「斎王様がいらした頃は、ここは花に埋もれた見事な庭でありましたよ」

 周囲の山々が寒風と雪を防ぎ、四季折々の花が絶えなかったという。

 盆地の真ん中に円形の建物が建っている。

 柱と丸屋根。中央に大理石の丸い囲い。

 モザイクの床を踏んで近づくと、階段状の囲いの底に滾々と湧き出す水が湛えられている。

 水面は休むことなく揺れ動き、水底の純白の砂が湧き上がる水の力で持ち上がっては沈んでいく。

 

 ラウンド(円形の)ウェル(井戸)


 ここが、ラウンドウェル王家の中心。


「我々は遠回りして来ましたが、奥殿からあちらの山の中腹へ出て、階段を下りてくるのが正規の道です」

 

「ここは今、使われていないと言ったな」

「はい。モールの僧たちは王宮を神殿に改造するのに専念し、奥殿に手を付ける余裕がありませんでした。

 宝物庫や倉庫は荒らされましたが、住居部分は鍵をかけて放置したままです。

 奥の方は、慣れた者でも迷う迷路になっていますから」

「だが、ここに通う者がいる」

「え?あっ!」


 立ち枯れた秋草が、踏み分けられている。


 奥殿側の階段から、盆地を横切り、反対側の山の方へ。

 何度も往復したと思われる、踏みしだかれた跡。


「あちらには何が?」

「山腹を掘りぬいた、祭具室と倉庫があります」 



 



 

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