25 神殿都市 その2
25 神殿都市 その2
下働きの僧たちとすれ違いながら、荷物を運びこむふりをして、ジョンたちは大きな樽や麻袋が積み上げてある倉庫へ入った。
「整理の仕方は以前通りだな」
漆喰の剥げかけた煉瓦の壁を探っていたジョンは、いくつかの煉瓦を強く押し込んだ。
どこかでかちりという音がする。
「前に樽でも積まれていたら大事だった」
壁の一部がごとりと開く。
暗い通路が口を開けた。
「数人の王族しか知らん通路だ。俺はアルを抱いてここから脱出した」
「狭い。暗い。息が詰まる」
たいして進んでいないのに、邪魔なローブをひきむしるように脱いで、ライラが不満をもらした。
レイヴンも珍しく口をきかない。
閉所恐怖症なのか。竜は。
狭い通路は登ったり下ったりしながら、奥の山の中に入っていくようだ。
いくつか脇道はあったが、ジョンはどんどん先に進む。
壁龕はあっても中に灯りはなく、倉庫で用意した手提げランプの灯りだけが頼り。
しばらくして。ジョンが立ち止まる。
「奥宮の裏側に出た。この先が、宝物庫だ」
皆が敵を想定して身構える。
だが、何か、違和感を感じる、ルオー。
かすかに、下へ引かれる感じがする。
「ジョン」そっとささやいた。
「ジョン、『井戸』はどこにある?」
「『井戸』?」
訝し気に聞き返すジョン。
だが、仲間の一人から声が上がる。
「『井戸』なら斎宮の間だ」
なんと、井戸に心当たりがある者がいた。
灯りの中に進み出たのは、顔に大きな傷跡の走る老人。
「斎宮の間にある、ラウンドウェルの古い水の聖域だが、『火の神』を奉じるモールと水は相性が悪い。
政変以来閉ざされて、無人になっているはずだ」
「そこに行きたい」
「なんだと?宝物庫ではなく?」
「こちらは罠だ。そんな気がする」
ジョンの決断は速かった。
「罠なら陽動に使おう。斎宮の間ならば二階層下だ」
数名を選んで、老人と共に少し戻って、脇道に入る。
シドと名乗った老人は、ラウンドウェルの斎宮、グウェンダリナの叔母に当たる女性の小姓を務めたことがあるという。
「はるか昔の話ですが」十代の少年の頃だと、老人は笑った。
「グウェンダリナ様は幼い頃、よく叔母上の所で遊んでいらっしゃいました」
ルオーは老アンナの昔話を思い出す。
銀髪に花冠の少女が、丸い泉のほとりを回り、踊る。
「『井戸』?『泉』?」
「不純物のほとんどない、湧き水です。
硫黄の匂いのしない水は、この辺りでは珍しい。
王朝の始祖はこの水を尊び、ここに城を築きました」
この、ラウンドウェルに。
この王朝の聖域。
城の、中心だ。




