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竜王と黄金のハート  作者: 葉月秋子


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      23 竜王を求めて その4

23 竜王を求めて その4



 七日間かけて、アルバートと共にアスタバル、ランズエンドの反乱軍の指導者と会い、旧ラウンドウェルの廷臣であった者たちを説得する。

 その死からまだ二十余年。ロードリアスに嫁いでいったグウェンダリナ姫の面差しはまだ皆の心に深く残っていた。

 アルの思惑通り、姫の面影を残すよく似た二人の若者の姿は、大きな衝撃と期待をもたらした。

 力強く笑いながら、ラウンドウェル王家の復活を、ロードリアスの奪還を語るアルバート。

 二つの国が共に手を携えれば、活動期を乗り切ることが出来るのだ。と。

 魅力的な笑顔で壮大な夢を語るアル。

 だが夜ごとの酒量が増えていくのが心配だった。


「なに、行動に移るとなればしゃんとするさ。

 あいつはこういう待ち時間が一番苦手なんだ」


 ジョン・ノースウッドが言う。


 ルオーは彼と王宮勤めであった老人、現在の神殿の中に紛れ込んでいるスパイたちに、いまや火の神の神殿都市となった、旧ラウンドウェルの市街地と王宮の地図を頭に叩き込まれていた。


「各地の反乱と同時に、旧市街地で騒ぎをおこす。

 それを合図に、祭りのために地方から来た僧の一団に化けて、神殿に乗り込む。

 神殿内で二手に分かれ、旧廷臣に率いられた一団が破壊工作を。

 俺と仲間はルオーと共に宝物庫を目指す」


 ジョン・ノースウッドがルオーと行動を共にするのが、アルの不安の種でもあった。

 今まで常にアルと共に在ったジョンだが、アルの母、ラウンドウェル王妃の警護をしていた彼ほど、王宮内に詳しい者はいない。


「聖骸を取り戻す事こそが、この計画の要じゃ」

 シラネが宣言したからだ。


「『ルオー王子を中心に導き、王子が求めるものを渡すべし』」

 反乱軍の指導者たちが、インリア最高位の卜占者に反乱の成否を問うた時、シラネが皆に告げた宣託である。

「その成否こそが、反乱の成否と心得よ」


 だが宣託とは、解釈次第。

『聖骸』の事はいまだ皆には秘されており、人々は己の希望に基づいた推測をする。

『ルオー王子は、宝物庫に置かれている、ラウンドウェル王家の権威の象徴を奪い取りに行くのだ』と。




「セネカの動向がわからないのが不安だな」

 ここでは『腐れの隠者』と呼ばれる、セネカの足取りがつかめない。


「もともと人前に出ることは少なく、モールの王都にいる大臣と神殿都市の大司教の間を、単独で動いている男だ」

 いきなり神殿やモールの王宮に姿を現して、密談しては、また姿を消す。

 深くフードを下げている他の平の僧たちに混ざって動くので、その実態を把握するのは難しかった。


 その同じフードをルオーたちも着用し、地方から参拝に来た田舎者の一行として神殿都市に紛れ込む。

 ジョンを頭に、一行は三十名。咎められぬよう、ロングナイフ以上の武器は持たない。


「袖の中で手を組み、頭を下げて神妙に歩け。

 帯の結び方と数珠の色で出身と地位がわかるようになっている。勝手に結び直したりするなよ。

 街中の警備兵ならともかく、神殿の入り口の僧兵の眼は厳しいぞ」


 神殿都市に向かう前に、ジョンは一行に厳重に注意する。



「お世話になりました」

 出立の日。

 何より大事な荷物をその背に負って、シラネの前に膝をつくルオー。

 老婆は若者に近づいて、その頭を抱いた。

「我が名づけ子よ」

 頭を抱いたまま、天を仰いだ。

「『井戸』を探すのじゃ」

「『井戸』?」

 不思議そうに見上げるルオーに、稀代の卜占者シラネは微笑む。

「そなたの中心に、行きつくことを祈っておるよ」


 

 

 

 

 市街地の反乱を指揮することになっているアルが、シラネを恨めしそうに見下ろす。


「俺への言葉はないのか?ばあちゃん」

 どーせ俺は名づけ子でもないし。

 卜占で出たのもルオーの名だし。フン。


「いい年をして泣き言を言うでないよ」

 シラネは静かに微笑みかける。

 まったく、この大きないたずら坊主は。

 まじめで一途な従兄弟ルオーとは対照的だ。

 人々を魅了する笑顔の裏に、大きな闇を抱えている。


 中心に向かって、まっすぐに進んで行く、ルオー王子。

 手を差し伸べ、助けずにはいられぬように思ってしまう、脆さと強さ。

 常に共にある、あの素晴らしい気を放つ、人ならざる二人との信頼関係も、うらやましいのであろう?

 

『ゆるぎない忠誠を信じて、光に向かうがいい』

 シラネはその一言をアルに告げる。

 他を信じられるかどうかが、そなたの道を決めるのだ。


 ジョン・ノースウッドがそなたを捨ててルオーにつくことも、ルオー王子がこのままラウンドウェルを名乗ることも、ないと信じるのだよ。



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