22 竜王を求めて その3
22 竜王を求めて その3
「すごい迫力のばあさんだな」
「インリア最高位の卜占者であられるよ」
シラネとルオーが静かに話し合っているのを竜二人がぼんやり見ていると、ジョン・ノースウッドが横に立ち、木の椀を勧めてきた。
中身は、お♡、アルコールの匂い。
狩人、というより山賊の頭、といった雰囲気の中年男は、二人の横に、どっかと座り込む。
「あの方の先見と予言の腕は並ぶものがない。
陰離の民がどれほど遠く故郷を離れようと、固く結束していられるのは、一族に伝わるこの能力のおかげだという」
「先見と予言って、どう違うの?」
木の実から醸した酒の独特の風味が合わなかったらしく、珍しく二杯目を断ったライラが聞いた。
「先見は多くの情報を集め、全部をまとめて瞑想したうえで占い、下される結果。
予言はいきなり天から降りる、啓示、だそうだ。
詳しく聞くな。俺にもよくわからん」
「あんたはノースウッドの人だな」
「ああ。アルの母親はノースウッドの王の姉だった。
俺は彼女の血族として、親衛隊の長として、常に共に在ったんだが、モールが王家を急襲したときは、幼いアルを連れて脱出するのが精いっぱいでな」
ラウンドウェルを乗っ取り、ランズエンドとアスタバルを併合し強大になったモール。
孤立したノースウッドに表立って対立する力はなく、アルはインリアにかくまわれ、流浪の民の一人となって今日まで生き延びてきたのだ。
「各地に知らせを送るのに三日、集まるのに三日。配置に一日じゃ」
シラネは説明する。
各地で反乱の火の手を上げる。
計画から実施まで、異常な早さである。
「火の神の大祭まであとひと月を残すのみ。
始めから祭りの前夜に決行を予定しておった反乱じゃ」
「しかし、十日以上も繰り上げるのは無茶ではないか」
「セネカという男がルオーの存在を知った以上、聖骸を取り戻すのに、一刻も早く動いた方が良い」
「計画はまだ神殿の一部の者にしか知らされていないようだ。
モールの王族に知られたら、彼らは絶対に手放さぬようにあらゆる手を使ってくるだろう」
「軍事大国になったモールの、一番の悩みは何か。
それは食料の確保だ。
今までは一定量の穀物がロードリアスから入って来ていた。
竜王を失ったロードリアスの民が魔獣に襲われ、供給が絶たれてしまう。
各地で活躍していた傭兵たちも、モールに戻り、人口が膨れ上がる。
食料の供給を安定させ、傭兵たちに仕事をあたえるには?
魔獣のいない状態の、ロードリアスを手に入れればいい」
「火の神の神像に隠された竜王の気によって、魔獣は寄り付かず、火の神の威光により魔獣を退けたと、大々的に宣伝できる。モールにとってこんなチャンスは二度となかろうよ」
「だが、竜王の気は、同じ竜にはきかないはずだ。
かえって竜王に挑もうとする、強い竜をよびよせてしまうと・・・」
ルオーはそこで、言葉を切った。
「・・・それが・・・セネカの目的か?
他の竜にまで、害を及ぼそうと?」
シラネはルオーの眼をまっすぐにのぞき込む。
「そなたの運命をその手に取り戻すがいい、ルオー王子。
嫁ぐ日のグウェンダリナ姫に、その名を贈ったのは儂じゃ。
ルオー王子。
隠里〈オンリ〉の古語で、『流王』と綴る。
そして、その語は」
「『りゅうおう』とも発することが出来るのだよ」




