21 竜王を求めて その2
21 竜王を求めて その2
洞鼠と竜珠の一件だけは伏せて、セネカの過去を告げると、シラネはため息をついた。
「聖骸を献上した僧に間違いないようじゃ。
それほどに深い怨恨を持つ者なのか。やっかいだの。
あれは大臣バルボアの懐刀になって、火の神殿で高い権力を手にしておる。
『腐れの隠者』と呼ぶ者もおるよ。
業病を患った老人という触れ込みで、めったに人前に姿を現さぬと聞いたが、さて、因果なものよ・・・」
そう言うと、シラネは香草茶の器を置き、両手で印を組んだ。
そのまま目を閉じて、瞑想の構え。
「おい、ばあさん・・・」
しびれを切らしてレイヴンが声をかけると、老婆はカッと眼を開いた。
「あんたにばあさん呼ばわりされるほど年取ってはおらんわ!
黙っておれ!」
苦笑いしながら、商人ヤンガスが手招きする。
「ああなったら、しばらくこっちへ戻ってこない。
ゆっくり待つんだな」
・・・・・・・・・・・・。
「アル坊ですって?」
ライラがこそっ、とささやく。
アルがきっ!と振り向いた。
「昔の話だ!忘れろ!」
「はぁーい」
シラネが現実に戻って来たのは、一刻ほども経ってから。
さりげなく差し出された淹れたての香草茶を一口してから、おもむろに周囲の人々を見回す。
「インリアはルオー王子の援護に動く」
ざわ、と動揺する人々。
「このセネカという男、『腐れの隠者』は、大いなる害毒をまき散らす凶星。
一刻も早く阻止するのが吉じゃ。
『火の神』の大祭は一カ月余の後。それまでは聖骸が動かされる事はないであろう。
大祭前に、聖骸をセネカの手より奪還する。
アルバート王子の反乱の手はずは整い、民への根回しも終わっておる。
この機会を逃す手はない。
ランズエンド、アスタバル、モールの都、三か所で同時に火の手を上げ、皆の眼がそちらにむいているうちに、ルオー王子率いる一隊が火の神殿内部に侵入する。
改装前の王宮内の地理はわかっておる。宝物庫の位置も当時と同じじゃ。
宝物庫の鍵も、まあ、つてはないわけでもない。
ま、こんな所かの」
シラネはルオーに笑いかける。
「そなたの目的を知っている『腐れの隠者』が、たんと罠を仕掛けているであろうが、宝物庫の前まではそなたを連れて行ってやれるよ」
すべてが、動き出した。




