20 竜王を求めて その1
20 竜王を求めて その1
インリアの長老、シラネと老婆は名乗った。
「初めの船に乗っておった、異なる血をひく民。
それが我等陰離の民の先祖。
陰陽や卜占に優れ、他の人々とは付かず離れず、独自の文化を守って来た」
アルに淹れさせた香草茶をすすりながら、シラネは続ける。
「モールの火の神信仰に異端扱いされるまでは、各国の王族ともつながりを持ち、皆わしらの占いに頼って来たものじゃ。
グウェンダリナ姫に相談を受け、最初のお子が男子なら、ルオーと名付けるが良いと助言したのは私だよ。
ラウンドウェルが滅びた時、幼いアルバート王子をかくまって逃がしたのもな。
とんでもない悪たれに育ってしまったが」
じろり、とアルをにらむ。
だからばあちゃんで、頭が上がらないわけか。
「今でも各国につては残り、動かせる人材は多い。
今はモールを倒そうというアルバートの反乱に手を貸し、王宮や神殿から情報を集めておる。
聖骸の話を聞いたのも、モールの支配階級からじゃ」
シラネは声をひそめる。
「竜王の加護を失ったロードリアスは、この活動期を乗り切れない。
だが、モールの軍が加勢し、火の神の威光で魔獣たちを退ける。
竜王信仰の代わりに、火の神の信仰を拡げ、竜王神殿を火の神を祀る神殿に変え、祭壇に火の神の神像が安置されるが」
シラネはルオーを見つめる。
「祭壇の内部に、異教の神の骸を組み込んで置く計画だと」
怒りに頭が沸騰しそうになりながら、ルオーはつぶやく。
「・・・シルヴァーンの竜気があれば、魔獣たちは近づかない。
ギリアス大神官も、そういう計画を立てていたはずだ。
セネカがシルヴァーンの体を持ち去らなければ」
「あいつ、モールにも同じことを持ちかけたな。
魔獣を近寄せないのは、火の神の威光なんぞじゃなく、祭壇の中に置かれる仮死状態のシルヴァーンの竜気だ」




