17 残された人々 その4
17 残された人々 その4
まずい時にこの国に来てしまった。
ラウンドウェルの生き残り、アルバート王子を盛り立てて反乱の火の手を上げる直前に、もう一人の生き残り、ロードリアスのルオー王子が飛び込んできた。
これを利用しない手はないだろう。
だが利用されるわけにはいかない。
「喧嘩が始まるの?面白そうだね」
ややこしい話はわかんないけどさ、とライラが言う。
「人間たちの争いにかかわるもんじゃねぇよ」
もっとややこしい事になっちまうぞ、とレイヴン。
「セネカを見つけるのが難しくなってしまう」
ルオーは固い表情で言った。
火の神殿の僧侶を探すと言うと、アルに付き添っていたジョン・ノースウッドが忌々しそうに唾を吐いた。
「モールの狂信者共め!」
小国モールでのみ信じられていた宗教は、他の国々を併合した大国モールの国教となり、その単純で排他的な教義は傭兵たちに支持され、貴族と軍属の中に急速に広まっていった。
『すべてを焼き尽くす炎こそ最高の力なり』『信じる者に勝利を』
犯罪者、異端者、すべての罪人は神にささげる生贄として火刑に処す。
ラウンドウェルの王宮跡は火の大神殿に造り替えられ、宝物庫には各地から奉納された財宝が溢れかえっているという。
「アルバート王子をかくまったと、何人の仲間が捕らえられ、処刑されていったことか」
アルはにっこり笑うと、ルオーの肩に手をかけた。
「ここまで腹を割って打ち明けたのだ。
いとこ殿、ぜひ、協力してほしい」
ここまで知ったからには、ただでは返さぬと?
「僕には何のつても力もない。
二人の友人を巻き込みたくないんだ」
「なに、君一人だけで十分に支持となる。
見ろ」
ルオーと並び、二人で立った。
同じ青い眼。プラチナブロンドとシルバーの髪。よく似たほっそりとした姿。
兄弟のようによく似た二人の青年。
並び立てば、そのカリスマ性は倍加どころではない。
「グウェンダリナの美貌はいまだに語り草になっている。
アルバート・ラウンドウェリと、ルオー・ラウンドウェリ・オブ・ロードリアス。
かつての王家の血を引く二人が、今、モールの圧政に挑むのだ。
国民の絶大な支持を得ることが出来よう」
シニカルな笑い。
「成功すれば、褒賞は思いのままだ、ルオー。
噂通り、ラウンドウェルの傭兵隊を貸し出し、ザンダルーン王に挑んだっていい。
いや、それよりも」
アルは一転、まじめな顔になり、ルオーの耳に口を寄せて、ささやく。
「モールの宝物庫深く安置されているという、神の遺骸とやらを引き渡してもいいぞ」
ルオーの顔からさっと血の気が引いた。




