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短編集  作者: 石月 ひさか
恐怖を感じない理由
15/28

「俺、高校卒業したら抜ける。大学行くんだよ」


突然の言葉に、頭が真っ白になった。が、すぐに我に返り、詰め寄る。


「な、なんでだよ!?なんで急に」


公一がいなければ、メンバーは事実上解散になる。


だが深雪の本音は違う。


「急にじゃない。少し前から考えてたんだよ。親父には迷惑かけちまったからさ、高校卒業したら、少しは親孝行しないとならないしな」


深雪には親はいない。


その為、公一の言ってる意味が理解できなかった。


「それに、今はよくても、ずっとこのままじゃいられないだろ?お前も高校くらいは卒業しろよ」


「そんな事──」


できるはずがない。


深雪がこんな風にフラフラしている間、いつの間にか父親は消えていた。


高校に行く手続きをしてくれる相手も、そんな金もない。


義務教育すらまともに受けていない人間が、高校になんて行けるわけがない。


「多分、4年位は帰って来られない」


4年は長い。


深雪達が一緒過ごしたより1年も長い間、会えないのだから。


公一は何度か深雪に「高校には行け」と言い、去って行った。


止めたかった。


離れたくなかった。


これからもずっと、一緒にいてほしかった。


だけどそれを言葉にする術を知らなかった。


何て言えばいいのか。


どう言えばアイツを止められるのか。


そもそも自分に、そんな権利はあるのか。


「待てよ、公一!」


色々考えた末、深雪の口から出たのは、ただそれだけだった。


公一の脱退は、たちまち仲間内で騒ぎになった。


最も、アメリカの大学に行ったという事は知らないらしく、ただ行方不明扱いされただけだが。


親友を気取っていた笹川は何も聞かされていなかったらしく、キレて大暴れした。


「おい。テメェ、何か知ってんじゃねぇだろうな!?」


胸ぐらを掴まれ、眉を寄せる。


だが深雪も馬鹿ではない。


公一が深雪にだけ話してくれた事を、易々とバラしたりはしない。


「お前が知らねぇのに、オレが知るわけねぇだろ!」


そう叫ぶと、笹川は一先ず大人しくなった。


公一がいなくなった事により、仲間が少し減った。


まず、公一と高校が同じだった新道が抜けた。


それに続く様に、何かと深雪に突っかかってきていた香ヶ崎も去って行った。


残ったのは深雪と笹川を始めとする7人。皆、帰る場所も居場所もない。


なんとか高校を卒業した笹川は、更に悪どい事をするようになった。


記憶が間違っていなければ、恐らく笹川は、何人か殺しているだろう。


務所に入ってはいないから定かではないが。


そして正直な所、深雪自身も胸を張ってはいられない。


恐らく、殺してはいないとは思う。


だが、あれから深雪は、素手への拘りはやめた。

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