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短編集  作者: 石月 ひさか
恐怖を感じない理由
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16/28

⑦

皆でたむろしていた場所は、日中であっても滅多に人が寄り付かない、閉鎖された工場跡地だ。


敷地は広く、中には朽ちかけた建物や、元は従業員達の憩いの場だったのだろうと思われる公園もあった。


そこにはヤンキーは勿論、半グレや薬の売人等が入り交じった無法地帯だ。


素手じゃ到底太刀打ちできない。


喧嘩にはナイフを使うようになり、そうなれば自然と怪我も軽傷じゃ済まなくなる。


何度深傷を負わせたか知れない。


恐らく、八つ当たりもあったのだろう。


公一がいなくなり、また孤独になった。


たまに泣きたくなる時もあった。


だけどその気持ちが何なのかは気付かなかった。


2年後の深雪が18歳の時。


一時帰国してきた公一に、あの言葉を言われなければ、深雪はあのままのたれ死んでいただろう。


まさか公一が迎えに来るなんて思っていなかった。


更には結婚して欲しいとまで言われ、深雪は頷いていた。


その時やっと、この寂しさが恋だと気付いたのだ。


アメリカの生活は思っていた以上に大変だった。


英語など全くわからなず、地理的感覚も皆無。


初めはしょっちゅう、公一に愚痴っていた。


だが、それも最初の一年だけだった。


深雪の頭は、もともと空っぽだ。


よく、子供の方が慣れるのが早いと言うが、まさに深雪はそれだった。


見た目は大人でも、中身は子供と大差ない。


いつの間にか日常会話はできるようになり、不便もしなくなった。


深雪は公一に出会って、初めて居場所を手に入れられた。


そして、自分が女であり、近藤深雪だという事実も受け入れられたのだ。

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