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友情パワーで甦れ!誕生、魂のニューマシン!

ズオオッ!

ザバァッ!

池の表面スレスレをビームみたいな衝撃波が走ってきた!そのせいで大きな波が立って、それが俺のマシンにかかりそうになる。あれを受けたら転覆しちまう!大ピンチだ!


「あぶない!耐えてくれ!」


俺の叫びに答えるように、マシンは大きく揺れたけどバランスを取り直した!良かったってホッとしてた俺に、仲間たちが呼びかけてくる。


「油断するな!まだ奴はいるぞ!」


そうだったと気を引きしめた俺だったけど、ボート野郎はこのスキを見逃してくれなかった!


「こっちがガラ空きだ!」


ズガァァァーン!

ボート野郎のボートの先端から出た衝撃波で、俺のマシンのマストが折れちまった!ガーン!

ショックで動けない俺だったけど、でも仲間たちはそんな俺を見捨てなかった!波の間から仲間達のヨットが現れて、それにはなんと、ピカピカの新品のマストが積まれていたんだ!


「ヨット博士が作った新しいマストを持って来たぞ!これを使え!」

「助かったぜ!みんな、ありがとう!」


博士が研究していたマストは、新素材を使ってるから推進力が50倍になるスゴいものだ!ボート野郎を倒すために急いで作っていたけれど、もう完成していたなんてビックリだ!

俺はそれを受け取ってさっそく取り付けた。博士が作った超接着剤を使えばすぐ乾くからな!


ズオオバァァァッ!


俺のニューマシンは波を切り裂くようにして進む。すごく速いぞ!


「なんだと!?まるで稲妻みたいじゃないか!」


すっかりビビっているボート野郎に俺は胸を張って言ってやった!


「そうさ!俺のニューマシンは、波を切り裂く稲妻!サンダーボルトアブソーバーだ!」

「クソォ!ぜんぜん追いつけないぞ!なぜなんだ!」


すごく悔しそうにしているボート野郎に、仲間が言ってくれたぜ!


「当たり前さ、これは僕たちの友情がつくった、魂のニューマシンだからね!」

「魂…だと?クソォ!これが模型ヨットレーサーの友情の力だというのか!?」


その通りだ!俺たちは、俺たちの力で作った愛機(マシン)を信じる!そして、絶対に傷つけない!!


「俺たちにはマシンとの強い絆があるからな!だからヨットレーサーたちは、お前なんかに負けないぜ!」




⬜︎次回!仲間たちとの友情が作ったニューマシンで、ボート野郎をぶっ潰すぞ!⬜︎

〜先生に励ましのお手紙を送ろう!宛先は巻末を見てくれ!〜







「熱いレースでしたわ…」

「え?なんですか、それ?」


昂る気持ちを落ち着かせるように、ふうっと息を吐いたアデライドが雑誌を閉じた。その手元をパメラが怪訝な顔で覗き込む。

アデライドは読み終えた少年向け雑誌を丁寧に置くと、徐に立ち上がる。


「ヨットレーサーたちの熱い戦い、愛機(マシン)への強い想い…なんと示唆に富んだ物語なのかしら!パメラ、わたくしは感銘を受けました」

「あっ、ハイ」


小さな瞳をキラキラと輝かせる主人に、なんとも言えないパメラに変わり、無神経たちが水を得たヨットのように言葉を暴走させる。


「あ、公園で買ってたやつですね!その雑誌、自分も子供の頃たまに買ってましたけど、模型ヨットブームが終わったんで読むのやめました!」

「君ぃ!お店側の事情とかをストレートにお出しして、お嬢様の純情な感想をちぎったらダメでしょうがぁ!」


今し方感動した物語を、ただのダイマの成れの果て扱いされたアデライドは、ちょっとしょんぼりしたように見えた。だがその胸には既に熱いヨットレーサー魂が根付いていた!


「そうですわ…その読み方は"浅い"のです…。模型ヨットの宣伝という面は確かありますが、ここには友情と熱い魂が描かれておりますの。それを受け止めたわたくしは、ニューアデライドになりますのよ!」


声高らかに宣言した主人を、3人が無言で見つめる。


「ニューアデライドになりますの!!」


リアクションが欲しかったのか、もう一度大事なところを叫んでみせたアデライドに、我に帰ったパメラがまず返事をした。


「アッ…大丈夫ですよ。聞こえてますよ、お嬢様」

「前から言ってた悪役令嬢は大丈夫なんですか!?二足の草鞋ですか!?」

「君ぃ!お嬢様の可能性は無限大でしょうがぁ!将来の第一志望が悪役令嬢、第二が模型ヨットレーサー、第三は…うーん、お嫁さんとかですかネェ?」


勝手に主人の進路希望調査を始めたノンデリたちの、「お嫁さん」という言葉にパメラが鋭く反応した。


「お嬢様!私、聞いてしまったんですけど…プロポーズされたんですよね?!」

「あら、パメラも知っておりましたのね。ええ、そうですわ」


興奮状態の自分に比べ、随分と落ち着き払った主人の返事にパメラは目を白黒させた。


「どうなさったんですか…?もしかして、なにか思わしくないご事情がおありとか…?」

「いいえ、とても有難いお申し出だと思いましたわ」


キャリアプランの第二志望と第三志望の間で、大き過ぎる熱量の違い見せたアデライドは、意を決したような顔でパメラと向き合った。


「貴女には、きちんと事情を説明しなければなりませんわね…」


自室では常に罹患している内弁慶の発作が治ったのか、声が小さくなったアデライドにパメラが歩み寄る。ついでに特に呼ばれていないポールとジャンも当たり前のような顔をして集まってきて、チーム・アデライドのミーティングが始まった。







アデライドたちがまとまりのない団子になっている頃、ランベールはまた研究室にいた。だがこちらはいつもと違い、異物をひとつ混入させた状態であった。


「入っといてなんだけどさ。いいの?俺、ここにいて」

「そう思うなら入って来なければいいだろう」

「その言い方はひどくない?友達相手だからってさ」


「親しい仲にもってやつだよ」と、したり顔で宣うユベールに座った視線を返しながらも、ランベールはあえて何も言わなかった。


「エエーッ!まだユベールと会ってたんだぁー?フツー環境変わったらぁ、学生の頃の友達とか会わなくならない!?男同士なのに変だよねー!?」


ミモザの先制攻撃に「コレ、久々に聞くとキツイな」と口の中で呟いたユベールだったが、すぐにいつもの笑顔で向き合った。


「仲良しだからね、俺たちは。特別なトモダチってやつだよ」

「エエーッ!きもちわるーい!!」


珍しくミモザと意見が一致したランベールは、話題を変えるべく胸のポケットから取り出したものをユベールに手渡した。


「ああ、コレが例の」

「そうだ」


くすんだ青い石のカケラを長い指先で弄びながらユベールが問う。


「いいの?俺にこんなの渡して。お前好きだろ、こういうの」

「こっちでも調べてはいるが…今は時間がない。手は多い方がいい」


「ふーん」と言いながら、ニヤリと口角を上げたユベールの、その表情を目にして眉を顰めたランベールが「うるさいな」と小さな声で吐き捨てた。


「何にも言ってないよ、俺は」

「顔がうるさい」

「ひどいな。俺は嬉しいんだぜ?魔術バカだったお前に、研究以外にも大事なものが出来たんだなってさ」


「トモダチだからね」と付け足しながら、ユベールは研究室を見回す。モーリスたち他の研究員が手にした資料が、ちらほらと彼の目にも入る。それはすべてがアデライドに関するデータだった。


「アディちゃんを守りたいってのは俺も同じだよ。だからさ、俺からも話しをつけといてやるよ」

「話?誰にだ?」


心底不思議そうに聞いてくるランベールの、特に裏のなさそうな表情に、ユベールは思わずため息を吐いた。変わったとは思うが、やはりこの友人はどこか浮世離れして、地に足がついていない。


「まだ国内にいるよ。今、お前の計画にとって、一番の障害になりそうな御仁がね」


ようやく思い当たったのか、みるみる顔色を悪くするランベールを見て、ユベールが今日一番の笑顔になった。


「フフッ、セッティングは任せろよ。楽しみだな。俺も一緒に行ってやろうか?」

「いや…ああ、うん、やめてくれ…」


顔色に加えて歯切れも悪くなったランベールだが、その言いたいところを正確に汲んで、ユベールは頭の中で予定を立て始める。

そんな彼らに気を使う義理はないとでも言うように、部屋のドアが大きな音を立てて開いた。


「おい、ランベール!お前が呼び出したんだぞ!せめて迎えに来やがれ!また迷っただろうが!」


鳶色の髪をした男が、挨拶がわりの文句を並べながらズカズカと入ってきた。それにモーリスたちは特に驚くこともなく、「あ、ベルナールさんか」「こんちはー」「お疲れでーす」と、慣れた様子で返している。


「賑やかだね。ニコラも呼ぶ?」

「いや、アイツには別のことを頼む」

「あ゛!?なんでユベールまでいるんだよ?」

「エエーッ!またオジサンが増えたんだけどー?!」


ユベールはガラの悪い新加入オジサンをいなしながらも、受け取った青い石を丁寧に木箱にしまった。

この石の学術的な価値の有無に、ユベールはさほどの興味もない。だがこれは、長い付き合いの友人が初めて地に降りて始めようとしている総力戦の、その参加証なのだ。


設計時には想定していなかったであろう人口密度となった室内で、思い思いにしか行動しない人々が、たぶん一丸になろうとしている。それはまるで学生の時の文化祭のようだ。大人になってこんなに楽しいことはそうそうないんじゃないかと、もうバレてはいるだろうけど、口に出したらランベールには怒られそうなことをユベールは考えていた。

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