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最後の歌詞  作者: 創成
3/10

3. 「今弾ける曲」

家についた俺は、ギターを弾いていた。

今、唯一弾ける曲。

曲名は忘れた。

父さんから教えてもらった曲。

歌詞は耳コピで覚えている。

家の中は誰もいなくて静かだ。

母さんは仕事に行っている。

父さんが事故で死んでから、母さんはずっと仕事をしている。

いつも忙しそうに・・・・・

「ただいま〜」

瞳が帰ってきた。

「水希!またサボったでしょ!」

「なんの事だよ」

「掃除よ!そ・う・じ!」

「俺を信じたお前が悪い」

「なによ!水希が嘘ついてるなんてわかってるもん!」

「じゃあ逃がさなきゃいいじゃん。つーか待つなよな」

「ふんだ!水希はどうせ面倒くさい事があると逃げ出すんでしょ!」

「わかってんなら待ってなくていんだよ。俺待ってる暇あったら早く帰ってこい」

「だって、もし水希が帰ってきたら困るでしょ?」

・・・・・お前、ホント悪役向いてねーよ。

子供の喧嘩みたいに叫んでくる瞳。

「愛しい」なんて思ってないけど、

なくしたら困るものだと思う。

今はまだ、自覚する勇気なんてないけど、

しなきゃいけなくなる。

そん時は・・・・・瞳に告る。

でも、それまでは普通に過ごしていたい。

決心がついたら、瞳に曲を聴かせよう。

少しハズいけどラブソングを。

でも、それは瞳の気持ちを知ることも意味する。

俺でさえ怖いもんな。

瞳も怖いだろう。

気持ちを伝えるのは。

まだ「愛」とか「恋」とかよくわかんないけど。

それでもやらなきゃなんない事がある。

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