感謝すべき人たち
「ほら、もうここらへんで止めておきな」
両者が一歩も引かないところで待ったをかけたのは、楽屋へ戻ってきたリーダーの侑弥さん。
「もとはと言えば、先に千晴さんに手をだした秋兄さんが悪いと思いますけどね」
と最年少の雅樹さん。
う、聞かれてたのか...
「千晴に手出しちゃったんだー、兄さんも女に見境ないもんねー。ま、俺もだけど」
「はは、ほんとだ。よく見ると右頬のところ、少し痣になってるもんねー。秋兄は今まで女の人にどんなに酷いことしても殴られたことはなかったのにね(笑)あ、今までが例外なだけかー」
岬さんに潤也さんも。
「侑弥に雅樹、岬と潤也も。俺はこの女に殴られたんだぜ?なんで俺が悪い雰囲気になってんだよ」
嗚呼、この馬鹿一人除いてメンバー皆なんていい人達なんだろう。
私自身が、メンバーが仕事をしやすい環境をつくって支えていなければなのに、逆にいつも支えられてる。
馬鹿ひとりを除いて。
本当は腹が立ってもう一発殴りたいくらいだけど、よく考えてみたら私のスケジュール管理ができなくて起こったことだし、素晴らしい人格の持ち主であるメンバーに免じて私から謝ろう。うん、それがいい。
「秋さん、先ほどはすみません。顔を殴ったことや、数々の暴言を吐いてしまったこと、反省しています。メンバーの皆さんにも迷惑をおかけしました、本当にごめんなさい。それと、昨日はスケジュールの管理を私が怠ったせいで余計に疲れさせてしまって。」
下げた頭をもとに戻しながら、恐る恐るとしばらく何も言ってこないメンバーを見てみる。
「「「「. . . . 」」」」
!!!!!!!!!!!!
何故か呆然としてらっしゃる!!
何!私また何かやらかしちゃった?!
「なんか千晴が凄く可哀想になってきた」
「同感です、千晴さんが謝ることじゃないのに」
「千晴は悪くないよ〜」
「そうだよ!だから謝らなくていいんだよ」
なんか逆に庇っていただいちゃったみたい...
次の瞬間、侑弥さんにガッシリと両手を握られ
「千晴は謝らなくていいから、秋のことも。それと昨日のスケジュールのことも。悪いのは決して千晴じゃないんだから」
「そうですよ。第一、女性のカラダに勝手に触るなんてそれこそ重罪です。それに昨日のことは気にしないでください」
「あー、俺の千晴なのに。兄さんに先越されちゃった」
「ちぃちゃんの努力は、僕らが一番解ってるからね」
(....)
もう、せっかく我慢してたのに。涙でてきちゃったじゃん。
なんでこんなに良い人達なの?(ただ一人馬鹿を除いて)
「ふっ...う...う、ふぇっ、ヒック」
「わー、大丈夫?」
「痛いところでもあるんですか?」
「俺らなんかした?!」
「秋兄またなんかしたの?」
また駆け寄ってきてくれたメンバーたち。
違う。痛いところがあるわけじゃなくて、秋さんに何かされたわけでもない。
ただ、皆のこの気持ちが嬉しくて。
私がやってきたことを否定しないで、きちんと受け止めてくれて。
まだまだ未熟な私を認めてくれたことが何より嬉しかった。
どう頑張っても、こぼれ落ちた涙はなかなか止まらず、私はしばらく泣き続けていた。
「おい、秋!お前謝れよ!」
「は?何でだよ、侑弥。重傷なのは俺の方だぜ」
「なんでじゃないでしょう?強姦までしておいて。刑務所送り決定ですね」
「そうだそうだ!それに千晴は俺のだからね!」
「強姦?ふざけんな、そんなことしてねえよ!それに岬、千晴はお前のもんじゃねえよ!」
「ちょっと、僕らの話ちゃんと聞いてる?ちぃちゃんはいつも僕たちのために頑張ってくれてるんだよ。今日のことだって、いつまでたっても起きない秋兄のことを考えてだったのに。それなのに千晴が悪い?秋兄は人の心も持ってないんだね」
そして口論の末には...
「「「「あーやまれっ あーやまれっ」」」」
謝れコールへと続いてしまった。
「ふっ、ふふふっ。あはは」
ほんとうにそこまでしなくていいのに、私は皆のその気持だけで十分なのに。
思わず笑ってしまった。
「あっ、やっと泣き止んだ」
「よかったです」
「千晴〜」
「ちぃちゃんは笑顔が一番だよ」
「ほら、秋。なにか言うことあるんじゃないの?」
侑弥さんに促され、渋々と私のそばに秋さんがくる。
「....った」
「え?」
「悪かったな、千晴。..それと、ありがとな」
あの馬鹿男が謝った。
「ふふふっ」
「! 何笑ってんだよ!」
「何でもないでーす」
「じゃあ笑うんじゃねえよ!」
「はーい。ふふ」
「なっ!お前な!」




