第15話 再会☆でかい女剣士!
ウチの辺境伯領最北の街グラナス、
その冒険者ギルドでガラ悪い連中に絡まれた僕たち、
こんな所でテーブル出す訳にも、と思った所で思わぬ声がかかった。
「アンさん、ベティちゃん、ウチの辺境伯領の騎士、
辺境伯の近衛兵だったこともあるミリーナさんです」
「私は数年前からここで、辺境伯領に出入りする者を取り締まっている」
ということでヤカラにずいっと迫るミリーナさん。
「お、俺達はまだ何も」
「この坊ちゃんはリーンダース辺境伯家四男だ、形だけの冒険者だとしても、
また、辺境伯家として素材を売ったとしても、何もおかしくはない」「はひぃ~~~」
あっ、情けない声で逃げちゃった、
いくら強い冒険者でもウチの領兵全部が敵になっちゃったら、ねえ、
それと単純にミリーナさんは強い、めっちゃ強い、我が辺境伯領の女性騎士では一番だ。
(僕もお稽古で、何度泣かされたことか)
ただ15歳の今になってよくわかる、
この巨女の逞しくも太ましい身体は、
まあそこそこ、そそる! いやそんな性癖、今はいいや。
「改めてお嬢様方、私はこの辺境伯領に仕えるミリーナと申す」
「はい~、ジャック様の婚約者~、ミットフォード公爵家五女~
ジルアン=フォン=ミットフォード~、略称アンと申します~」
丁寧に可愛らしくお辞儀している。
「はじめましてぇ、聖女ベティと言いますですぅ~、
魔境の森のぉ、『森を清める聖なる村』からやってきましたぁ、
内外では封印村とも呼ばれていますぅ~」「ほう、ではさぞかし強いのでは」「魔法は使えませぇ~ん」
頭をかくミリーナさん。
「では出身はあまり言わない方が良い、過度に期待させてしまう」
「わかりましたぁ~」「してそのメイドは」「はい、ポーターを担当のナオミと申します」
「その割にはポーターバッグを持っていないようだが」「あくまで名目ですので」「形だけでも持っておけ」
うわおミリーナさん、やさしい。
「あっそうだ、それでミリーナさん」「なんだジャック、もうやったのか」
「まだ15歳ですよ、僕もアンさんもベティちゃんも」「ナオミもか」「つねられますよ?」
「私はそういうことはしませんが」「あっはい、38歳ですよね」「御所望ですか?」「何を」「さあ」
聞かなかったことにしよう。
「結婚できる年齢ではないか」
「はい、それで王都に籍を入れに」
「辺境伯領の領都でもできるのでは」「家を出されました」「そうか、そうだったか」
あっそうだ。
「ナオミさん、12個セットまだあります?」
「あとひとつくらいでしたら」「ミリーナさんにあげて!」
「はい、では……」「ほう、なるほど、全て解決した、それでもポーターバッグは持っておけ」
すげえな、わからないように出したはずなのに、
アイテムボックスの存在を見抜いたみたいだ、この洞察力よ!
11歳の頃、僕の着替えを覗いていた事は不問にしてあげよう、今更だが。
「どうぞ、ドーナツ12個詰め合わせセットです」
「メイド、すまない……美味しそうだな」「ということで僕らは宿へ」
「どこだ」「何でもこの街一番の宿を予約だけしてくれているとか」「ドーナツの礼だ、案内しよう」
あ、これって例のクエスト、
僕の警護もやってくれているのかな、
でもミリーナさんは冒険者じゃないからなあ。
(嫁に行き遅れたら、退役して冒険者になるって言ってたっけ)
今って何歳くらいなんだろ。
「おそらく、すぐ近くだ」
「わざわざありがとうございます、そういえばスタンピードがどうこう」
「人手が足りなければ、冒険者の集まりが悪ければ私も行く」「大丈夫ですか」「さあな」
……よくよく考えれば、
ミリーナさんって冒険者でいう所の、
A級くらいの力は余裕である気がする、ということは……
(まあ、駄目元で聞いてみるかあ)
ふたり必要なうちのひとりなら、まあ。
ということで冒険者ギルドから夜の街を歩きながら。
「あの、実は僕らも行ってみたいのですが」
「やめておけ、形だけ登録した冒険者が行く所ではない」
「実は強いんです」「誰がだ」「ええっと、どう説明したらいいのかな」
あの召喚魔法、実物を見て貰った方が早いんだけどな、
呑み込みの良いミリーナさんならすぐわかってくれるはず、
11歳のときに僕が胸を凝視しただけで『何だ、見るか、触るか』て言ってくれたミリーナさんなら!
(あの時、道を踏み外さないで良かった)
単純に怖かったのもあるけど!!
「冒険者が集まるまでまだ時間はある、
暇な時間であれば狩りを見てやっても良いぞ」
「でも依頼料がかかるんでしょう?」「歩合で良い」
まあ今のタイミングなら、
ぎりぎり辺境伯家四男の護衛任務だ。
「ジャックさま~、こちらのようです~」
「うっわ、でっか、領都にもここまでのは無いぞ」
「二年前に完成した、ここの酒場は美味いぞ」「相変わらずお強いんですか」「まあな」
一緒に受付まで入ってくれる、
貴族の身分証を出してっと……
これもどこかのタイミングで使えなくなっちゃうんだよな多分。
「はい、予約を承っております、ええっと四名様ですよね?」
「そうです、こちらの女性はここまでの護衛ですので」「……前払い、金貨30枚となります」
「たっか!!」「ジャック、払えるのか」「ええっと、さっきの28枚を」「はい」「あと2枚は……」
良かった、金貨2枚あった、
持参金だけど……ナオミさんの出した28枚と合わせてギリギリだ、
でもこれで残りは、少なくとも僕はあと銀貨7枚と銅貨ジャラジャラあるだけ。
(これでますます、明日、稼がないと)
僕はミリーナさんに頭を下げる。
「ありがとうございました!」
「では明日、朝遅く冒険者ギルドに来てくれ」
「早い時間は混むんですか」「あと私が起きられない」「えええ」「冗談だ」
そう言ってロビー直結の酒場へと入って行った。
「ありがと~ございましたですわ~」
「感謝したしますぅ~、ではまたあしたぁ~」
「では最上階へ案内致します」「あっはい、ホテルのメイドさんか」
一瞬、ナオミさんが姿・形・声を変えたのかと思った、
そして動く階段こと魔導昇降機で階を上がって行く、ナオミさんの後ろ、
いかつい男性がふたり僕らの荷物を持ってくれている、ナオミさんはあいかわらず手ぶらだけど。
(アンさんの大きい荷物も、ナオミさんのアイテムボックスの中らしい)
そうこうして五階に到着、
部屋に入るドアの前でホテルのメイドさんが僕らを向いて立つ。
「登録しますので身分証、あれば冒険者カードを」
「そっちの方が良いんですか」「ええ、それが一番確実ですね」
みんなそれぞれ渡すと、
ドアの横に四角く加工してはめてある魔石に当てている。
「……はい、これで明日の朝、チェックアウトまでは冒険者カードで出入りできます」
返却された、
最新の宿はこんなシステムなんだ。
「では中でおくつろぎ下さい」
「はい、あっ、これチップです」
「まあこれは、ありがとうございますっ!!」
……荷物運びの皆さんも含めて、
銀貨も3枚減っちゃった、まあいいや、
ということで中に入ると豪華絢爛、うん、ウチの客間を思い出す。
(意味不明なでかい壺もあるな)
実家で『コレ何に使うの』って聞いたらメイドが観賞用だってさ。
「では室内を確かめて参ります」
「ナオミさん、よろしく」「お菓子ですわ~」
「ウェルカム菓子ですねぇ~」「ちゃんと四人分あるね」
さてさて、
ナオミさんの宿チェックが終わったら、
明日について色々と打ち合わせをしなくっちゃ。




