第13話 自称勇者☆ただし80歳!
「すみませーん、依頼を受けてきましたー」
街の端っこ、
何気に孤児院の隣だなここ、
大きな屋敷ただし一階建て、うん、ご老人にやさしい。
(段差とかも無いな)
玄関で待っていると、
メイドさんというよりお手伝いさんがやってきた。
「あらまあ、では皆さんは」
「はい、冒険者パーティー『ゆるゆる☆ふわふわ』と申します」
「……大丈夫そうね」「えっ」「くれぐれも失礼のないように」「あっはい」
案内されて奥へ入ると、
広く快適な部屋、暖かい……
奥に半透明のカーテンがある、薄いピンク色。
「ホーリィ様、本日の話相手がいらっしゃいました」
「あらあら、まあまあ、では椅子を」「はい、四つですね」
「私は立ったままでも」「メイドの方も是非、長話になりますから」
というお手伝いさん、
でもメイドのナオミさんが椅子を運ぶの手伝っている、
そしてベッドの前にみんな座るとカーテンが開けられご対面。
(うん、よぼよぼのお婆さんだね!)
よく見ると傷の痕も多い。
「ふふっ、よく来たわねえ、私は伝説の勇者ホーリィよ」
「あっはい、剣士ジャックと申します、本日はよろしくお願いします」
「別に緊張しなくて良いのよ、いくら私が伝説の勇者だからって、ふふふ」
自分で伝説とか言っちゃうんだ、
まあそれだけ実績があるのだろう、
そのあたりの話をこれから聞ける、はず!
「寝たままだけど、ごめんなさいね」「いえいえ」
「そちらのお嬢様方は?」「魔法使いの~、アンです~」
「賢者のぉ~、ベティですぅ」「メイドでポーターのナオミと申します」「嘘はいけないわねぇ」
ぎくり。
「いや、僕は剣士ですよ」「これから頑張りなさい」「は、はい」
「アンもベティも魔法は使えないわね?」「なぜわかるのでしょうか~」
「使えないというかぁ、唱えても出ないのですぅ」「で、その媒体がそこのメイドね」
すげえ、見ただけでわかるんだ!
「あの、なぜご存じなのでしょうか」
「経験ね、とはいえそう名乗らないといけない事情があるのでしょう?」
「はい、召喚士とバレると行動が制限されるかと」「時間の問題よ?」「それまでにランクを上げれば」
ナオミさんも、
はっきり言うなあ。
僕もリーダーらしく話し掛けてみよう。
「ホーリィ様は、その、まだまだお元気ですね」
「口だけはね、もう80歳、全ての意味で解放されたわ」
「えっ、何か縛られていたんですか?」「79歳まではね、その話もしてあげるわ」
お手伝いさんがお水を用意している、
いやこれ白湯か、ホーリィお婆ちゃんの近くのテーブルに……
それだけ長話になるのだろうが、聞いて相槌を打つだけで冒険者ランクが上がる。
(まさに簡単なお仕事ですよ)
これで無礼な事する奴って、
どんなヤツなんだろうか、まあいいや、
僕らは良い子ちゃんで聞いていれば良いだけのこと。
「ではまずは私の生い立ちからね、
私は孤児院の出でねえ、両親が冒険者だったのだけれども……」
ここで思わず『隣の孤児院ですか?』と言いかけたが、
隣のアン嬢が僕の胸に手をやった、喋るなっていうことか、
つまりは聞き役に徹しろと、危ない危ない、ゆるふわでもしっかりしてるなアンさん。
「……それで孤児院にたまに来る勇者様に稽古をつけていただいてね、
私より更に昔の、伝説の勇者様でその名はグライスホーパ様というそれはそれは、
お髭がかっこいい勇者様で、ハーレムパーティーというのかしら、仲間の女性を四人連れて……」
あっ、これちょっとわかった、
一方的に聞いていて、眠くなるやつだ!
これ寝たら怒られて追い出されるな、なるほど、そういう試練か。
(太ももをつねる用意をして、っと)
まさにこれは『試練のクエスト』となる予感!
果たしてゆるふわな公爵令嬢&聖女様は耐えられるのか?!
僕は……うん、どうしてもってなったら、トイレに逃げちゃえ!!
「それでその勇者様は、後から聞いたら『勇者伯』という爵位を……」
――そして時は流れ。
「……ということでダンジョンを制覇し、私たちはS級冒険者の称号を得たのよ、
ここまでが話の半分、どう、皆さんのためになったかしら、ねえジャックさん」
「あっはい、凄いですね、四方同時に剣を切る技術、見てみたかったです」「見せたかったわあ」
うん、ピンポイントでいくつか名シーンを憶えておいて良かった。
「お嬢ちゃん達はどうかしら?」
「はい~、ドラゴンが誰も操作していないのに~、助けに来た話は感動しました~」
「お仲間のぉ、サンタナさんがぁ、かなり面白い方でしたぁ~」「七年前に死んじゃったけどね」
あっ、ここでナオミさんが立ち上がった!」
「お話が中間地点ということで、
ここでお礼にお茶会を開かせていただきたいのですが、
テーブルを出してもよろしいでしょうか、お茶とお菓子を出させていただきます」
おお、ここで新展開!
そういや少しお腹空いたかもね。
「あらあら、あまり量は食べられないわよ?」
「では小さい物を、まずは失礼してテーブルを」
「まあ懐かしい収納魔法ね、私も昔は使えたわよ?」
本当なんだろうか、
そして黄金椅子にはアンさんが座る、主催の席ね。
「では~、ナオミ~」
「はい、ホーリィ様にはホットミルク、皆さんにはコーヒーを」
「良い匂いですわ~」「独特の匂いですねぇ~」「眠気が醒める飲み物です」
ナオミさん、さすが!!
「お手伝いさんも、どうぞ」
「あっはい、ありがとうございます」
そして出されたお菓子は……!!
「あれっ、本当にちっちゃい、丸いお菓子」
「ポップドーナツです、本来は6種類ですが期間限定、抹茶ときなこもあります」
「ふふ、美味しそうね」「8個入りをそれぞれどうぞ」「これならいただけるわ」
口に入れると美味しそうに頬張るホーリィさん、
歯が多少アレでも、これなら大丈夫だからねっ!
僕も普通に……うん、美味しい、そして色んな味が楽しめる!
(これはこれで、アリだな)
コーヒーも普通に美味しくて刺激があって、
ポップドーナツの甘さを良い感じで中和してくれる、
うん、ドーナツとコーヒーって、セットなんだなあって思わせてくれる。
(これで後半戦も、しっかり眠くならずに聞けるぞー!!)
さあ、どんな話でも聞き流してやる!
いや要所要所はきちんと覚えないとねっ。




