鏡
調査を終え、オタク部屋に向かう。
かなりデカい収穫だ。
早く海斗に報告してやらんとな。
部屋に近づくと、オラっ!この野郎!といった声が聞こえてきた。
何か揉め事か?もしかして、かんづめが何かやらかしたのでは……背筋が寒くなる。
急いで扉を開けると、かんづめと瞬がこちらを向いた。2人の手にはゲームのコントローラーがある。壁のテレビには、キャラ対戦ゲームの画面が映っていた。
……ゲームか。
「あ、玲哉帰ってきた!」
「お帰り〜」
2人が俺を迎える。
「玲哉聞いてよ〜!瞬がずっと遠くからちまちま攻撃してさぁ!ひどくない!」
「ここが何処だか知ってる?シーケンスではそんな言い訳は通用しませんよー。玲哉くんもそう思うよね!?」
「はいはい。後でな」
騒がしい2人をスルーし、海斗に目を向ける。
彼は相変わらずゲームをしている。
しかし、彼の机の鏡をみると、モニターを見てる筈の海斗と目が合った。
目を擦ると、海斗の目は見えなくなった。
辺りを見回す。
この部屋、やけに鏡が目に入る。
しかも、どの鏡にも海斗の机が映るよう調整されている……
━━監視
ある可能性が頭をよぎる。
そっと後ずさり、部屋から出ようとする。
「どこ行くんですか?調査報告しに来たんでしょう?」
海斗が呼びとめる。
振り返ると、海斗がこちらを見ていた。
心臓がうるさい。
……いつも通り。いつも通りだ。
「あ…あぁ、分かった。かんづめ、こっち来い」
「ほーい」
かんづめがひょこひょこと歩いてくる。
かんづめの呑気さが、やけに安心する。
「報告する。昨日、俺達は校舎裏で、大量の丸いくぼみを見つけた。大きさは10センチほどで、近くの草が一部枯れていた」
「戦闘の跡ですね」
海斗が満足そうに頷く。
「そう。そして今日、外の壁を隅々まで確認した結果、昨日のくぼみの集合が、合計30個あることがわかった」
「なるほど。かんづめさんは?」
「えっとね。俺は建物の中を調べたんだけど、くぼみとかは見つからなかったな。違和感といったら、いくら探しても校長室が見つからなかったことぐらいかな。入学式でいたアカギ校長ってどこに居るんだろう……」
「ふむ。校長室はともかく、くぼみの数が被害者の数と同じですね。それらはどこにありますか?」
「そう言えば、くぼみは全て監視カメラの死角にあった……」
「これは、この能力の持ち主が犯人の可能性が高いですね。問題は、どうやって特定するかですが……」
そう言って、海斗は手元のフィギュアを取った。
しばらくの沈黙のあと、海斗が口を開く。
「そうですね。最強決定トーナメント。これを使いましょう。このトーナメントは全員参加です。どんな輩でも出ざるを得ません」
「いや、トーナメントが開催されるのは来月だ。それだと被害者が一人増えるだろ」
「しかし、下手に動くと私たちの計画が学校に漏れてしまいます。そんなリスクは取れません」
海斗が鼻を鳴らす。
「お前たちはDTAだろ!?国民を守るのが仕事じゃないのか!?」
「だからこそ、リスクは取れません。ここでバレてしまえば、将来もっと多くの国民がさらわれてしまいます」
理解は出来る。だが、信用は出来ない。
俺達は、ずっと海斗の掌の上で転がされている。
1人で動く。突破口はそれしかない。




