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7、爆進
高三の秋、修人は受験に向け爆進中だった。正に爆進。この短期間で自身のレベルを中三レベルにまで押し上げた。
「ねぇ、修人。大学、絶対、受かって、絶対・・・」
あの日、美香のいる店で飲んだあの日、美香は酔いながら、そう呟いた。アキラも進路に悩んでいたが、就職の内定が決まった。あの日はアキラも酔っていた。
「オメーよ、元々が、オメー、バカなんだからさー、落ちてもクヨクヨすんなよ・・・。オメーは、元々が・・・、てか、オメー、受かれ!落ちたら、承知しねーぞ!」
修人は爆進した。脇目も振らず爆進した。
…ありがとう…
…碧海、俺は・・・、やるよ・・・…
…うん、頑張って・・・…
…ぜってー、受かってみせる!…
…信じてる、から…
年末。
「お母、どしたの?これ?」
「ん?あぁ、たまには、いいんじゃない?クリスマスだし」
それは、チキンの丸焼きとクリスマスケーキ。ウチの食卓にそれが並ぶのは、初めての事だった。
「美味しいでしょう?」
「あぁ・・・」
まだ時間はある。
爆進、あるのみだ。




