22、新たな世界
糊のきいたシャツに新品のネクタイ、新調したスーツに黒の革靴。修人は照れ臭そうに笑い、どう?と聞く。
「ヒュー、服に着られてるー。でも、アンタ、いつのまに・・・」
お母が涙ぐむ。
借りるつもりだった。アキラの兄貴から。別に新調しなくても構わなかった。しかし、お母は譲らなかった。修人の晴れ姿を見たかったから。
「これで、スーツ、新調しなさい」
封筒の中には、ピン札が三枚。三枚のピン札を稼ぐのにお母がどれだけ汗水流していたか、修人は見て知っていた。
「お母・・・、に、似合うか?これ?あはは!」
「全く、似合わんね。あはは!」
「ほんじゃ、行ってくらー!」
「あいよ。行ってらっしゃい。・・・修人!」
「あ?」
「おめでとう」
「・・・あぁ」
入学式の朝、お母は今日も仕事だった。
入学式。
ピカピカの一年生がずらっと居並ぶ講堂で、修人は退屈し、鼻をホジる。出てきた特大のハナクソを、食うべきか?食わざるべきか?迷っている時、碧海が話しかけて来た。
…修人君、あれ!…
碧海の視線の先には、教員の列が、その中の一人の女には見覚えがあった。
「ブッ!水晶の女!」
周りの視線が修人に集まる。
…おっとっと…
…なんで!あの女が、教員の列に・・・…
…知らないわよ!…
暫くして、教員の紹介の時間があった。
『望月 保美教授』
心理学の教授であった。
やべえ、金、払ってねぇー・・・
ピンっと弾けた指の先、飛んで行く、特大ハナクソ。
前列の女の頭に着弾した。
振り返った女は、分厚いメガネを弄りつつ、サッと髪を撫で上げた。




