11、再出発
夏、修人は陳氏の元にいた。野菜を切り続ける日々が続く。
「いいかい?修人。丁寧に切りなさい。早さは気にしなくてもよい。スピードとは、実は、早いも遅いも、同じ事なんだよ」
正直、意味は分からなかった。ただ、一つ一つ丁寧に切り続けた。
「スローリー、スローリー」
三カ月後、なるべく遅く切ってるつもりだったのに、何故か、早く終わってしまう。
「もっと、遅く。遅く。丁寧に」
二カ月もすれば、また、早くなる。遅く、遅く、丁寧に、丁寧に、意識する。
これは意外な効果をもたらした。学業にも役立つのだ。なるべく、遅く、遅く、丁寧に、一つ一つ、丁寧に。学業において、遅くを意識すると、早く身につく。逆に早くを意識すると、身につくのが遅い。遅く、遅く、もっと、遅く・・・。
冬が来た。年末。
年明けには二度目の受験だ。だが、焦らず、一つ一つ、モノにして行く。
…頑張ってるね…
…あぁ、なんか今、勉強が、楽しいんだよな。あはは…
…凄いよ。修人君。…
…ただ、今度の受験には、間に合わねー、…
…え?…
…分かるんだ。自分の力量が・・・…
…え?…
…来年、下手すると、再来年かな?…
…そんな・・・…
…受験の凄さが分かって来たよ。みんな、スゲー努力して来たんだなぁ…
…そ、そんな・・・…
…大丈夫、この方向で歩けばいつかは着くよ…
…・・・…
…大丈夫…




