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ブラッド・ZERO  作者:
第3章 カルバナ帝国編
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第78話  厳しい特訓!

「武器は杖以外に使ったことはないのか?」

「うん」


 ここは魔王城――

 あれからチャンネを残し一旦城へ帰って来たスコールとアイはこれから鍛冶屋で買って来た短刀の特訓である。

 スコールは短刀を鞘から抜くとアイに見せながら、


「まず武器を使う前に短刀を持つ意味を理解しておかなければならない」


 アイは背筋を伸ばし敬礼をしながら、


「はい! 大先生!」


 スコールは眉をひそめながら、


「おい。真面目にやらないと教えないぞ」

「ちゃんと聞いてるよ!」


 疑いの視線をアイに向けるが、一々突っ込むのも面倒だ。


「アイは短刀を使うにあたって剣技を習得する必要はない。覚える技はたった一つでいい」

「え? そうなの?」


 スコールは大きく頷いた。


「本来、魔法使いのお前が近接武器に頼らなければならない事態を想像してみろ」

「うーん……なんだろ?」


 どう見てもアイは分かっていない様子だ。

 スコールは大きなため息を吐くと、


「魔法使いが魔法以外で戦うことなど不測の事態以外にありえない。純粋に何かしらの方法で拘束された場合や格上の相手と戦う場合など魔法が通じない場合だ」

「ほむほむ!」

「では、何が必要か分かるか?」

「わかりません!」


 自信満々に答えるアイに喉まで文句が出かかるが何とか耐える。


「それは、隙を突くことだ。アイが俺に正面からこの短刀で戦いを挑んで勝ち目がないのと同様に魔法で倒せない相手を倒すことなど不可能だ。だからこそアイに必要な技というのは敵の一瞬の隙を確実に捉えることのできる技だ」

「なんかカッコいいね!」


 スコールは短刀を構えると闘気を高める。


「刀は魔力結晶がないために闘気伝えるのが難しい。だがその分使いこなせた時の威力は絶対だ」


 刀の様な魔力結晶がない武器で一撃必殺の威力を出すには腕を加速させてやればいい。

 それは単純に武器に闘気を伝えるだけではコスパが悪いからだ。

 刀を振るうのは腕でありそれが速くなれば結果威力も上がる訳である。


 そして扱う属性は風だ。

 刀を体の一部と考え腕の部分に風属性を纏うイメージで突く――

 周りの風がなびいた瞬間、スコールは凄まじい速さの突きを繰り出した。


「おー! 凄い凄い!」

「感心してないでアイもやってみろ」


 くるりと短刀を返しアイに渡す。

 アイは直感タイプであるため、小難しく言葉で説明するよりもやらせた方が早いだろう。


「やれって言われても……」


 アイは短刀を構えるとそのまま固まる。


「最初は何も考えず闘気を集めて突いてみろ」

「うん。分かった!」


 アイは一瞬、真面目な表情になると闘気が高まるのが分かる。

 そして闘気の高まりが最大に達すると同時に素早い突きを繰り出した。


「ダメだ。振りが大きすぎるし闘気を集める時間も長すぎる。それだと折角とったスキも意味をなさないぞ」 


 スコールの指摘に頬を膨らませながら、


「初めてなんだからもう少し優しく指導してよ! そんなんじゃモテないよ!」


 魔法使いのアイはルータスと違って闘気の扱いが得意である。

 説明なく見よう見まねでやったにしては十分だろう。

 しかし覚えることはまだまだあるのだ。


「闘気を集める。剣に伝える。攻撃する。これを同時進行できる様になるまで練習だ。敵が攻撃に気付いた時にはすでに体に刺さっているのが理想だな」

「要はスキをついて当てればいいんでしょ」

「簡単に出来れば苦労はしないぞ」

「そうかな――あっ!」


 次の瞬間、アイは小さな小石につまづき前のめりに倒れそうになった。スコールは素早くアイを受け止める。

 アイはスコールの胸に飛び込む形となり胸に顔を埋めながら抱きついた。

 スコールはいきなりの事態に動くことができずそのまま2人は固まると――


「おい! いつまでそうやって――」

「グサリ!」

「えっ?」


 アイはスコールの腹部に拳をあてながら蔓延の笑みで、


「スキあり! はい、コー君に勝った」


 アイはスコールの胸を押しながら後ろにピョンと飛ぶと勝ち誇った顔をしている。


「おい、何を言って――」

「スキを突くってこういうことでしょ? コー君もまだまだ修行不足ですな」


 アイに一杯食わされてぐうの音も出ない。

 確かに偉そうに言っときながら簡単にやられてしまった。


「勝手にやってろ! ちゃんと練習しとけよ」


 苦し紛れの言葉を残しスコールは振り返り城の方へ歩き出す。


「う――! ちゃんとスキを突いたじゃんか!」


 うなり声とともにアイはスコールの背中に飛びかかり蟹挟みの様な形で肩にしがみついた。


「おい! 離れろ馬鹿!」


 スコールはアイを引き離ために肩を大きく揺さぶりる。

 しかしガッチリ引っ付いたアイは離れない。


「グサリ! はい、又勝った!」

「だからそんな練習じゃねぇよ!」


 こうしてスコールの厳しい特訓は続いた。

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