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ブラッド・ZERO  作者:
第3章 カルバナ帝国編
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第77話  最強の剣

 日が昇ると同時にカルバナの街は一切に動き出す。

 鍛治屋の熱気と鉄の匂いが町全体を包みこむのだ。


 エルドナが商業の街とすればカルバナは武器の街だ。

 町中至る所に武器屋があり高級武器と呼ばれる物のほとんどがカルバナ産である。

 そして刀を作っている唯一の国でもあった――


「やっと町を見て回れますね。先生」


 スコールは嬉しそうな声をあげた。


「そうですね。カルバナに来てから何かと色々ありましたからね。私もやっと武器の製作に関しての勉強ができます」


 今日は一日、町の散策だ。

 ルータスがいない間に刀の情報を集めようという話になっていた。


「ここで刀が作られているのか……」


 そう思うとなんだか考え深いものがある。


「先も言いましたが軽く集めた刀の情報はしっかり頭に入っていますか?」

「はい。大丈夫です」


 城で何かとやっている間にチャンネが情報収集をしてくれていた。

 それによると刀は昔のカルバナでは人気が高かったらしく刀専門店も多かったそうだ。

 しかし時間とともに少しずつその数は減っていき今では専門店は数えるほどしかないらしい。


 今日はその中でも1番の老店に行くことになっていたのだ。

 しかしスコールの後ろから不満の声が上がる。


 「今日は武器屋しか行かないの? つまんなーい!」


 アイが頬を膨らませながら不満をあらわにする。


「だったら無理について来なくてもいいじゃねえか。魔王城にでもいろよ」

「1人でいるのはもっとつまんなーい!」

「はいはい分かった分かった」


 アイはこうなると相手をするのが面倒だ。スコールは適当な返事を返す。

 するとチャンネが諭すように、


「アイ君、武器の製造過程を知ることも強くなる上では大切ですよ。これも修行です」

「う――」


 先生にそう言われ変な唸り声をかけ上げるアイにチャンネは、


「でも折角ですから時間が余れば、カルバナ観光でも2人でして来なさい」

「やったー!」


 嬉しそうな声を上げるアイとは反対にスコールは、


「2人って俺もですか!?」

「これもチームワークを高める訓練と思って下さい」

「う――」


 今度はスコールが変な唸り声をあげた。

 流石に先生にそう言われてしまっては言い返せない。

 そんな事話していると目的の場所にたどり着いた。


 流石に1番の老店と言われるだけあって見た目は古い。

 ほとんどハリボテのような建物は知らなければ店とは思わないだろう。

 しかしその見た目とは裏腹に何か異様な雰囲気があった。


 チャンネを先頭に建物の扉を開けると同時に鉄の匂いが鼻についた。

 中に入ると壁には商品と思われる武器が何本もかけられている。勿論全て刀であった。

 奥には炉らしき釜が熱を上げ鍛治の道具が散乱していて真ん中に光るランタンの明かりが部屋全体を包んでいる。


 そして店の中心には真っ白な髪の老人が椅子に座りじっと金属の塊を眺めていた。

 老人は凄まじい集中力で金属を凝視していた。

 スコール達が入って来たことすら気づいてないようだ。

 何か話しかけにくい。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」


 チャンネの声に老人はゆっくりとこちらへ振り向くと、


「なんじゃお主ら、ここに何のようじゃ?」


 作業を邪魔されたためか機嫌が悪そうである。

 スコールは客商売なんだから少しは愛想よくしろよと思いはしたが口には出さずに黙ってチャンネに任せた。


「刀についてお伺いしたいのですがよろしいですか?」

「その辺にある物を見ればよかろう」


 老人は壁にかかっている刀を指でさす。

 どうも気難しい感じでなかなか会話にならない。

 チャンネは少し考えてから何かを思いついたような素振りを見せると、


「では見て欲しいものがあります。スコール君、あれを――」


 チャンネにそう言われスコールは自分の刀、エリオットを腰から外すと老人の前に突き出した。

 すると初めて老人は反応を見せた。


「これは、坊主の刀か?」


 坊主とは自分のことだろう。

 確かに老人から見れば自分などその辺の子供と変わらないだろう。


「そうです」

「これを何処で手に入れ―― 嫌、それ以上は聞くまい。回り回って来たんじゃろうな」


 意味ありげな言葉をこぼす。


「これを知っているのですか?」

「よく知っておる。何だってワシが作ったのじゃから」


 その言葉にスコールの目は大きく見開いた。

 まさかいきなりそんな重要人物と出会えるとは思いもしなかったからだ。


 老人はエリオットを手に取るとゆっくりと鞘から引き抜いた。

 先ほどと、同じ目で凝視している。

 すると老人は立ち上がり作業台と思われる場所にエリオットを置くと研ぎ始めた。


「こんな時代に坊主、刀について知りたいのか?」


 スコールはチャンネに目で合図を送ると口を開いた。


「はい」

「刀とは、人斬り包丁じゃ。剣を可能な限り細く軽くして限界まで斬れ味を高めた人を斬ることに特化した武器――それを知るにはまず刀の歴史を話す必要がある」


 スコールは首を縦に振った。


「昔、ここカルバナでは刀の様な武器が主流であった。闘気を剣に伝える技術も今よりも悪く武器の強さは単純な斬れ味がものをいったからじゃ。その頃は名刀も数多く存在し鍛冶屋はより質のいい武器を作るために腕を競い合っておった。しかしある時を境に武器の進化は変わっていった」

「それは魔法武器ですね?」


 スコールの言葉に老人はゆっくりと頷く。


「刀はその斬れ味を引き出すためには卓越した剣術を必要としたんじゃ。しかし時代は変わり強力な魔力結晶の存在が武器の進化を大きく変えた。刀身に魔力結晶を埋め込み闘気と合わせることにより強力な攻撃を可能にした」


 スコールも魔法武器の歴史はよく知っていた。

 魔法武器は刀身に魔力結晶を埋め込むが故に刀に比べ剣自体が大きくなりがちである。

 しかしその分、魔力結晶により闘気を無駄なく伝えることが出来るため一撃の威力もスピードも高い。

 老人の言う通り、魔力武器では剣術よりも闘気の扱いが大事である。


 卓越した剣術を身につけるに越したこととはないが、闘気の扱いのほうが取得が遥かに容易であり、その効果も高いからだ。

 そして魔法の発展とともに魔力結晶の精度が上がり今の形となった。

 老人は時より昔を懐かしむ様な表情を見せながらさらに続ける。


「当然、時代と共に刀の様な武器は減っていき、今はもうほとんど使う者はいない。だかな、ワシ見てみたいんじゃ、究極の魔法武器が聖剣とするのであれば、純粋な刃物の最高到達地点をな……」

「その到達地点は刀にあると?」


 スコールの言葉に老人の目に力がはいるのが分かった。


「そうじゃ。先程ワシは刀を人斬り包丁といったな?」

「はい」

「じゃがな、刀は人を殺す道具ではない。人を斬る道具じゃ。坊主も刀の使い手ならばそのことをよく覚えておくことじゃな」 


 スコールは老人が何を言いたいのか少し分かるような気がした。

 時代とともに人々は進化して行き扱う武器も魔法も変わっていく――

 この老人は刃物と言う武器に見せられその生涯を捧げた男なのだろう。


「分かりました。しかし何故それを俺達に?」

「この刀を見れば分かる。コイツがどんな道を歩んできたのかがな。坊主はコイツを使ってどう感じた?」

「魔法武器じゃないのに、何か強い力がある――不思議な感じがする」


 スコールの言葉に老人は大きく頷く。


「約束しよう。ワシの刀と最高の剣技を持ってすれば、あの聖剣にすら負けはせん」


 老人の声には絶対の自信が感じ取れた。

 老人は目を細め研ぎ終わった刀をまじまじと見るとスコールに渡した。


「純粋な刃物か……」


 美しく輝く鏡のような刀身に波打つ刃文は芸術品のようにも見える。

 スコールが研ぎ澄まされた刀に見入っていると次はチャンネが口を開く。


「私は武器の製作に携わっていまして――良ければ見学させてもらいたいのですか」

「邪魔さえしないのなら、見るぶんにはかまわん」

「それはありがたい。ちなみに刀は何で反らせてあるのですか――」


 チャンネは職人魂に火がついたのか老人と話し始めた。

 スコールは壁にかかっている刀に視線を移す。

 どれも素晴らしく非の打ち所のない仕上がりである。


 その中で1つの短刀に目が行った。

 30センチほどの短刀で一般的に言うダガーと同じサイズである。

 しかし形は刀をそのまま小さくした物であり細く反っている。


「コー君どうしたの?」

 

 真剣に見つめるスコールにアイが疑問を口にした。


「アイ、お前杖以外持ってないよな?」

「うん。そうだけど」

「これ持ってみろ」


 スコールは短刀をアイに渡した。


「一体何?」


 意味が分からず首を傾げるアイに対して、


「アイ、これ使えよ。今後こういう武器も必要になってくるだろう」 

 

 アイは魔法使いであり普通は近接武器を必要としない。だからと言って近接武器を持たない魔法使いはいないと言っていい。

 戦いにおいて攻撃の手段は沢山あって損はないからだ。


 何となくだがアイにはこの武器が合いそうな気がした。

 

「アイは剣とか使ったことないよ――」

「何もそれで戦えとは言っていない。緊急時に最低限身を守れる技術くらいは身につけておけ」

「だったらコー君が教えてよ」

「――分かった」

「やったー!」


 何かをたくらんでいるのかアイは嬉しそうな声を上げる。

 ダガーの扱いについては知識もある程度の技術もある。

 基本くらいなら教えることは出来るだろう。

 今はルータスもいないしアイの特訓に付き合ってやるか。


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