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決戦(5)

「クウゴ!! ディン!!」


オーキの声が聞こえ、俺とディンはその方向へ振り向いた。


この広間の入り口には、息を切らせたオーキが立っていた。 


「グランディンは…?」


「…終わったよ」


俺は倒れている血濡れたグランディンを見ると、オーキも視線を向けた。


「…やったな!!」


「ああ!! オーキ、ハマドウは…?」


「ハマドウは…殺した。親友だったお前は素直に喜べないかも知れないけど…」


「…いや、ありがとうオーキ。流石だよ」


「クウゴ…」


「それよりも見ろ小童!! 遂に取り戻したぞ!!」


ディンはそう言って、オーキに魔剣を見せびらかした。


「ふんっ!!」


ディンが魔力を流す。すると、柄頭に刻まれたハマドウのマーキングが消え去った。


「遂に取り戻したぞ我が魔剣!! 見よこの色!! この艶!! この輝き!! 遂に我は完璧な魔王として復活したのだ!!!」


ブランド米の批評コメントみたいな事言って高笑いしているディン。俺とオーキはそれを見て、小さく噴き出した。


「う…うぅ…!!」


すると、意識が無かったグランディンが呻き声を上げた。


やはり、グランディンはまだ生きていた様だ。いや、そうでないと困る。


「まだ息があるか…良いだろう、我が魔剣で引導を…!!」


ディンがトドメを刺そうとするも、俺がそれを制止した。


「…クウゴ?」


「ディン…トドメは待ってくれないか?」


俺がディンを見て言うと、ディンは一考した後、頷いた。


「…良いだろう、貴様に任せよう」


「ありがとう」


俺は礼を言うと、グランディンの前に出た。


「勇者…」


「…グランディン、まだ喋れるか?」


「俺にトドメを刺すつもりか…良いだろう、早く殺すといい…魔剣も失い、もう身体も動かん…」


激しいダメージを受けた事により、グランディンのバイタルが凄まじく低下したからか、勇者紋(ブレイヴサイン)も碌に機能しておらず、傷も塞がる様子も無い。


グランディンが言ってる様に、もう何も出来ないだろう。俺はそう思った。


「…そうだな。でもその前に、話がしたかった」


「話だと…? お前と話す事など、何も…」


「いいから。まず、お前は何でこんな事してきたんだ? 何で世界に争いを起こそうと思った? 答えてくれ」


俺が言うと、グランディンは一度暫し黙った後、ゆっくりと口を開いた。


「…この醜い世界を、壊そうと思ったからだ」


「…何でだ? 何か理由がある筈だろ?」


「この世界は…他者と少し違うというだけで拒絶し、虐げる、そんな中に晒されてきた俺には、この世界が堪らなく醜く、汚く見えた…」


グランディンがそこまで言うと、その目にはいつの間にか憎悪が宿っていた。そして、ディンの方を睨みつけた。


「小娘…お前は俺には託された仲間も想いも何も無いと言ったが…その通りだ。俺にはそんなもの、全て壊されてきたのだからな!!」


(…壊されてきた、か)


今のグランディンには、激しい憎しみが見て取れた。まるで、誰かに大事な物を、或いは大事な人を奪われた様な、そんな憎しみを。そして、その姿に見覚えがあった。


嘗て、人間への憎しみに飲まれ、残虐な魔王として暴を振るってきたディン。


魔族を人類の敵として、怒りと使命感で数多く殺してきた嘗ての俺。


俺は今のこのグランディンに、それらを重ねていた。


「もういいだろ!! 早く殺せ!!」


グランディンが吼える。そして、俺は、


「…決めたよ、グランディン」


グランディンに、こう言った。


「俺は…お前を殺さない事にした」

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