決戦(3)
グランディンが眼前に迫り、俺に魔剣を振り下ろしてきた。
しかし、俺の腕はまだ動かない。
「くそっ!!」
俺は身を躱そうと後ろに跳んだ。が、間に合わず、そのまま魔剣は俺に向かっていく。
「何っ…!!?」
しかし、魔剣は俺には届かなかった。
俺とグランディンの間に割って入ってきた、異形の姿となったディンが、魔剣を片手で止めていた。
その頭には巨大な二本角が生え、手足は巨大化してその爪はより鋭く、背中には一対の翼が生えていた。
その姿のディンを、俺は知っていた。
「その姿…業魔招来か!!?」
ディンの普段の姿はほぼ人間と変わらない。しかし、それはディンの魔族としての力が隠されているからだ。
その力は、身体にあまりにも負担が掛かる為。
業魔招来は、そんなディン自身の魔族としての力を最大限に発揮する、ディンの最後の能力である。
これを使う事で、ディンの全ての力が解放され、ディンの強さは大きく跳ね上がるのだ。
「はあっ!!」
ディンがグランディンの頭目掛けて蹴りを入れる。グランディンは身体を回転させながら、壁までぶっ飛ばされた。
「大丈夫か? クウゴ」
ディンが俺に視線を送ると、俺は頷いた。
「ああ…だが、右腕はもう少し掛かりそうだ」
「ならそれまで我が相手をする。貴様は早く治せ」
「わかった…!!」
俺はそう言って、右腕の回復に専念した。
「さて…」
ディンはグランディンがぶっ飛ばされた方へ視線を向ける。グランディンは起き上がり、既に向かってきていた。
「行くぞ偽者…格の違いを見せてやる」
ディンはそう言って、ニヤリと笑みを浮かべた。
「うおおおおおお!!!」
「おおおおおおお!!!」
我と偽者の一撃がぶつかる。しかし、
「ぐおおっ!!」
偽者の方が一方的に吹っ飛ばされた。そして、そのまま前へ跳び、技を繰り出した。
「魔王の爪撃・乱舞!!」
我は爪を幾度も繰り出し、偽者はそれらを捌いていく。しかし、次第に偽者は対応しきれなくなり、やがて偽者は我の爪の餌食となった。
「ぐおおおおおっ!!!!」
我の爪が斬り裂き、抉り、その血肉を散らせる。
偽者は堪らず反撃に魔剣を振り下ろすが、我はそれを片手で受け止めた。
「何故だ…!!? 何故勝てない…!!?」
「そんなの決まってるだろう…貴様には何も無いからだ。託された想いも、託してくれた仲間も!!」
我が魔剣を払い除けると、その手で拳を握りそのまま偽者の顔面を殴り付けた。
偽者はそのまま殴り倒され、その身体で床を擦りながら壁までぶっ飛ばされた。
「力も剣も奪った物…貴様は奪い、破壊するだけの何も無い空っぽの王だ!! 誰にも何も託されてない奴に、我らは負けん!!」
「!! ふ、ふざけるな…!! 何も無い…だと…違う!!」
偽者がゆっくりと立ち上がる。その身体は斬り刻まれた傷は塞がりきっておらず、血が流れ続けていた。
「誰も…何も…俺に与えなかった…!! そして…奪われたのは…俺の方だぁぁぁ!!」
突然、偽者が咆哮する。
すると、偽者の胸の勇者紋が輝き出し、奴の傷がみるみる内に塞がっていく。
「チッ、化け物が…!!」
我が再び構える。そして、
「待たせたな」
声がする方を見ると、治った右腕でイリスを握るクウゴが、隣に立っていた。
「…もう良いのか?」
「ああ…決着を付けよう、グランディン!!」
我とクウゴは、床を蹴った。




