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闇めくトレジャーハンター・ゼロ ~異能の原石で誰もが能力者になれる8つの世界が交差するとき、架け橋を【盗む】冒険の旅が始まる~  作者: ちーかま
第1章 襲撃者C/立志編

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7話「闘技の祭典」

 「それでは―――」


 「〇〇闘技場プレゼンツ!殺戮フェスティバルの開催です!!」




 俺は唖然としていた。


 人、人、人。

 人の群れ。

 人の雪崩。

 人の宝石箱や―――。




 順を追って説明しよう。

 今朝まず、とんでもない爆音で目が覚めた。

 次に外に出てみると、人の群れが押し寄せてきた。

 そして人に押しつぶされそうになりながらも高い所に行ってみると、そこから見えたのは―――。


 闘技場の円形の椅子すべてにぎっっっしりと客が座っている。

 みながフィールドに注目し、おとといとは比べ物にならない熱狂や拍手のオンパレード。

 そして闘技場の中だけでなく、その周りにも異常な人だかりが出来ているのだ。

 食べ物や飲み物の屋台がちらほらあるのも見える。

 小さい頃に行った、ドーム球場で開催する大型イベントを思い出した。



 「―――い、おーい」


 俺を呼ぶ声がする。

 この声はオーナーのものだ。


 「おはようございます!オーナー、賑わいエグいっすね」


 「いいでしょぉコレ、儲けの匂いがして。」


 「いやそれは分かんないですけど―――」


 「先着250人にプレゼントを用意したら、思いの他集まったようでな。ざっと2000人だ」


 「2000人って、チケット足りるんですか?」


 2000と言えば、昨日書き上げたチケット枚数と同じである。


 「10万枚は用意してあるから大丈夫であろう。あと昨日はご苦労であったな」


「はぁ―――」


 俺は思った。

 昨日の頑張りは全体のたったの2%だったのか―――と。

 だが、オーナーの満足そうな顔を見ていると、そんな考えもどっかにいってしまいそうだった。

 「今日は新種がイキイキしているから、これはさぞかし試合が楽しみだ」と言って、オーナーは去って行った。



 俺はマルカが来るまでの間、情報を集めて回ることにした。


 屋台は闘技場へと続く道に、そして円形の闘技場に沿うようにして配置されている。

 イメージとしては、スプーンのような、古墳時代の前方後円墳のような―――。

 ―――語彙力。


 闘技場をグルグル回るようにして歩く。

 右手前から順に、ピザのようなもの、ポテトのようなもの、レモネードのようなもの、といった風に各商品にフォーカスした屋台が並んでいる。

 婉曲的になってしまうのは、俺がそれらの正式名称を知らないからだ。

 そもそも看板の文字が読めない。


 ちなみに、ここ2日の俺の食事はオーナーが快く用意してくれた。

 あの金の亡者にしては粋なことをすると思っていたが、どうやらイベントで不測の事態が起きた時にこき使いたいらしい。

 だが、オーナーがいなければ俺は飢えていたはずだ。

 貧弱な剣を一本持って、あのゴリラのようなモンスターと戦っていたかもしれない。

 また、料理は美味しかったがこちらも料理名までは分からなかった。



 まずは『C』なるものの存在について聞き込みをしてみる。

 屋台の店員やイベントの係員、運営本部の人に―――そしてそこら辺で遊んでいる子供たちにまで聞いてみる。

 だが、有力な手掛かりは得られなかった。

 マルカがそこまで言うのだから、『C』はかなり凶暴な戦闘員なのだろう。

 俺は現実世界で子供の頃に見ていた特撮番組の敵怪人を想像し、そのイメージをなんとか言語化しながら聞き込みをしていった。


 ちなみに、この世界群にも魔族、魔人的な要素を持った存在はいるのだという。

 名前からして、レグナには神や天使がいそうなものである。

 また、周辺に怪しい人物もいなかった。



 今度は、闘技場の控え室に移動して聞き込みをしてみる―――

 ―――つもりだったのだが、あまりに強面の戦士が多すぎて、気が引けてしまった。

 なんとか聞けそうな相手には聞いてみたものの、こちらも知らなさそうだった。

 あと、あの少年らしき人物がいたように見えたが、声はかけられなかった。




 「マルカさん、遅いな―――」


 約束の時間を過ぎてもマルカは現れなかった。

 すると、10分後に始まる試合を宣伝する係員が一段と大きい声でアピールしているのが聞こえた。


 ―――サイキックボーイと猛獣マスターが激闘!見るしかないぜぇこれはぁ!!


 なぬ。

 これからあの少年の試合が行われるらしい。

 俺の心の中では、マルカを待ちたい気持ちと、あの少年の力をもっと見てみたい気持ちとがせめぎ合っていた。

 だが、うろうろしていては合流できないのもまた事実。

 合流できなければ本末転倒だ。

 そう言い訳を己に言い聞かせながら、俺は闘技場の観客席に入って行った。





 「右ィ!猛獣マスター!ゲーググゥ!!」


 ―――ウオオオオオ!!


 「やっちまえゲググ!」

 「あんなのお前の敵じゃないぞ!!」


 MCが選手を紹介すると、観客席からわっと歓声が上がる。

 ゲググという選手は、弓矢を持ち、野性味あふれる格好をしている。

 おそらく遠くから矢を放ってくるのであろう。

 あの少年に対して飛び道具が効果が発揮するのか、気になる所だ。

 また、ゲググという人物が『C』である可能性もあるから、そこにも注目しておく。



 「そして左ィ!サーイキックボゥゥイ!!レイ!」


 ―――ウオオオオオ!!


 「またスカしやがって!」

 「こちとらお前に賭けてんだ!勝てよ!!」


 ゲググの時と同様に、またも大きな歓声が上がる。

 一方の少年は歓声、もといヤジに無反応のまま、クールに立っている。


 ちなみに、観客席にも怪しい人物はいなかった。

 ガタイのいい人物や異様な身なりの人物は多いが、おそらく戦士や冒険者の類であろう。


 というか、あの少年の名を初めて知った。

 命の恩人に名前を聞いて、名乗るほどの者では―――というくだりは無かったからな。

 あと、レイは、漢字で零とも表記できる。

 そして、俺の名前のカイも、χ(カイ)と表記したときに見た目が未知数のX(エックス)っぽい。

 なんだか、近しいものを感じた。


 二人の戦士がフィールド中央に移動する。

 そして、お互いをじっと睨み合う。

 二人の緊迫感にあてられたのか、観客たちもしーんと静まり、戦いが始まるのを見守る。

 俺も、固唾を飲んでフィールドを見守っていた。





 ―――試合開始ッ!!!



 MCが叫んだ!


 先制したのはゲググの方だ。

 開始の合図よりも先に動いていたのではないかと思わせるほど、途轍もない速さのモーション。

 1本目の矢を打つのに、1秒もかかっていない。

 ぐっと弓を引いて、白い閃光がレイに向けて放たれた―――


 対するレイは―――フィールド上にいない。

 周りの観客もそのことに気づいたのか、動揺している。

 しかし、最も動揺していたのはゲググであった。


 ―――どうして、()()()()()()()、と。




 ゲググは振り返ったが、そこには誰もいない。

 しかし、途轍もないスピードで放たれたレイの攻撃によって、無残にも地面に倒れた―――。


 ゲググは負けた。



 時間にして、わずか2秒。



 あまりの短期決戦さに、観客たちは空いた口が塞がらない。

 すると、後付けのように、紫色に光るレイの姿が現れる。

 その紫の光はレイの右手に収束し、そしてフェードアウトした。

 金を払って見に来た客たちはそのあまりの短さにヤジを飛ばすかと俺は思ったのだが―――



 ―――うおおおおおおおおおお!!!!



 割れんばかりの大歓声。

 観客たちは今日イチの熱狂ぶりで、サイキックボーイを賞賛した。

 「なんだ今の戦いは!?」とか「1万円ベットしてて良かったぜ」とか、いろいろ。

 それはそれは、長く収まらなかった。


 なお、ゲググに多額の金を賭けていたギャンブラーどもは、存分にレイを非難していたのだが―――。



 俺もなんだか胸が熱くなった。

 なんという一方的な試合なのだろうか、と興奮していた。

 あと、レイに対して勝手に親近感が湧いていたのもある。

 俺の恩人、あんなにすげーんだぜ、と。


 だがやはり、彼の身体の調子は気になる所だ。




 これはレイ本人にしか分からないことであったが、ゲググは脳がパンクして、気絶したのである。


 まず、光の屈折やらなんやらを上手く活かして、ゲググの背後に回り込む。

 ゲググは背後から途轍もない殺気を感じるが、振り返っても誰もいない。

 レイの姿はそもそも見えないようになっていたのだ。

 そして、レイはゲググの頭に「内容のないテレパシー」を無数に送り込んだ。

 結果、ゲググの脳はパンクして、三半規管やその他の部位の異常から、気絶してしまった。

 例えるなら、空のメールを無数に送り込んだことで、フォルダが圧迫されるどころか、メールアプリそのものが停止してしまった感じだ。



 すると、レイが颯爽とフィールドを後にする。

 それにつられたように、試合終了のアナウンスがなされた。

 だが、観客たちの熱狂はしばらく収まらなかった。




 試合が終わって少し経つと、食べ物を買いに行ったり、お手洗いに行ったりと、客が闘技場からぞろぞろと出始めた。

 座りっぱなしでずっと見るわけではないのだな。

 だが、前方の客の会話を聞いて、俺はその大移動に納得した。


 次の試合は15分後。

 それは例の、捕まえられた新種モンスターの試合なのであった。


 果たしてどんなモンスターが出てくるのだろう、あのゴリラなんかよりも数倍も大きかったりするのだろうか。

 もう一度、俺は特撮怪獣のようなものを想像した。

 ただ、そろそろマルカが来ているかもしれないと思った俺は、一度外に出てみることにした。



 闘技場を出て少しの所に、マルカはいた。

 マルカは走ってきたのか息も絶え絶えで、そしてとてつもなく恐ろしい顔をしていた。

 まるで凶暴なライオンが目の前に現れて、冷や汗をかいているかのような表情だ。


 「あ、すいませんマルカさん。今ちょうど試合見てて」


 「探しましたよ。はぁっ―――、けど遅れたのは私ですから、気になさらずに」



 そして、一度呼吸を整えると、忠告するようにマルカは俺にこう言った。




 「カイさん、大変なことが今から起きるかもしれません。このイベントのメインに据えられているという新種のモンスター、奴こそが『C』だったのです」




 俺は大きな思い違いをしていたことに気づいた―――


 『C』は人間サイズの存在。

 新種のモンスターは怪獣並みに大きな存在。

 ―――この決めつけが、俺の気づきを阻害していた。




 新種のモンスターは人間ほどの大きさだったのだ。



 「そいつの試合、もうすぐじゃん―――」



 マルカと俺は、急いで観客席へと向かった―――

名前の由来はゲ〇ググ。

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