プロローグ<カイ>
「追え!!絶対に捕まえろ!!」
「ばーか、誰が捕まってやるかってんだ!!」
俺はいま、洞窟の奥に追い込まれている。
暗い洞窟の奥に、沢山の追手を引き連れながら。
「早く盗んだものを返せ!!」
「盗んだって、ちょっと綺麗な石をもらっただけじゃないかぁ」
「綺麗な石だぁ!?お前が盗んだのはストーンだろうが」
「え?なんのこと―――」
―――ズバッ!!
「―――って、危ねぇなオイ!!」
俺の身体を突き刺すような剣の一撃。
危機一髪、俺はその攻撃を回避する。
「とぼけるんじゃねぇ!!」
―――ズドン!!
斧の一撃。
俺はこれもうまく避ける。
またも斬撃が飛んでくる。
これは―――避け切れない。
服の生地が少し切れて、鮮血が飛び散る。
俺の顔は少しひきつった。
だが、全速力で走り続ける。
「往生際が悪いぞ、盗賊!!」
「盗賊じゃなくてトレジャーハンターだ!」
「知るか!」
よそ見する隙もないほど、俺に向けて武器が振り下ろされ、突き出される。
ひとつ避けてもまたひとつ。
右、左、右、そして右、正面。
攻撃のランダムさに、俺は圧倒される。
すると、敵のリーダーらしき声が聞こえた。
「時計の残存バッテリーは?」
「分かりませんが、このまま大群で押せば制圧可能かと」
「よし、そのまま押せ」
俺を捕まえる作戦を練っているらしい。
そして時計とは、俺の左手首につけられた道具を指している。
その名は『ウォッチ』という。
ギリシャ文字のひとつをかたどってデザインした、近未来感に溢れる黒の腕輪。
ウォッチの中央には、縦に長い楕円形の、赤色に輝く石が嵌め込まれている。
「その赤い石は―――『アクセルストーン』か?」
正面の敵が俺に言う。
「そうだ。『加速』の異能、その原石だ」
「どうりで逃げ足が速いわけだ―――なぁッ!!」
―――ザンッ!!
右から空気を薙ぎ払うような強烈な一撃!!
避け切れず、またも体に傷を作る。
冷たい痛みと共に血が流れていく感覚。
俺はバックステップして、一呼吸する。
着地は完璧、姿勢もなんとか立て直した。
しかし、このままではらちが明かない。
いつかは隙を突かれてしまうだろう。
「まだ逃げるつもりか?」
「―――いや、やっぱりお前らをぶっ飛ばすことにした」
俺と敵との間には、2mほどの距離しかない。
余裕はとうの昔に無くなっている。
だが、俺の左手にあるこのデバイスには、この状況を切り抜けるだけの力が備わっている。
「『加速舞台』!!」
俺は叫ぶ。
時計を起点にして、俺の身体が赤色の光に包まれ―――
俺の身体は『加速』し始める。
「な、なんだ!!こいつ、予想以上に速いッ!!」
「目で追い切れない―――」
敵たちが目を回すほどに、俺はとてつもないスピードを出して駆ける。
その迫力、まさに舞台の大立ち回り。
俺の速度について来れるやつは一人もいない。
「目で追えなくたって、―――せやぁッ!!」
敵の一人が剣を振る。
だが、その程度のスピードじゃ俺を捉えることはできない。
剣は赤い残像を切って、情けない風切り音を出す。
他の敵も一心不乱に己の武器を振るう。
だが、俺の身体を捉えるものは一人もいなかった。
そして俺は目の前の敵に狙いを定める。
一瞬の隙を探す。
―――ここッ!!
「歯ァ食いしばっとけ!!」
加速した身体から放たれるパンチが―――敵をぶっ飛ばした!!
ところで、どうして俺は追われているのか。
『ウォッチ』や『ストーン』とはなんなのか。
そもそも俺とは誰なのか。
そんな疑問の答えは、これから始まる物語の中にある。
ゼロから始まる、終わりのない物語の中に。
はじめまして。
よりよいものをお届けするために、何度も推敲や編集を重ねてきました。
ぜひ、楽しんで読み進めていただければと思います。
よろしくお願いします!
ちなみに、「アクセラル・ショー」というのは「アクセラレーション(名詞)」にかけてあります。
アクセル!と叫ばせるとちょっとパクリみたいになるので...




