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囚われの聖母

 煉の目の前で武装解除してまで投降した女性は、煉が『色欲』によって操り人形とした部下たち『審問官』を手際よく拘束するのを手伝ってくれた。

 彼女を除く『審問官』たちを一纏めにし終えた段階で、改めて彼女は煉の前で跪き感謝を伝えながら、自己紹介を始める。


[私の名前はネロ・ルーナ。『聖母』ルル・ソーレの右腕。この度は矛を納め私に弁明の機会をくださり感謝します]

「[感謝は結構です。それよりもなぜ投降を? 貴女なら先ほどの攻撃も回避なり防御なり出来たと思うのですが?]」

[貴方からルルと同じ力を感じた。そんな貴方に頼みたいことがある。だから投降した]


 『聖母』の右腕を名乗る女性ネロは、『聖母』ルルの力を、煉が持つ原初スキルと同様のものだと理解している。

 これは凄まじい事である。煉ですらグラルレーダーや原初スキル同士の干渉がなければ、相手が原初スキル持ちなのかどうかの判断をするのは難しい。

 それなのにネロは、ブレスレットに『節制』を受け煉が『暴食』を準備している姿を視認しただけでこの力が『聖母』と同様のモノだと理解し投降したのだ。並みの判断力ではない。


 そんな彼女が武装解除してまでする頼みである。この頼みの重さは相当なものであろう。

 煉はその事を承知しながら尋ねる。


「[頼みとは何ですか?]」

[『聖母』ルルを…いえ、ルル・ソーレをこの『ラビリス』から解放する手助けをしていただけないでしょうか]

「[『ラビリス』からの解放…なるほど。ドリーの嫌な予感が当たったか]」

[ドリーとは、貴方と一緒にこの都市にやってきた少女の事でしょうか?]

「[ええ…ですので、頼みの詳細はドリーも一緒にで構いませんか?]」

[ええ。当然ですね]


 ネロの頼みは、ドリーが心配していた事そのものではあるが、それでも彼女を抜きに承諾することも拒否することも出来ないと判断した煉は、ネロを連れてドリーが待つ反乱組織のアジトに戻るのであった。


◆◆◆


 ドリーにネロを紹介しつつ頼みの詳細を聞く。

 

[…ルルはこの都市がダンジョンに呑み込まれた日に神聖な力、『博愛』に目覚めて以降10年近くの間、その力を行使し続けてきました]

[10年近く原初スキルを使い続けるなんて無茶なの]

[ええ。ですので近頃のルルは弱り切っております。立つことも儘ならない状況で生命力を削り結界だけを維持する生活を続けているのです]


 原初スキルを使い続ければそうなるだろう事は想像に難くない。

 そうなると疑問なのは『聖母』がそこまでして結界を張り続ける理由である。単純にこの都市を守りたいという高尚な理由であれば、ネロがわざわざ煉に助けを求める事も無いだろう。

 脅されてという事も考えられるが、それもネロがいれば何とかなるように思える。


「[『聖母』を助けたいのは分かりました。ですが貴方がなぜ自分に助けを求めるのかが分かりません。原初スキルが無くとも、『聖母』を連れてこの都市から離れる事が貴女になら出来るのでは?」

[それが私には出来ないのです。あの首輪によって]

「[首輪?]」

[『聖隷の首輪』と呼ばれたそれは、ルルをこの都市に縛り付ける鎖となりました。その首輪にはルルと同じ力が宿っていたのです]

「[原初スキルアイテム!?]」

[ええ。首輪に宿っている力の名は『勤勉』。その力によりルルは、ダンジョンから『ラビリス』を守り続けることを強制させられているの]



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