武装解除
煉が相手を操ろうと『色欲』を発動した所、弾かれてしまった。
この現象は最近よく経験する原初スキル同士の干渉である。
「この人が原初スキル持ち…なるほど。あのブレスレットか」
原初スキル同士の干渉が起こった事により煉は、一瞬目の前の女性が原初スキル持ちなのかと思った考えた。しかし即座に愛剣のグラルが訂正してくる。ヴィーナスによる『色欲』を弾いたのは目の前の女性本人ではなく、ブレスレットであると。
それが意味するのは、女性が着けているブレスレットが、煉たちが原初スキル対策にと開発した『慈愛のペンダント』と同じく、原初スキルを付与されたアイテムということである。
[探索者がルルと同じ神聖な力を?]
「…内容は分からないが、あっちも驚いてるようだな。しかし運が良い。一回目で大物が釣れた。これなら何度も繰り返す必要はなさそうだ」
『慈愛のペンダント』は、来栖とドリーがいて初めて量産が可能である。であれば結界を張るのに掛かりっきりな『聖母』1人でそんなアイテムを量産出来るとは思えない。
であればアイテムを身に着けているこの女性は、『ラビリス』か『聖母』ルルにとって重要な存在である可能性が高い。
『審問官』でも一般人や反乱組織の者たちよりもより良い情報を持っているだろうが、この女性は下手すれば直接『聖母』ルルとやり取りが可能な立場にいるかもしれない。
とはいえ煉のやることは変わらない。既に敵対してしまったので、取り敢えず『色欲』の餌食にしないと始まらない。
「『瞬歩』」
[っ! 何度も同じ…いない!?]
先ほど接近したときと同様に『瞬歩』を発動する。しかし流石に同じ技は2度も通用しない。
そのため煉は、接近ではなく、女性の視界から消えるために『瞬歩』を使用する。
接近してくると考え反撃しようとした女性は虚を付かれる。
[どこ…いた!]
「『節制』」
[…! また力を]
「グラル、魔力だけだぞ! 『欲望覚醒』、『暴食』!」
[こ、これ程の力を!? これならば…]
『節制』を飛ばし、ブレスレットに付与されている原初スキルを無効化する。
そしてそのまま遠距離から強化した『暴食』で女性の魔力を喰らい尽くそうと『欲望覚醒』でグラルを強化する。
彼女ほどの魔力量であれば不意討ち以外では、よほど接近した上で高出力の『色欲』でなければ操れない。
しかも1度『瞬歩』を見ただけで反撃を試みた事を踏まえる、接近して高出力の『色欲』が当たる可能性は低い。
とすれば魔力を空にした後で『色欲』を使った方が早いと煉は判断したのだ。
『ラビリス』に入ってから仕事が無かったグラルは、魔力だけという制限を煉から課せられても、嬉しそうであった。
しかしグラルが『暴食』を放つ事は無かった。
煉が『暴食』を放とうとしたのに対して、彼女は一切回避をする素振りを見せない。
[ルルより洗練された力を操る者よ! 私に貴方と争う気はない。貴方に頼みたい事がある!]
敵意を一切感じない、それどころか何か懇願する様子に、煉は『暴食』の発動を躊躇してしまう。
すると彼女は驚きの行動に出始める。
[言葉が通じないか。ならば身体で証明する!]
「…ん? 武装解除。何のつもり…っておい止まれ![分かったから止まれ!]」
腰に着けていた短剣やブレスレットなど、装備品を外していく。言葉が通じないからこその態度で抵抗の意志が無いことを伝えたのだ。
そして挙げ句の果てには身に着けていた法服すらも手に掛け脱ごうとし出した。
そうなれば煉も止めざるを得ない。グラルを降ろし、慌てて『翻訳の指輪』を換装する。投降を受け入れる事を伝え法服を脱ぐのを止めさせたのであった。




