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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第一章 レベルアップ編

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025ー2 ポップ、ステップ、大要塞 2 *

【修行履歴】

2019年11月4日

①25話を6分割しました。

②文章の訂正をしました。

③主人の思考を表す、表現方法の変更をしました。

 翔は、空中から、ゴブリン軍の様子を見ていた。彼等の行動は、知能の低い筈のゴブリン達には、見えなかった。その動きは、むしろ統制のとれた素晴らしい軍にすら見えた。


 彼らは、メロが召喚した魔物の強いオーラが突然現れた事に驚いて軍を止めたところだった。


 見ると、ゴブリン軍の数カ所で激しい戦いが起こっていた。


 一番最初に、戦いに入ったイリスが、最も軍の中に入り込んでいた。


 彼女は、凄まじい速さで軍の中心に向かって、突き進んでいる様子が見えた。


 イリスを止められる様なゴブリンは一匹も存在しないようだ。


 見るとイリスに向かってレベルの高そうなゴブリンの群が向かって行くところだった。


《イリス。強そうなのが百ほどそちらに向かっているぞ》


 翔が辺りに響くのも無視して思念波を放った。


《承知した》


 イリスから思念波の答えが来た。明らかに楽しんでいるのが分かった。


 良く見るとイリスの後ろには、イリスを助けると言って付いて行ったグスタフ・ハルハーゲンと“祝福の風”のメンバー達も追随していた。


────やつら。頑張っているじゃないか。


 翔は、意外に頑張るグスタフ・ハルハーゲン達に、無言でエールを送った。


 視線を転ずると、アメリアとレイラが攻撃魔法や剣技を惜しげも無く連発しているが見えた。瞬く間にゴブリン達が倒された。


 特にレイラの斬撃は効果的だ。一振りで数百のゴブリンが倒されて行くのだ。


 一方、レイラの歩みは、むしろゆっくりしていた。ゴブリン達にしてみると無人の野を散歩するお姫様のように見えるだろう。


 翔は、ゴブリン軍のちょうど中間の辺りに一際大きな軍旗がはためいているのを見た。


 多分、その辺りだろうと予測して翔は空中から軍旗めざして突っ込んで行った。


(アリス、この軍の中のレベル上位三十人に、吹き出しを付けて目立たせるのは可能か?)


《お安いご用意です》


 彼女の答えと同時に軍のあちこちに付箋が立った。


 翔は、その付箋に示されたレベルが最上位のレベル56ゴブリンに向かって、真っ直ぐに、飛んで行った。


「お前が、大将だな」


 翔は、武器『金棒』を一振りして、周囲の邪魔なゴブリンを吹き飛ばしながら言った。


 ゴブリンの群を吹き飛ばしてできた空き地に、翔は、ストンと降り立った。


 ゴブリンは、妖馬アハイシュケに騎乗していた。


「人間。俺様の前に、よく立てたな」


 そのゴブリンはニヤリと笑った。


「大した自信だな。将軍ジェネラル


 翔は、呆れて言った。


「俺様は、ゴブリンの大将軍グレイトジェネラルだ」


 ゴブリンはそう叫んで、片手に持っていた巨大なノコギリを凶悪にしたような剣を振り下ろしてきた。


 翔は、それを金棒で受けた。重たい衝撃が翔の金棒を通じて伝わってきた。なかなかの闘気バトルオーラの通った、激しい斬撃だった。


「お前はまだ、チビジェネラルだ」


 翔は、そう言いながら、金棒を長くしてゴブリン将軍ジェネラルに叩き込んだ。


 翔の打ち込みの衝撃を受け止めたのは、ゴブリン将軍ジェネラルではなく妖馬アハイシュケだった。


 グハッ! と音を立てて血を吐くと妖馬アハイシュケは、前足を折り曲げて前に倒れ込んだ。翔の打ち込みの闘気バトルオーラにやられたのだ。


 ゴブリン将軍ジェネラルは見事な反射神経をみせて、馬の背から飛び上がると、宙を回転して地上に降り立った。


 ゴブリンの顔からは、笑みは、消えていなかった。


「人間。多少はやるようだな」


 ゴブリン将軍ジェネラルは、巨大剣を両手で持ち上げて、大上段に振りかぶって、凄い速さで打ち込んで来た。


挿絵(By みてみん) 


 翔は、その斬撃を弾き返すのではなく、金棒で斜めにして受け流してから、見事なカウンターを見舞った。


 ゴブリン将軍ジェネラルは、慌てて翔のカウンターを巨大剣の腹で受け止めた。しかし翔の凄まじい斬撃による衝撃のため、ゴブリン将軍ジェネラルは、バランスを崩した。


 明らかに実力の差が見えている。


 翔は、バランスを崩したゴブリン将軍ジェネラルに軽い威嚇の突きを見舞った。


 その突きを受けて、ゴブリン将軍ジェネラルは、さらにバランスを崩した。


 その時、翔の背後から、ゴブリン貴族ロードが翔の背中に切りつけて来た。


 翔は、一つも慌てること無く、軽いステップで、その攻撃を避けた。


 翔は、直ぐ横を通り過ぎようとするゴブリン貴族ロードの、腰ひもを軽く掴んで、振り回し、ゴブリン将軍ジェネラルの方に、捕まえたゴブリンを投げつけた。


 驚いたゴブリン将軍ジェネラルは、あろう事か、そのままゴブリン貴族ロードを真っ二つに切り裂いてしまった。


────自分を助けようとした部下を切り捨てるとは……


 翔は、それを見て、頭に来た。


 ゴブリン将軍ジェネラルは、今度は、何を思ったのか、第三グレイドの魔法『炎突風フレイアガスト』の術式を展開するため魔法の詠唱を始めた。


 翔は、怒りに任せて第七グレイド魔法『爆炎フラミス』を瞬時に発動した。


 大きな炎の柱が何本も立ち上がり、それが集合して一本の巨大な炎の竜巻になった。そして、ゴブリン将軍ゼネラルをたちまち飲み込んだ。


 ゴブリン将軍ジェネラルは、炎に飲まれて直ぐに燃え尽きた。


 炎はさらに巨大化してゴブリンの群れを取り巻いて広がって行った。そして辺りのゴブリン全てを燃やし尽くした。


 その様子を見ていたゴブリンの全軍が、どよめきを上げた。


 翔は、そのまま空中に飛び上がり、次々にゴブリン貴族ロードを見つけると、金棒を叩き込んで行った。


 戦いは約一時間ぐらいだった。三方からアメリア、イリス、レイラに囲まれて凄まじい攻撃を受けている上に、トップのゴブリン将軍ゼネラルがやられて軍は総崩れ状態になった。


 特に序列の高いゴブリン貴族ロードが次々に倒されて行ったため、軍をまとめる者がいなくなってしまった。そのため軍は全く機能しなくなり、単なる恐慌に陥った群衆となってしまった。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






【場面が変わり、翔が作った砦の約五キロ西の平原】


「これは壮観だね」


 言ったのは、女性だった。


 彼女は、ランクS級“剛腕”のリーダーであり、レベル51の剣士だ。名前は、アルマ・ベストと言った。有名人である。


「ありゃ、相当な戦力だね。大丈夫なのかい?」


 彼女が言ったのは、自分達の戦力が足りないのではないか、との質問だった。


「お姉。ありゃゴブリンじゃなさそうだね」


 答えたのは“剛腕”のメンバーの一人。レベル42。重武装戦士。リーザ・リンガーだった。


 彼女達が見ているのは、実は、翔が作ったばかりの砦だ。その周りにはメロが召喚した数百の魔物が取り囲んでいた。


「マリレーナ。あの魔物の群れを遠視で見てくれるかい?」


 “剛腕”の隊長アルマ・ベストが、武闘派のパーティー“剛腕”の中で唯一とも言える頭脳派の魔術師。レベル42。マリレーナ・リビーニに言った。


「分かりました」


 マリレーナは答えると遠視の魔法を唱えて遥かな魔物達を見た。


「アルマ姉さん。これは少し話が違う。あれは全てダブルS級の魔物の群です。レベル48。黒曜犬モーザドゥーク。四十三匹。レベル49。泣女バンシー。38匹。レベル52。龍牙兵ドラゴンウォーリア七十八匹。レベル47。食人馬ケルピー。十八頭。レベル51。巨牛アウズンブラ二十五頭などなどで全てはとても数え切れません」


「なんだそれは。ダブルS級魔物が複数いるってだけで討伐軍が編成されんだぞ。たかがこれぐらいの討伐隊でどう対処しろってんだ!」


 アルマ・ベストは悲鳴のような声を上げた。彼女はそう言いながら自分の真っ赤な鎧の胸を力任せに叩いた。金属が激しい音を立てた。


 剛腕アルマと言えば有名人だ。女性でS級ランクパーティーのリーダーを仕切っている事と性欲が絶倫で男なら誰とてでも分け隔てなくオッケーと言う事が彼女を有名人にしていた。


 しかし絶頂の時に全力で闘気バトルオーラを発して相手を気絶させて、悪くすると死に至ると言う噂の尾ひれが付いていた。そんな噂とは裏腹に、アルマは魅力的な大人の女性だ。


斥候隊せっこうたい!」


 アルマは大声で叫んだ。


 直ぐにランクA級“稲妻スパーク”の六人が走ってきた。昔馴染みの凄腕のAランクパーティーだ。見事に統制の取れた編隊を組んで走り寄ってきた。


 アルマは満足そうに頷いた。


 彼女は、あるいは、この展開は、“剛腕ごうわん”をおとしめるために仕組まれた罠かとも思ったが“稲妻スパーク”のような優秀なパーティーを部下に付けてくれているのだから、罠という事でも無いのだろうと思い直した。それほど彼女は、“稲妻スパーク”は、彼女にとって、評価の高い、パーティーだった。


「アルマ。ありぁ変だな。あれは、俺達の目的のゴブリン共とは違うな。ギルドの命令通りに、あれは無視してゴブリンを探すべきじゃ無いか?」


 “稲妻スパーク”のリーダー、バッシュ・コーエンが目を細めて砦の方を見ながら言った。


「ダメだね。あの砦にゃあ、女子供の気配がある。放っておく訳にゃいかんね。行ってくれるかい?」


 剛腕アルマは、ため息混じりにいった。


「あいつらはちぃとキツイいが分かったよ。しかし危ないとなりゃ、俺たちは、さっさと逃げるぜ。アルマ達も俺達を助けようなんて馬鹿なマネはするんじゃねぇぞ」


 “稲妻スパーク”の隊長はニヒルに言った。


 言い方は軽いが実際には、命を賭けると言っているのだ。


 “稲妻スパーク”のリーダー、バッシュは自分のパーティメンバーを見渡した。皆が彼の問いかけの視線に頷いて、了承の意を表してくれた。


「オメェら。最高だぜ」


 バッシュは、はにかんだ笑いを顔に乗せた。


「じゃ。直ぐに行ってくらぁ」


「悪いな、バッシュ。帰って来たら私の身体で鼻血が出るまで恩返してやるぞ」


 剛腕アルマが豊満な胸を形取ったプレートを突き出しながら言った。


「おお! そいつぁ怖えぇ」


 バッシュが首をすくめて震えるフリをした。


 それからバッシュは、“剛腕”のメンバー達に手を振って挨拶した。昔馴染みの“剛腕”のメンバー達は、口々にエールを送ってバッシュ達を見送った。

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