019ー5 失敗魔法
「おい、翔! 何をボンヤリしている。次のお客さんだぞ」
アメリアの声で現実に引き戻された。見ると、スケルトンが数十体もゾロゾロと這い出してきたところだった。
「メロ、Lv15程度の精霊を呼べるだけ呼べ。アメリアは初級白魔法『破魔光』を十字の形に、そこに熱と範囲攻撃の術式を織り込んでイメージしろ。最後に白魔法系の魔力だけを注ぎ込んで発動させるんだ」
翔は即座に実地訓練(OJT)を開始した。アメリアは術式の構築に苦戦するが、翔が色彩を変えて分かりやすく介入・訂正すると、彼女の手の平から無数の小さな光の十字架が迸った。それは蝶の群れのように広がり、光の洪水となってスケルトンたちを風化させていく。
一方、メロは木の精霊アルラウネを50体も召喚。精霊たちが一列に並び、一斉に攻撃魔法を放つ様は壮観の一言だった。
翔自身は六角の金棒の先端を巨大な筒へと変貌させた。
「物理現象を魔法で強化する……科学知識の応用だ」
空気魔法で大量の酸素を送り込む術式を組み込み、『爆炎』を青いジェット噴射のような超高温火炎へと昇華させる。その青き炎がスケルトンの集団を丸ごと飲み込んだ。
怒涛の勢いで前進する一行。1時間半の激闘で、翔はLvを四つ、メロとアメリアは三つ上げた。
しかし、休息は許されない。メロの『感知』に、不死熊、死霊、吸血鬼の混成部隊が引っかかる。
「おえっ……なんてキショイ奴ら……」
腐敗臭と異形な姿に、アメリアとメロが嘔吐感を催して跪く。翔は即座に『無臭化』の魔法で悪臭を遮断し、二人を小脇に抱え込んだ。
「大丈夫だ、俺が何とかしてやる。もっと俺にしがみつけ。防御壁を最小・最強にする」
翔は自身の残り少ないMPに、メロから拝借した魔力を上乗せし、かつての世界で培った複雑怪奇な術式を展開した。魔法の発動加速、エネルギー倍加、適正化……重なり合う無数の魔法陣に、メロは驚愕で言葉を失う。
(糞っ、たった六回の重ねがけが限界かよ……!)
本来の千分の一にも満たない出力。それでも、この世界にとっては「災厄」そのものだった。
「『大爆発』!」
高らかな詠唱と共に、迷宮が震撼した。
閃光と衝撃波が荒れ狂い、魔法防護壁越しに凄まじい振動が翔たちを襲う。自分の放った一撃の余波に耐えながら、翔は意識が遠のく中で自嘲した。
(何と無様な……防御が疎かになるとは。これじゃあ、メロを笑えねえな……)
不甲斐なさに歯噛みしながら、翔の意識は深い闇へと沈んでいった。
025 了
お読みいただきありがとうございました!
ついに新能力と新装備での初陣!
圧倒的な無双を見せた一行でしたが、ラストに翔が放った『大爆発』の威力が想定を超えてしまい……。
意識を失った翔の運命は!? 次回、爆炎の晴れた先。お楽しみに!
もし面白いと思っていただけましたら、ブックマークや下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると、執筆の励みになります!




