019ー4 いざ水晶迷宮へ
【修正履歴】
2019年9月24日
○第19話を7分割しました。
○分りにくい表現を訂正しました。
○少し加筆しています。
○主人公等の思考を表す表記の方法を以下のように変更しました。
(主人公等の思考)
↓
────主人公等の思考。
なお、この変更は、順次行っています。
表記がしばらく混在しているので、お許しください。
『始まりの部屋』を出ると、大きな通路になっているようだが、『始まりの部屋』から漏れる光だけではよく見えなった。
「『光沢』!」
辺りを明るくする魔法を掛けた。
「翔。凄いね。ずっと明るくなった」
メロが目を輝かせて翔の魔法の効果を実感している。
「ああ。これは、術者が見える範囲全てに明かりがある状態にする魔法だ。まぁ、半日は効果があるだろう。術式はゆっくり展開してやったから次はメロ。その次はアメリアがやってみろ」
さっそく、魔術の教育を始める翔だ。OJT「オンザジョブトレーニング)実地訓練と言う意味だ。
それが一番簡単で一番効果的なトレーニング方法だった。
「次に索敵だ。メロ。感知だ」
「うん。『感知』!」
メロが魔法を唱える。
メロ魔術が展開される。
「前方に敵、スケルトン、レベル13、五体」
「それなら、私が先制を仕掛けよう」
アメリアはそう言うと、シュッと飛んで行った。凄い速度だった。
しかも、行ったかと思った次の瞬間にはもう帰って来た。
「敵二体を三度攻撃。しかし奴らは全く平気そうだった。物理攻撃に恐ろしいほど強いぞ」
アメリアが報告した。
「厄介だな。しかしアメリア。凄いな。さすがに妖精の王族、至高者は、凄い。それがお前達の本来の闘い方なのか?」
翔は、素早さが段違いに増したアメリアの動きに、感嘆の言葉を投げかけた。
「本当うっ! アメリア凄い! 飛びながら光ってた」
メロも大絶賛した。
「アダマンタイトとミスリルはとても軽い金属だがそれでも全身を覆うプレートをつけたまま良くそんなに自由に動けるもんだ」
翔は、目を細めてアメリアを見つめながら言った。
「いいや。これほど軽くて動きやすい鎧は翔のおかげだ。さらに付与魔法で軽くしてくれているのだろう。そうでなければこうは行くまい。
さらにこいつは美しいだけじゃなく着心地もグアリテーロに取られた防具よりもずっと良いくらいだ」
そんな話をしているとスケルトンの骨の当たる騒々しい音を立てながら近づいて来た。
『スケルトン。レベル13。【弱点】炎。神聖魔法。【特徴】物理攻撃では復活する厄介な魔物。数で圧倒してくるので要注意』
アリスは、気を利かせて名前やレベルだけではなく魔物の弱点や特徴を示してくれた。
────アリス。サンキュー。分かりやすいよ。
《迷宮では、多種多様の魔物が出てくると思われますので些細ですが支援をさせて頂きます》
翔は、スケルトンの弱点や特徴を声を上げてメロとアメリアに教えた。
そうする内にも、メロは呪文を唱え始めていた。
「オット……ファク。ファーリ、コンスクエーレ『爆炎』!」
メロの使える炎系最大最強の『爆炎』の魔法が炸裂した。
メロの身体全体から魔力が手の平に集約し、大きなスパークを起こした。
集約された魔力によって、空気が震えて鈍い音を立てた。
直ぐに脅威的なエネルギーが次々に発生して、膨れあがると、本流となってメロの手の平から飛び出してスケルトンを飲み込んだ。
その一撃の魔法で、スケルトン達は跡形も無く消え去った。
「凄い」
アメリアが口を開いて驚いていた。
メロがドヤ顔で翔を振り向いた。
この魔法は、翔とメロが初めて出会った時にメロがいきなり全ての魔力を消費して空に向けてぶっ放した魔法だった。
翔は、可愛い鼻をヒクヒクさせながらドヤ顔でふんぞり返って翔を見ていた。褒めて褒めてって気持ちが伝わってきた。
翔は、メロにどう言ってやるか少しだけ迷った。なぜなら翔とすれば、メロの『爆炎』は、魔法として取るに足りない魔法だったからだ。
しかし、こう明らさまに褒めて欲しそうにする美少女を前にして、あまり可哀想なダメ出しをするのも躊躇われる。
────こいつ。今批判したら後でうるさそうだし……
「メロ。魔力はいくら消費した?」
「たったの18」
メロは、さらにドヤ顔でからだを反らせて答えた。
────おい。それ以上反ったら後ろに倒れるぞ。
翔は心でそう忠告するが、実際には違うことを言った。
「前に比べると随分魔法をうまく制御できるようになってきたじゃないか」
メロは、翔のその言葉にようやく納得して、大きく広げた鼻の穴を収めて、ガッツポーズを取った。
「メロ。お前は本当に凄い魔術師だな。爆炎は、上級魔術師以上が使える超上級魔法だろう」
アメリアがメロをマジマジと見ながら言った。
────こいつら本当にこれじゃダメだな。
二人のこの様子に翔は、少し考えこんでしまった。
確かに『爆炎』や『爆発』は、普通のマンションを一棟丸ごと攻撃できるほどの範囲魔法だ。現代日本でもこの程度の魔法ですら使える者はそうたくさんいる訳ではない。
しかし、この魔法は、翔にとって十あるグレイドの中で下から数えて三番目のグレイドの魔法に過ぎないのだ。そんな低位の魔法でこれほど大層に言われると情けなくなる。
「お前達。俺達は今のままではまだまだ話にならないほど弱い。メロ。『爆発』はレイラにどれ程効果があった?」
翔は、爆炎よりやや低いが、それなりのレベルの魔法である爆発が全くレイラに通用しなかった事を示し、自分達の魔術がどれほどレベルが低いのかをメロに知らしめた。
メロは、自信満々の格好だったのが急にうなだれるように小さくなった。
「アメリアもだぞ。『爆炎』は超上級魔法でも何でもない。お前は、魔法の物差しが小さすぎる」
「何を言う。ユグドラシルの魔法では、『爆炎』は、第六グレイドの超上級魔法だ。お前の物差しがデカすぎるのではないか?」
アメリアが怪訝な顔をして言った。
「確かにメロの魔術はまだまだ荒削りで不完全かもしれんが、本来第六グレイドの魔法は、ずっと高位レベルの賢者でもないと使えない魔法だぞ」
「良くわからんな。おれの常識では第六グレイド魔法と言えば『大爆発』や『大爆炎』だがな」
翔が不思議そうに言った。
「何を言っている。大爆炎や大爆発などは魔界の大悪魔や神々でこそ成せる伝説級の技だ。あんなものは魔法とか魔術とかいうレベルではない。奇跡とか大災厄と言うのだ」
アメリアが目を大きくして翔に言った。
「奇跡? 俺の常識ではその程度の魔法では、大魔法とすら言ってもらえんがな」
翔は、何を言っているのかと逆に驚いた。
「また。翔の荒唐無稽の夢物語が始まったか」
アメリアは、翔の言葉をそう受け取ったようだ。
────こちらの世界では、魔法のランクが違うのか.......
翔は、その事に初めて気付いたのだった。
《はい。その通りです。翔様の転生前の魔術師ランクは何だったのですか》
────俺は、熟練級で第八グレイドまで魔法が使えたな。
翔が思考で答えた。
《もし、この世界でしたら翔様は超人を超えて等神と呼ばれておられたでしょう》
────俺の世界では等神などは実在しない。いわゆる理論値みたいなもんだ。そういう意味では最終形はどちらの世界でも同じ程度なのかもな。
《しかし、翔様の元の世界では、翔様よりも上の方がおられたのでは無いですか?》
────もちろんだ。我が妹君は俺の千倍は強かったぞ。
翔は妹や姉達の恐ろしい強さを思い出して身震いした。何度死ぬような目にあった事か。
《ご冗談を。翔様よりも千倍も強い妹君など。魔術師は、経験が最も重きを置かれる、言わば知識職。年齢が若いのに千倍も強いなどとは、同じ兄妹ではありえません》
珍しくアリスが反発した。お気に入りの翔より妹が強い事が許せないとでも言うようだ。
────もし、あちらの世界に帰る事になりアリスが同行できるなら、あの女性軍団の真の恐ろしさが分かるさ。
そう翔が考えた時、どのような記憶の悪戯か、最後に聞いた六人もいる姉の中の一人が発した声が蘇った。
『橘家では、貴方のような弱者は生まれてはならないのです……』
記憶の中のその姉の声のトーンが翔の背中を総毛立たせた。翔は無理矢理意識を引き戻した。
────怖っ。身震いが出る~
翔は、思わす頭で悲鳴を上げた。
《お姉君のイメージですか? そんなにお綺麗なのにそれ程怖いとは……》
────妹は、姉の比では無いさ。怖くて思い出したくも無い。俺の真の苦手な存在だ。とにかくこんな奴らの事は二度と思い出したくも無い。あいつらは化け物って言うのさ。
翔は意識から彼女達のイメージに蓋をした。
────それよりも、ユグドラシルにおける魔法ランクの事だが、超新星や核爆発などの魔法は、この世界では存在しないのか?
《ユグドラシルでは、それらの魔法は存在しません。そのような概念が無いのです。あるいは第十グレイドを超える魔法かもしれません。
一般的にユグドラシルでは第十グレイド以上の魔法は存在しません。しかし明らかに創造主エロヒム様は、オーバーグレイド魔法をお使いだったと言われており、主神オトーディン様もオーバーグレイド魔法を使われると言われています。さらに神々の宿敵である巨神族も使うと言われております。ちなみにオーバーグレイド魔法は創造主エロヒム様が使われるところから創造魔法とも言われます》
────創造魔法の真の意味はそう言う事なのか?
《はい。真に翔様にふさわしい名前だと思われます》
────オーバーグレイド魔法が使える超等神ランクの魔術師ともなれればレリエルも気にせずに怠けて生きて行けるな~
《そうなれれば、幾らでも怠けて生きてください。そしてラグナロクが訪れれば片手間でよいのでユグドラシルを救ってください》
────俺はそんなご大層な人間では無いさ。
翔は、鼻で笑った。
「おい。翔。何をボンヤリしているんだ? 次のお客さんだぞ」




