019ー3 アメリアの憂鬱
【修正履歴】
2019年9月24日
○第19話を7分割しました。
○分りにくい表現を訂正しました。
○少し加筆しています。
○主人公等の思考を表す表記の方法を以下のように変更しました。
(主人公等の思考)
↓
────主人公等の思考。
なお、この変更は、順次行っています。
表記がしばらく混在しているので、お許しください。
【水晶迷宮 第一層 始まりの部屋 続き】
アメリアは、二人の他愛のないやりとりを笑って眺めていたが、意識は別にあった。
実は試練が終わった後、ブリュンヒルデと話したのだが、その時に彼女の出自に関わる話を聞く事ができたのである。
戦女神ブリュンヒルデよると、アメリアの祖父妖精王オベロンには矮小化の呪いがかけられていると言う。そしてその矮小化の呪いは、アメリアにも強く影響していたのだと言う。
それで彼女はオプティマスになる事が出来なかったのだ。
妖精王オベロンが彼女を至高者ではなく、魔法戦士にしていた理由は謎のままだが、女神のブリュンヒルデの説明から想定すると、その呪いと無関係では無さそうだ。
「アメリア。どうしたんだ?」
翔は、アメリアが考え込んでいる事に気付き、彼女が座っている椅子の隣に座りながら聞いた。
アメリアが目を上げるとメロもテーブルの向かい側に座り、心配そうにアメリアの顔を覗き込んでいた。
「いやすまん。私の家庭の事情を考えていたのだ。気にしないでくれ」
アメリアは、サバサバとした口調で答えた。
「お前がオプティマスではなく魔法戦士となっていた理由だな。お前の従兄弟達は、お前とは違い呪いの影響が無かったからオプティマスだったと考えると辻褄が合うんだな」
翔は眉を軽くしかめながら、アメリアの顔に優しい視線を当てて呟くように言った。
さすがに翔は、鋭いと感心するアメリアだ。
「やはりそう思うか? しかし、なぜ私だけ呪いが遺伝し、従兄弟殿達が遺伝しなかったのか。お爺様がなぜ私のような弱者をまともな護衛も付けずに魔界に使者に出し、私が奴隷にされて苦しんでいるのを見捨てたのか。さらに呪いがどの様に関係するのか幾ら考えても分からない事だらけだ」
「俺はそもそもメロも含めて、お前達の復讐を全面肯定するわけではないが、お前達が抱えているいろんな疑問を解き明かしたいと望む事は理解できる。
直ぐにでも、お前のじい様のところに連れて行って問いたださせてやりたいと思っているが、隣街に旅するのが精一杯の俺達では、全く話にならないし、今の情報では何とも判断出来ない」
翔はアメリアの背中に優しく手を置いてしみじみと言った。
「アメリア。レイラは神々が大勢で呪いを解いたって言ってたね。そんな事って奇跡かもね」
メロは、ポツリと核心めいたことを呟くように言った。
────確かにそうだ。
アメリアもメロの発言に無言で肯定した。
戦女神のブリュンヒルデは、終末戦争を神々の側が勝利することを目指して、共に戦う戦士を鍛えるために恩恵を与えているのだ。
神々が創りあげたレベルアップや冒険者ギルドや職業など、それら様々なシステムも、そのために構築されたのだ。
もし、その大義名分が無ければ、反アース神族派のオプティマスであるアメリアが神々からそのような恩恵を受けることは叶わなかっただろう。
戦乙女レイラは、サラリと説明したがアメリアは想像を絶する恩恵を受けたのかもしれないのだ。
『試練の間』をクリアーした事に対する褒美は、レベルアップを邪魔している各人の欠点を取り除く事だとレイラが語っていた。
翔は、そのことを改めて考え直してみた。
そのために、ブリュンヒルデとヴェルダンディーは、二人では力が足りなくて、大勢の神々が祈祷したと言った。
それは、メロの言うように、あり得ないほどの奇跡と言わねばならないのかもしれない。
「翔にも呪いがかけられていたとレイラが言っていたな」
アメリアが不思議に思って尋ねた。
「どうして私だけが呪いを解かれたのだろう?」
「ああ。それは、俺の呪いは、外見を少し醜くするって事で強さとは無関係だったからだろう」
翔があっさりと答えた。
「お前ほどの強烈な呪いでは無かったのだろうが彼女達には治す価値が無かったのさ」
「お前はいつもそうやって、自分の苦境をサバサバと話すな」
アメリアが翔を眩しそうに見ながら言った。
「何度も言うが俺は、今の状態を楽しみたいんだ。何度も死ぬような目に会うのは本当に勘弁して欲しいし、ちまちまレベルアップするのも御免だが、まぁそれも楽しむの中に入ってるんだったら仕方ないな」
翔は、楽しそうに言った。
「お前の話を聞いていると、何もかもが何でもない事のように感じてくるから不思議だ。今を満足することが幸福って事だな?」
「アメリア。お前は、賢いな。俺の言いたい事は、そんな難しい事ではなく、何でも楽しんでみたい。好奇心を満足させたいってだけかもな」
「アメリア。早く強くなろうね」
メロは、向かい側からアメリアの隣に、翔に割り込むように身を入れてると、彼女の腕をとって抱きつきながら言った。
「しかし、『試練の間』の褒美と言うのはメロの言うように凄い事なのかもな」
翔は、アメリアと翔の間に割り込んで来た、メロを膝に載せて、彼女頭をなでなでしながら、考え込んだ。
「俺は、魔術師になったからこんなにステータスが上がったのかと思ったが、よくよく観察してみると、俺のステータスは、全体的にとてもバランスが良くなっているんだ。
ノーリスクでこれだけの事をするのは唯の魔法では無理だな。しかも、世界樹から出ている魔力を感知する事ができるようになった。
これも大きな成果だな。お前達が何となくどれくらいのレベルか分かるようになったぞ」
「翔は、最初から分かってたでしょ」
メロが突っ込んだ。
「ああ。だから、それはアリスが教えてくれた……」
翔は、メロが白い目で翔の顔を見あげるので、その話を途中でやめた。
「とにかく、俺は魔術が前よりも使えるようになった。まだまだ幼稚な技しか使えないが。ちなみにお前達はどんな変化が有ったんだ?」
「ああ。どうやら飛べるようになったぞ」
そう答えたのはアメリアだった。彼女はそう言いながら宙に浮いてみせた。羽を器用に動かして宙を行き来して見せた。
その姿は、絵のように美しかった。
「おお。浮遊だな」
翔は、アメリアの姿を目で追いながら言った。空を飛べると素早さが相当上がっている事だろう。
「アメリア凄い。飛んでる」
メロも手を叩いて、はしゃいだ。
「メロ。お前は耐性が上がったんだな。ちょっと、お前の耐性がどれほど上がったか試しために、精神攻撃をしてもいいか?」
「嫌だ……」
最後まで言わせず、翔は精神衝撃波を放った。
「ダメって言ったでしょ」
メロが怒って翔に殴りかかった。メロは握り拳で強く叩いた。
「メロ。打撃力も上がったぞ」
強く叩かれた翔が指摘した。
メロの衝撃波への耐性が上がった事は、翔の衝撃波を受けて直ぐに反撃できたから、間違い無さそうだ。
メロは、プリプリ怒って頬を膨らませ、翔の膝から降りてしまった。
それから翔達は、自分達の得たご褒美の効果やサイド職に就いた効果などを話し合ったり試したりした。
☆
翔は、転生されてから、アリスのお陰でなんとかやってこれたが、本当の意味で、魔術師としてやり直しができるようになった感じがした。
────アリス。やはりお前のアドバイスに従って良かったようだ。ありがとう。
《いいえ。レリエル様の悪戯というには、あまりにも酷い仕打ちを、神器として許せなかったのです。ここに来れたのは、翔様の勇気があったからです。しかし本当の試練はこれからです》
────そうだな。俺はもう一度魔術師として再スタートするよ。向こうの世界の知識がやっと活かせるな。
翔は、嬉しそうに思考で伝えた。
《良かったです。頑張ってくださいね》
アリスに感情があるかどうかは不明だが、彼女がとても喜んでいるような気がした。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
翔は、メロ、アメリアに宣言するかのように言って『始まりの部屋(第一階層)』を出たのであった。




