341 真の敵とは
ここはエリュテイア帝国迷宮の最下層。
翔の前にはエリュテイア帝国の暗部組織の長であるレベル777シャドーデビルが跪いていた。
「なるほど。エストハイムは、公爵領に帰っているんだな」
翔は、シャドーデビルの姿を面白い物でも見るような顔で見ながら言った。
翔が見ているシャドーデビルは、翔ですら名前を知らないし、知ろうとしないで欲しいと頼まれている相手だ。
彼には全く同じ人物と思しき者が何名もいるらしい。レベルも全く同じ777に統一されていると言い、その誰が今相手をしているのかを秘密にしたいのだと言う。
翔が本気になると相手の正体を知るのは容易である。シャドーデビル達は、それを承知しつつ翔にそのように頼んできたのだ。
彼ら種族は、遠い昔には被差別種族であって、辛い種族歴史を持つらしい。
シャドーデビルの話によると、種族全体が酷く虐げられると、文化がとても歪曲するのだと言う。そして他者からすると正気とは思えないような行動を起こすようになるのだそうな。
現在のシャドーデビル族は、個々人の名前を周りに知らせず、己の任務は己だけが理解し、全体としてシャドーデビル全種族に貢献する事を意図して行動しているのである。
普通に考えて、とてつもなく不合理で非効率的な社会システムと思われるのだが、ユグドラシル世界において、シャドーデビル族全体が最強の暗部として確立した存在だったのだから部外者がとやかく言う話でも無いのだろう。
シャドーデビルによると、種族が一つの生き物のごとく種族主義と言う特殊な思想を共有して存在するのだそうだ。
翔は、基本的に自分の邪魔をしてこない者には寛容であり自治を容認する派なのでシャドーデビルがどのように生きようが好きにすれば良いと考えている。
敵対しているわけではなく、忠誠を誓っているのであれば何を言う必要もない。
賢人会議メンバーの強硬派である英霊神ローラや始祖吸血鬼神メアリなどは、シャドーデビルのあり方に否定的で、彼らを信用していなかった。だけでなくシャドーデビル族を根絶やしにしようとした。
翔は、そもそも自分のやりたいようにやるラフな生き方を好む。周りの者が自分を生き神様のように崇め奉るのも辟易していて、シャドーデビル達のような在り方に面白みを感じたので保護したのである。
シャドーデビル族にとって翔は恩人な訳だ。逆に賢人会議を心底恐れていた。
そんなシャドーデビルからの報告はとても有用であり、情報が多岐に渡る。エス世界の膨大な情報を翔にもたらしてくれていた。
「メロ様は単独行動を取られ、エストハイムが所有していると言う資産を次々に破壊中です」
「破壊?」
「メロ様は、どのようにしてあれらの資産がエストハイム様の物と断定されているのか不思議なのですが、首都周辺にある様々な施設を急襲しておられます。我らシャドーデビルではメロ様にとても追いつくのは無理なようです。
メロ様がなぜそのような施設を破壊するのか不思議だと調べみると必ずエストハイム公爵と関わっているようです」
「あははは。安心しろ。メロのはめちゃくちゃなだけだ。勘で暴れ回っているのだろう。あいつには目眩しになって貰ったら良いんだ。芹那も少しはやりやすいだろう」
「芹那様や他の賢人会議の皆様は、程なくエストハイム公爵領を包囲されると」
「ああ。首都を兵隊で埋め尽せばエストハイムと関係する者達は全て自領に一旦引くしかなかろう。メロが暴れているのも意味があるだろう。
エストハイム達からすると我々の目的は職業の国を制圧しようとているようにしか見えぬだろうから自分達は一旦引くだろう。国に忠誠を誓わぬ者などはそう言うものだ。危機に瀕すれば必ず逃げる」
「奴等に職業の国の国民を盾に使われるのが一番厄介でしたからね。魔人達に派手に町中で威圧を発散させたのはそのうな意図があっての事でしたか」
「職業の国の国民には悪い事をした」
滅多な事で表情を表さないレベル777シャドーデビルが驚きの表情を隠そうともせずに翔を見上げていた。
「しかしまさか真の敵が職業の国にいたとは意外であったな」
翔がポツリと呟いた。
「陛下。それがエロヒムを騙る何者であると」
「それは本当のところは不明だが、普通は、気付けるはずもしないシステムの欠陥を利用しているところはいかにも怪しいとも言えるが。
とは言え自称エロヒムとは別物だろうな。奴ならシステムに直接関わってくるだろうからな」
「陛下。私めには陛下の深淵なるお話しの意味が完全には理解しかねますが、それなりに重要な敵であると言う事ですね」
「ああ。そう解釈して間違いない。逆に言えば、慎重さが要求されると言う意味でもある」
「陛下は、真なる敵をどのように評価なされているのでしょう」
「ふむ。さすがに暗部の要。そのような質問をしてくるのはメロ以外ではお前ぐらいのものだぞ」
シャドーデビルは、慌てて頭を床に擦り付けた。
「僭越であればお許しを。我らは、弱き種族ゆえ、情報が命でございますので、出すぎとあらば我を滅し、種族にはご寛恕を」
「やめろやめろ。小難しい言い方は。自称エロヒムとは俺の本来の世界における唯一神を指す言葉だ。俺も難しい事は分からぬが、俺や芹那をこのユグドラシル世界に送りつけ、ユグドラシル世界を滅亡に導いていた存在だ。
奴が俺達のいた世界の唯一神と呼べる存在なら俺達に勝ち目などあるものか。亜神程度ならのもかく、真の神格とか次元が違い過ぎるだろ。
しかし、それにしては邪魔になったら別の世界に転移させると言うやり方しかできていない。それだけの力しか無いのであろうと思うが良くは分からない」
翔は、それだけ言って黙った。
紛らわしい表題にしてすみません。
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