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010ー3 割の良い仕事って知ってる? 3

2019年8月25日 文章を四分割しました。

ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

 翌朝、翔達は、冒険者ギルドに立ち寄った。


 とのろが、ギルドのエントランスホールに入ると翔達は嘲笑の渦に飲み込まれていた。


 何しろ、翔もメロもレベルが半減していたからだ。冒険者にとってレベルが低下する事は珍しく無い。


 迷宮でのトラップや中にはレベルを下げてくる魔物も存在する。


 まさか、意図的にレベルを下げたとは思わず、意地の悪い冒険者達は、翔達が何かヘマをしたと勘違いしたのだ。


 翔は5のレベルダウン。メロに至っては9もレベルダウンしていた。これは冗談では済まされない。


────ここの冒険者共は、本当に気分の悪い奴らだ。人が失敗した事がそれほど嬉しいのか?


 翔は、嘲笑してくる視線を無視しながら冒険者ギルドの受付に向かった。


 さすがに周囲の変化に鈍感な翔ですら、雰囲気の悪い、ギルドの冒険者の様子がおかしい事に気付いていた。


 女剣士に扮した魔術師ミラ・エルナイドの怪しい行動にも直ぐに気が付いた。


 人混みの中に紛れるように、隠れているが、ミラがファイアボールの魔法を構築しようとしているのが手に取るように分かった。


 これは、昨夜の交換トレード魔法でメロから魔法能力を分けてもらったおかげで、翔の魔法探知の才能が少しだけ改善した事も大きな理由だろう。


 まだまだ弱々しい感知能力だが魔法を感じられるのは本当に有難い。


 翔は、メロとアメリアに目で合図を送った。


 アメリアは直ぐに理解し、魔法の防御壁を構築していた。


────うまく作ってるじゃないか!


 翔は、アメリアの魔法の術式に満足しながらそう考えた。昨夜教えた通りにアメリアは防御壁を作っていたからだ。


 アメリアは魔法のセンスが良いだけでなくなかなか器用だ。


 一方、メロは精霊を呼んだようだ。精霊は、メロの好きなパックだ。羊の後ろ足を持つ愉快な奴だ。



 翔をかたきのように狙う女魔術師ミラ・エルナイドは、今日は三人の女の子の仲間と共謀しているようであった。四方向から翔に狙いをつけているみたいだ。


 今日の彼女達は、かなり本気で、翔を相当に、痛い目に合わせる気のようだ。悪くすると四発のファイアーボールの同時攻撃などを受けたら大怪我を負いかねない。


 翔は、女魔術師ミラ・エルナイドと三人の仲間が発動しようとしいるファイアボールが不発になるように魔法術式に変更を加えようとした。


 しかし、翔は、不発にするだけでは腹の虫が収まらないと思い直した。目には目を歯には歯をだ。このままでは彼女達にいつまでも、好き放題される形になってしまう。そろそろ思い知らせてやる時期だろう。


 そこで翔は、アイス系の魔法を構築して氷柱に、彼女達を氷漬けにしてやろうと考えた。


 氷柱に閉じ込めるぐらでは、死なないだろうが、あの魔法に掛かるとかなり恐ろしいのを翔は知っていた。


 翔は、手に入れたばかりの大量のMPを注ぎ込んで魔法を構築し始めた。その感覚は、久しぶりの贅沢な魔法の感覚だった。


 少しは、改善したとはいえ、たまだまだショボい魔法の能力なので、思う通りの術式まではさすがに構築できなかった。


 やむなく翔は、魔法の術式の至る所を簡易化せざるを得なかった。


 しかし、そんな事をしていると魔法の構築に手間がかかるものだ。


 この程度の魔法でこんなにモタモタしたことは、勝の記憶の限りなかった。


────物心ついた頃ですらもっと魔法の才能は高かったな。


 翔は、そんな事を思いながら、苦笑いを浮かべた。


 しかし、翔の嘆きは、全く見当外れだった。


 実際、先に術式を展開し始めた女魔術師ミラとその仲間達は、初級のファイアボールの構築すらできていないからだ。それがユグドラシル基準と言うものなのである。


 翔の方が、はるかに先に魔法を発動する準備が整った。


 翔は、準備の整った魔法を直ぐに発動した。


 四方で女達が叫ぶ声がした。


 見ると美しい氷のオブジェが四つ立ち上がっていた。


 このまま放っておくと、彼女達は、あの世行きだが彼女達が遅れて発動したファイアボールが炸裂し、氷柱が四散して、彼女達は助かった。


 自分で作ったファイアーボールの爆発で、彼女達は、そのまま意識を失って倒れてしまった。死にこそしないが相当なダメージを受けたはずだ。


 翔には、この結果は、全て計算済みだったが、彼女達はどう感じたろうか。氷に閉じ込められ死にかけた上に自分の魔法で爆裂するなどは、想像もしていなかっただろう。


 突然の事に騒然となる冒険者ギルドのエントランスだが、翔は、我知らなぬとばかりに無視して、メロとアメリアを促すと受付に向かった。



☆☆☆



 驚いたのは、この場に残された冒険者達であった。なぜなら彼等は、氷柱魔法を初めて見たからだ。しかも四ヶ所同時の発動などと言う魔法など聞いた事も無かったからだ。


 そんな魔法は、彼らの常識には無い魔法だ。そもそも氷を作ることですら、ここの魔法使い達には、至難の技だったからだ。


 この魔法は、水を創造した上に、水を凍らすのだ。魔法のレベルで言えば20以上の難易度魔法だ。さらに言えばレベル20の魔術師ですら氷を作るのに数分を必要とする。さらに出来た氷の大きさもずっと小さなものをたったの一つしか作れないだろう。


「あいつらに関わるのは止した方が良いぞ」


 倒れた女魔術師と仲間達に回復魔法をかけてやった冒険者が諭すように言った。


「あいつらはただのルーキーじゃないようだ。レベルが下がったのにメチャクチャ強くなりやがった」


 冒険者の鋭い勘がそう教えているのだ。



 受付嬢はいつものようににこやかだった。


「いらっしゃいませ。本日はどのような要件でしょうか」


「今日は転職に来た」


 翔が答えた。


「転職ですか? でも翔さんもメロさんもレベルがまだ転職できるほど……」


 受付嬢が、レベルの下がった翔達を

痛ましい者を見るような目で見て、気の毒そうに呟いた。


「大丈夫だ。レベルは、下がったがそれほどステータスの変化は無いから」


 翔は、キッパリと答えた。


 翔の自信ありげな様子を見て、受付嬢は、ようやく心配そうたが納得したようだ。


「それでは、この水晶に手を置いてください」


 受付嬢がそう言った。


 翔は、言われた通りに水晶に手を置いた。


 受付嬢は、魔宝具を操作して、翔の状態を検査し、結果を見て驚いた声を上げた。


「翔さん。本当にレベルダウンされたんですか? 翔さんは明らかにレベル4の能力を超えていますね。で、転職ですよね。どのような職業をお望みですか?」


「俺は、付与魔法で武具に魔法を付与するつもりだが、それを考慮したとして、攻撃重視の一番有効な職業はなんだろう?」


 翔は、自分のイメージを説明した。


「付与魔法ですか? 検査してみましょう。なるほど、なるほど、確かに翔さんは、凄い付与魔法の能力をお持ちですね。それならいっそ、付与魔法師になられたらいかがですか? 下手な冒険者などより、堅実で、稼ぎも多いと思いますよ」


 受付嬢が不思議そうに聞いた。


「俺は、冒険がしたいんだ」


 翔は、言い難い説明を、省く為にそう答えた。


 しかし、その言葉は冒険者同士として、最も説得力が有った。付与魔法師は冒険向きじゃない。


 受付嬢は、ニッコリ笑った。


「さすがは、噂のルーキーですね。分かりました、良い職業を探しましょう。まず適性から導き出される攻撃系の職業ですね。『魔騎士』『竜騎士』などはいかがでしょうか、魔法武器を使う職業です」


「うちのアメリアが聖騎士に鞍替えする予定なんだ。騎士ばかりいらんだろう。ちなみにランサーも騎士と被るからいらんぞ」


「そうですね。弓使アーチャーいはいかがでしょうか?」


「あまり好きじゃないな」


 翔は、にべもなく否定した。性にあわない気がしたのだ。


「翔さんのレベルでなれる職業で、上級職は、『魔界剣闘士』、『魔界武闘家』、『魔界戦士』の三職ですね。これらは、魔界の悪魔系の職業で人気がありませんが、かなり良い成長が期待できます」


「翔。暗い職業の人は嫌」


 メロが割って入ってきた。


「悪いな。こいつの意見も聞いてやってくれ。パーティーメンバーだからな」


「承知しました。あまり見ない職業に適性が現れていますね。『戦闘魔術師』です」


「そいつは良いな。本当は、魔術師系が望みなんだが、今はダメなんだよ」


 翔は天使レリエルの顔を思い出しながら言った。さすがにどのような職業になっているかまでは、隠しようがないだろう。まさか魔術師になったとしたら、ステータスの偽装がバレてしまうかもしれない。


「そうですか。あ、よく見ない職業が、現れましたよ、『創造師クリエーター』と言う職業です。付与魔法師とは相性がいいようですよ」


「芸術家みたいな職だな。名前は気に入ったが能力は良いのか?」


「ステータスも錬金術師と似てるようです。しかし、錬金術師よりも、かなり自由度が高いようですし、攻撃系で検索して出てきたましたから、錬金術師よりも攻撃に特化している職業なのでしょう」


「分かった少し考えさせてくれ。メロ。アメリア。俺が熟考している間、お前達が先に転職しておけよ」


 そう言うと翔は熟考するフリして、アリスの情報を確認する事にした。


────アリス。創造師クリエーターってどうなんだ?


《翔様。まさかそのような希少職に適性を示されるなんて思いませんでした!》


────どうして、そんなに興奮しているんだ?


創造師クリエーターとは神様の事です》


────何?


《もちろん、表面的な意味では芸術家的な意味も持ちます。しかし創造師クリエーターは実は、とても特殊な特性があります。それは神々が持つ『神聖』『超越』『絶対』『不滅』『不可侵』などの特性です。芸術とは、そもそも、そう言う物です、それが故に神々そのものと同義になります》


────職業と言うのは、就いていると色んな特技や技を覚えるがその職業を主催する神々の恩恵を受けるからなんだろう?


《その通りです。職業はその他に基本的なステータスの成長に影響します。基本的ステータスへの影響は、職業の持つ特性とどの様な困難を経験し克服したかなどが微妙に関わります。その意味で創造師クリエーターの特性がとても重要なのです》


────アリスの一番押しの職業なの?


《芸術を司るのはブラキ様。アポロン様とその支配下にあるミューズの姫君達などの恩恵を受けられます》


────そんなのは、あまり攻撃職とは思えないが?


《ユグドラシルの創造主たるエロヒム様が恩恵を与えてくださるたった一つの職業でもあります》


────エロヒム?


《はい。この世界を創造した神です》


────分かった。凄い職業なんだな。アリスのお勧めを素直に聞くよ。


《ありがとうございます》


 翔は、アリスとの会話から現実の世界に戻った。



「メロさん。どうしても四大精霊魔法師エレメンタリストは嫌なのですか?」


 受付嬢が聞いた。


「嫌。もっと可愛いのが良い」


 メロが答えている。


「どうした?」


 翔はアメリアに尋ねた。


「メロが四大精霊魔法師エレメンタリストに転職するか、どうかで迷ってるんだが受付の人は、絶対転職すべきだと結構押しているんだ」


 アメリアが答えた。


妖精使フェアリーテイマーいにでもしろと言っているのだろう」


 翔が笑いながら言った。


「何故わかる?」


 アメリアは、驚いて聞き返した。


「あいつが人の言う事など聞くはずがない。他に何を勧められてんだ?」


 翔が尋ねた。


「聖女や女司祭などだ。なかなかメロは優秀なようで受付の人も感心していたぞ」


 アメリアが答えた。


「聖女と女司祭? そいつはメロには全くお似合いじゃないな。四大精霊魔法師エレメンタリストが気に入らないとは思わなかったが。おい。メロ何が気に入らんのだ」


「だって、土水火風の四つの精霊しか使えないんでしょ?」


 メロの意見だ。


────そうなのか?


 翔はアリスにたずねた。


《確かに四つの精霊に特化しているかもしれません》


「神の奇跡を為す者という意味で少し古い職業ですが、ソーマータージと言う職業はどうですか?」


「変なの」


 メロは歯牙にもかけなかった。


妖術師ソーサラーはいかがですか」


「嫌」


「珍しい職業に適性がある様ですね。神使セオマスターいと言う職業の適正が出てますよ。精霊なら神をも支配下に置くと言う強い精霊使いです」


神使セオマスターい? うーん。なんか変」


 メロは、首を左右に振って言い切った。


「アメリア。あいつは放っておいてお前から転職しろ」


 翔がアメリアに言った。


「メロ。お前は、こっちでゆっくり考えてろ」


 アメリアがメロと場所を変わる。水晶に手を当てる。


「アメリアさんは、どの様な職業をお望みなのですか?」


「翔は、聖騎士が良いと言っている。どんなもんだ?」


 アメリアが尋ねた。


「アメリアさんは、確かに今の黒系職の魔法剣士よりも白系職に適性がありますね。ですが、一番優れた特性を発揮するのは、『至高者』となっています」


 受付嬢が答えた。


「私はその至高者オプティマスだが?」


「私も今日は、不思議な職ばかり出てくるので目が回りそうですが、『至高者』は職業ですね。えっっと、解説をそのまま読みますね。『エルフの守り手オプティマスが作った職業でありオプティマスの王族にしか就けない職業。オプティマスは、王族に至高者の職業を当て、市民に魔法剣士の職業を当てることで能力を差別化している』と有ります」


 その受付嬢の言葉にアメリアは絶句した。


「その説明は本当のことか?」


 アメリアは氷のように冷たい口調で尋ねた。


「おい。アメリアお前の複雑な家庭環境を受付のお嬢さんに詰問きつもんしても仕方がないぞ。少しお前も心を落ち着かせた方が良さそうだな。俺が先に転職してるから、心を落ち着かせたらどうだ」


 翔は、アメリアの肩に手を置いて、耳元に囁いた。


 アメリアが無言で頷いた。自分の職業にそのような深い意味が有るなどはアメリアも想像もできなかったろう。彼女は王族の一員としてオプティマスの職を与えられていなかったのだ。


 アメリアの様子を見たら彼女がその事実を誰からも説明されていなかった事は翔もメロも直ぐに分かった。


 メロもアメリアの方に寄ってきて両肩を抱いて慰めはじめた。翔もアメリアの頭を優しく撫でてやった。


 真っ青な顔色になってアメリアが翔と場所を変わった。


 翔は、受付嬢の顔を見ながら言った。


「いろいろ手数を掛けて悪かったな。俺は、創造師クリエーターにしてくれ」


「分かりました。では、ここに手を添えてください」


 翔は、水晶に手を置いた。受付嬢が何かの呪文を唱えたようだ。身体に不思議な光が宿った。武闘家になった時と同じ感覚がかじられた。


「翔さん。創造師クリエーターになりましたよ」


 受付嬢が言った。


「ありがとう」


 翔は、礼を言って後ろを振り返った。


「お前達はどうするんだ?」


「翔。クリエーターって?」


 メロが尋ねる。


「芸術家だが、神様と同じ特徴がある珍しい職業みたいだ」


 翔が説明してやった。


「翔。超不遜ちょうふそん。神様になるのを狙ってるなんて。でも翔が神様なんだったら。いいアイデアを思いついた。アメリア。ちょっと待っててね」


 メロは、そう言うと、翔を押し退けるようにしてカウンターの前まで出た。マサ


 メロは受付嬢にニッコリ微笑みかける。


「お姉さん。私は、神使セオマスターいになる」


 メロが受付嬢に宣言した。


 受付嬢は可愛いメロの笑顔に顔がトロンとなって、微笑み返した。


「はい。ではここに手を置いてください」


 メロは言われた通りにする。受付嬢が翔と同じように呪文を唱えメロがセオマサターになった。


「アメリア。お前はどうする? さっきの話では、俺達のようにお気楽に転職する気にならんだろうが、お前を王族扱いしてくれなかった家族を見返す為にもここはオプティマスになっておく方が良いんじゃないか?」


 翔は、優しく聞いた。人の気持ちは複雑なので、はいどうぞと言われて望む物を目の前に出されると、逆に嫌になるかもしれない。


 しかし、アメリアは黙って頷いた。翔がアメリアの顔を見ると、迷いはなさそうだった。


 メロと場所を代わりオプティマスへの転職を願い出た。


 アメリアと入れ替わり翔の横に来たメロに、翔が尋ねた。


「メロ。何でセオマスターになったんだ?」


「だって、翔が神になったら支配できるもん」


 メロは、そう答えた。


 アメリアは、オプティマスに転職した。


 これで皆、転職を終えた。レベルは低いが、三人共に希少職種に就いた事になった。三人共に希少職種に就けたのは、偶然だなのだろうか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【上級職に転職した結果】


○翔

 【創造師クリエーター

 一見すると芸術家と見えるが、実は神様の性質を持つ希少職種。どんな特技や技があるかは不明。


○メロ

 【神使セオマスターい】

 精霊である神を支配するほどに強力な精霊使い。神になった翔を支配するのがメロの企み。


○アメリア

 【至高者オプティマス

 オプティマスの王族だけが就くことができる謎の職業。本来王族のアメリアがなぜその職に就いていなかったのかは謎。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 三人の新たな転職が今後どのように影響するかは不明だ。


 レベルを上げることが第一だろう。


 受付嬢に礼を言った後、翔は別の要件を言った。


「もう一つ用件があるんだが良いか?」


「はい。どの様なご用でしょうか?」


 受付嬢がニッコリと笑顔で答えてくれた。本当に感じが良い女の子だ。


「実は、クエストのゴブリン討伐の報奨金を受け取りに来たんだ」


 翔が言った。


 翔の言葉に受付嬢は驚いて翔を見た。


「もしかすると、昨日スラム街で暴れていたハイゴブリンを退治されたのは、皆さんだったのですか?」


 受付嬢は、驚ろきで目を丸くしながら尋ねた。


「そうだ。ゴブリングレイトとか言う、ふざけた称号を持っていたな。これは、そいつから取れた爪と牙だ。クエストの証拠になるか?」


 翔は、そう説明しながら、爪と牙を受付嬢に渡した。


 受付嬢には、鑑定の能力があるはずで直ぐに爪と牙の意味を悟ったようだ。


「翔さんのパーティーには、驚かされてばかりいます。この爪と牙を鑑定して貰って来ますので、しばらく待っていてもらってもいいてますか?」


 受付嬢はそう言うと奥に入ってしまった。


 しかし、意外に早く受付嬢はもどって来た。


 受付嬢の説明では、ゴブリン討伐クエストの報奨金は冒険者ギルドの奥でギルドの偉いさんから渡される事になったと言う。


 翔達は、冒険者ギルドの奥に、案内されて入って行った。



☆☆☆



 ギルドの中は、古臭いが小綺麗と言う印象だった。


 何人かすれ違った職員は大抵レベルが高く、上級の魔法職が多かった。


 外の冒険者の溜まり場とは、全く違う雰囲気だった。


 翔達が案内されて、通された部屋は、大きな応接セットだけが置かれた部屋だった。


 ここなら、相当大勢でも入れるだろう。


 メロはキョロキョロと部屋を見回している。


 アメリアも、優雅な笑みを浮かべて部屋を見回している。羽がキラキラ輝いて綺麗だった。


「翔。大きな部屋だな」


 アメリアが言った。


「アールフヘイムには、こんな建物は無いのか?」


「正直、エルフ宮はもう少し小さいと言うか、木製で質素だな」


「お前の生活の方が俺の前の世界と似ていそうだな」


 翔は、日本の生活を思い出しながら言った。


「俺の世界では、壁やドアも薄い紙で作っていたもんだ。障子しょうじふすまって言うんだが」


「翔の家。紙の家だったのか?」


 メロが驚いて尋ねた。目が点になった。


「お前の想像は絶対間違ってるから今直ぐ消去しろ」


 翔は、強く否定しながら手を左右に激しく振った。


「そうか……翔。可哀想」


 メロは翔の話を聞こうともしなかった。しかし翔は放っておいた。もはやこいつに何を言っても無駄と感じたのだ。


「翔。さすがに、紙の家は信じられん」


 アメリアまで疑いの目を向けてきた。


 鬱陶うっとうしいので翔は、それも無視したのだった。

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