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010ー2 割の良い仕事って知ってる? 2

2019年8月25日 文章を四分割しました。

ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

「メロ」


 翔はアリスとの会話を終えてメロに呼びかけた。


 その時、メロは翔のマジックバックの中身をほとんど全部出して廃屋の床一面にばら撒いているところだった。


 アメリアは知らんぷりをしていた。


「何を探してるんだ?」


 翔が尋ねた。


「身体チェック。翔がエッチな本とか持ってないかチェック」


 メロは、そう言ったが、ただ何が入っているか見たかっただけだろうと翔は推理していた。


 そこで、ここでは翔は肩をすくめて見せ違う事を言った。


「後でちゃんと片付けておけよ」


 アメリアは二人のおかしな行動を興味深々で観察していた。見ていて飽きない。


 普通はメロのように人の持ち物を出して見たりしないだろうし、出された方は怒るだろうが、翔は怒る気配が全くなかった。


「翔。自分のバックの中身をさらけ出されて嫌じゃないのか?」


 アメリアは聞いてみずにはいられない。


「あいつにそんな常識を言っても無駄だ。お前も見られたくないならあいつにバックを渡すんじゃないぞ」


 逆に翔がアメリアに忠告した。マジックバックを渡してしまった事を自分の失敗だと考えているのだ。


 アメリアは、思わず笑ってしまった。


「メロ。気が済んだら出したものを中に入れてこっちに来い。相談したい事があるんだ」


 翔がそう命じた。


 一方のメロは、頬をプックリと膨らました。自分で出したくせに直すのが嫌なのだ。


 メロのその気持ちがもろに出たのか、メロはスローモーションのような速度で出した物をバックに戻し始めた。


 翔は大きなため息をついてバックの中身を直すのを手伝う。


 最後の方はメロは何もしていないかった。


 そんな二人の様子を見てアメリアはクスクス笑った。アメリアは、久しぶりに腹の底から笑えた気分になった。


「翔。何か良いアイデアが浮かんだのか?」


 笑いながらアメリアが尋ねた。


 翔は、散らかされた荷物を袋にしまいながら、顔だけアメリアの方を向いた。


「ああ。今の状況をよくよく考えてみると、俺には、MPが一番必要だし、メロは、精霊魔法を欲しがっている。お互いの能力を魔法で交換すればウィンウィンだ」


 翔は説明した。


「そんな事ができるのか?」


 アメリアは、翔の説明よりも、聞いた事も無い能力の交換ができることに驚いた。


「翔の精霊魔法をくれるの?」


 メロも、二人の話を聞きつけたようで舌舐めずりをしながら尋ねた。


 精霊魔法は、メロが今、一番マスターしたいスキルだ。端正で可愛い顔を紅潮させていた。


「タダでやるんじゃないぞ。お前は耳に心地良いことしか聞こうとしないから、良く聞き良く考えてから決めてくれよ」


 翔が念を押すように言った。


「良いか。この交換トレード魔法には大きなペナルティーが課せられるんだ。それはレベルが半減してしまうって事だ」


 翔は、メロに言い聞かせようと少し厳しい声を作って説明した。


「翔。どうでも良い。早く交換トレード魔法! 交換トレード魔法! 交換トレード魔法」


 メロは、右腕を上下に振りながら、変なリズムを付けて言いながら翔の周りを歩いて回り始めた。


「お前。人の言う事を真面目に聞けよ」


 翔は自分の回りを歩き始めたメロを呆れて目で追いながら言った。


「難しい事は翔に任す。説明。いらない。早く。交換! 交換」


 メロは自作の下手くそなリズムに乗せて歌いながら翔の周りを回り続けた。


 翔は呆れて、肩をすくめた。


「アメリア。こいつは本気か? レベルが半分になるんだぞ」


 翔が助けを求めるようにアメリアの方を見た。困り果てた顔だ。


「翔。お前は、私達のリーダーだ。お前がいなければメロも私も直ぐに餓死するようなタイプだ。お前が思うようにすれば良い。お前は不思議な奴だ。何をするにも相当熟考してから結論を出すタイプだ。お前の結論なら異論は無いさ」


 アメリアが笑いながら言った。


────メロは、何もかも翔を信じて任せる気だ。


 そうアメリアは考えているのだ。女同士のアメリアにはメロの意思など一目瞭然だった。


 アメリアの言葉で、翔もようやく納得した。


「よし。じゃあここに交換トレード魔法の下準備の魔法陣を描く」


 翔は、そう説明しながら、邪魔なメロを退かせて、地面に複雑な魔法陣を描きはじめた。


 メロは、興味津々になって、魔法陣の図形についてあれこれ尋ね始めた。


「翔。この星型の魔法陣は何と言う?」


 メロが指差したのは五芒星だ。五角の一筆描きの星マークだ。


「これは、五芒星ペンタクルだ。これの中に、有力な悪魔のシジルを描くんだ。それがシジルと呼ばれるシンボルのようなものだ。これらのシジルを見た精霊が恐れをなして邪魔しないのだ。これはルアクス、バルサファエル、アロトサエル、イウダルの五大悪魔のシジルだ……」


 しばらく翔はメロに丁寧に教えてやった。しかしメロの許容量が直ぐに限界に達してしまい、眠くなって、遂にはコックリコックリし出した。


 しかし、二人の様子を横で聞いていたアメリアの方が今度は食いついてきた。


「このシジルは、レヴィアタンのシジルだな」


「そうだが?」


「ここにはなぜヘキサゴンを描くのだ。我々はレヴィアタンには大抵トライアングルを描く」


 アメリアは少し知ったかぶりをして聞いたみた。


「全体のバランスを考えてみろ、トライアングルでは魔力がこちらとこちらとこちらの三方向に流れるだろう……」


 翔の講義は続いた。


 翔の講義にアメリアは、目を丸くし始めた。凄く分かりやすいからだ。


 しばらくして、翔が描き始めた、魔法陣が完成した。アメリアは、翔の講義を聞き終えてみて。


────こんなに分かりやすく教えてもらったのは初めてだ。


 アメリアはそう思った。


「翔。大いに勉強になった。お前さえよければ、また講義して欲しい」


 珍しくアメリアが頼んだ。


「お前は、魔法の素質が高い上に飲み込みが早い。もっと使い勝手の良い魔法を後でいくつか教えてやろう。お前なら明日からでも使えるだろう」


 翔は、楽しそうに答えた。本来彼は、頼まれると断れないタイプなのだ。


「俺の世界では、お前達の様に才能の豊かな者がほとんどいないのだ。教えてるは、案外楽しいものだな」



☆☆☆



 交換トレード魔法用の魔法陣は、アリスからアドバイスを受けながら、書いたものだ。


 ただ、言われた魔法陣をかなりの範囲で修正した。流石のアリスも魔法レベルの低いユグドラシル世界の産物でしかなかったから、高度に発展した、現代魔術を知る翔には、アリスの示す魔法陣が効率の悪いものと見えてしまうのだ。


《さすがに翔様です》


 などと、アリスは絶賛していた。


 出来上がった魔法陣の所定の位置にメロを立たせ、翔は、自分も魔法陣の中に立った。


「アメリア。少し下がっててくれ」


 手でアメリアに合図して下がらせた。巻き込まれたら何が起こるか分からないからだ。


「よし。メロ。魔力を注ぎ込め」

 


 お馴染みの転生の空間に入ったようだ。


「アリス。例の空間のようだな」


 翔は、声を出して尋ねたみた。


《おめでとうございます。転生の空間に入ったようです》


 懐かしい転生車輪の女性の声が答えた。


「メロが見えないな」


《あなたが支配者側だからです》


「まぁ良い。さっそくやろう」


《承知しました。それでは、トレードします。翔様の精霊魔法のステータスの八割程度とメロさんが絶対的に不足しているHPや物理防御力などと共に、メロさんの魔法の能力値やMPとトーレドします》


 アリスの説明の声の直後に、交換トレード魔法が発動した。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【トレード魔法の結果】


○翔、レベル4【レベル半減】

○メロ、レベル9【レベル半減】


【その他の変化】

○翔

 MP58【45アップ】

 魔法能力【15%改善】

 精霊魔法の能力【75%減】

 HP160【60減】

 防御力【10%減】



○メロ

 MP120【50減】

 魔法能力【5%減少】

 精霊魔法能力【550%増】

 HP110【50増】

 防御力【20%改善】


【魔法能力をレベルで評価】

○翔、レベル6【2アップ】

○アメリア、レベル10

○メロ、レベル18


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



────どうだアリス?


 翔は、アリスに、トレードの結果について尋ねてみた。


《随分とバランスか取れました。翔様は、魔法能力は一般的なレベル6程度までに改善されました。これだけ才能が上昇すれば、今後のレベルアップでかなり上昇するでしょう。もはや天使レリエル様の悪巧みは、潰えたも同然です。一方、メロさんは低かった防御力やHPも随分改善できましたし、精霊魔法の能力は凄い事になりました。お互いの弱点を補い合った良いトレードです。今後も魔核を摂取する事を考えると皆さんの今後のレベルアップに伴う各種能力の増加は凄い事になると思われます》


────ありがとう。アリスのおかげだ。


 こうして、トレード魔法という、少し賭けにも似たイベントが成功のうちに終わった。


 しかし、またまたレベルが下がってしまった。


 この後、交換トレード魔法が成功したことをメロに説明し、翔はメロに近代魔法を応用した精霊の使役方法などを教えた。


 メロは独特の感性を持っている様でさすが今度はいきなりイフリートを呼ぶような事はなかったが、何種類かの妖精を使役する練習をしていた。


 メロの様子を見ていた翔は大満足だった。全く使いものにならなかった欠陥魔術師がいきなり相当優秀な精霊魔法師に変身したのだ。喜ばないはずがない。


 一方、アメリアにも、空いた時間を利用して、防御系の魔法を教えてやった。アメリアは防御系に適していると直感で分かったからだ。


 魔法障壁は、物理系にも魔法系にも有効な魔法防御だが、ユグドラシルでは障壁の魔法が余り発達できていなかったようで、アメリアはとても驚いて魔法を習っていた。今後このスキルは大いに役立つだろう。

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