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010ー1 割の良い仕事って知ってる? 1

2019年8月18日、内容を訂正しました。

翔等の考えをしめす方法を以下の通り変更しました。


『表記の変更』

(思考)

から

────思考

に変更しました。


【例】

(おや? 何だろう?)

から

────おや? 何だろう?

に、変更


なお、この変更は、順次変更していきますので、二つの標記方法が混じっている期間があります。

違和感を感じると思いますがお許しください。

2019年8月25日 あまりにも長いので文章を四分割しました。

ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

 翔達三人は、大変疲れてヘトヘトだった。長い一日となった。


 退治したゴブリンを魔核に精製し三人で分けたり、ゴブリンから稀に取れるアマドレスという黄緑色の見すぼらしい石を採取し終わった頃には既に夜になっていた。


 ゴブリンの巣はメロが第六グレイド魔法の瀑布カタラクタで綺麗に洗い流してしまったから、どんな巣かはよく分からなかった。


 ゴブリンを量産するための苗床なえどこにされてしまった犠牲者の女の子達がいたのかもしれないが実態は不明だ。


 だだ悲しい事だが、もし犠牲者がいたとしても彼女達はゴブリンを量産する魔物にされてしまったため元には戻れないのだ。


 メロが大魔法の『瀑布カタラクタ』を使ったのは、苗床にされてしまった可哀想な女の子達を綺麗に洗い流してやりたいと言う、メロの優しい願いがからだったのだ。



☆☆☆



「良くやったな。お前達」


 翔がメロの頭を撫でてやった。


「翔。エッチ。すぐに触る」


 メロは、顔をしかめて言ったが逃げようとはしない。


 翔は、アメリアの頭も撫でてやった。普通、アメリアのような取り澄ました美形の女の子には、年頃の男の子なら躊躇ためらう行為のはずだが、翔の上目線さは半端ないのだ。自分がそうしてやれば、世界中の女の子は喜ぶと信じて疑っていなかった。


 一瞬、アメリアは、頭を避けたものか拒否したものか迷い、体が硬直したが躊躇ちゅうちょしているすきに、翔がグリグリ頭を撫でてしまった。


 アメリアは、そうされてみてまんざら嫌でもないと感じている自分に驚いていた。しかし口では鋭く批判することは忘れていなかった。


「翔。乙女の頭にはもっと優しく接しろ」


 アメリアは、叱りつけたつもりでいるが、その言い方では暗に触ることを許容してしまっている事には気付いていなかった。


 翔は、今後もアメリアに馴れ馴れしくする事に何の躊躇ちゅうちょをするつもりもないしもちろんアメリアの言う事を聞いて優しく接するつも毛頭なかった。


 やりたいようにやるだけ。それが翔という人物の本性で欠陥だらけなところだ。


「退治されたゴブリン共も、可哀想だが犠牲者の女の子達の事を思うと優しい気持ちにはなれないな。魔物退治は俺達のレベルアップの為には、ムナクソ悪いが仕方ない。世間様に対しても全く無駄じゃないんだからな」


 翔は、言い訳のように、そんな風に言った。


 実は、魔物であっても生き物を退治する事に、かなり無理しているメロとアメリアなのだ。そんな彼女達へのねぎらいの為に言ったのだ。


 辛辣な言葉を連発する癖に妙なところで優しい翔なのであった。


「よし。では帰るぞ」


 こうして、ゴブリン討伐の長い一日の終わりを宣言した。


 ようやく彼等は帰路に着いたのである。しかし生憎あいにくなことに冒険者ギルドも宿屋のある地域もここからはかなりの距離があった。


「翔。もう無理。歩けない」


 そんなわがままを言うのはメロに決まっていた。


 ところが。


「翔。私もだ」


 アメリアまでわがままを言いだした。


 確かにクタクタであるのも事実だった。


────そう言えば、宿を予約している訳ではないし。これから小一時間もかけて帰らなくってもいいんだな。


 翔もそう考えた。


「お前達。歩かなくても良いが、野宿することになるぞ。こんな廃墟しかないゴブリンの残党がいそうな所で野宿なんて怖くないか?」


 翔は、無理に怖そうな顔をして脅した。


 メロは翔の顔を見てまんざら嫌がっていないと分かると。


「わーい。皆んなで野宿」


 とはしゃぎ出す始末だった。メロは、とにかく皆で行動するのが楽しいのだ。


────そっか。こいつは金が無くなってずっと野宿していた変人だったな。


 翔は、そんな失礼な事を考えながら口では違う事を言った。


「お前。怖がり屋さんのはずだろうが」


「みんなと一緒なら大丈夫」


 メロは偉そうにふんぞり返って言った。


「何で偉そうに言うんだ?」


 翔が突っ込んだ。


「それより翔。私。ご飯が食べたい」


 メロは、わがままが始まったら止めどが無くなるようだ。


「翔。私もお腹がすいたぞ」


 アメリアがどうした事かメロに追随して言った。彼女の顔にも笑顔が見えた。


「おい。お前達、俺が自動販売機に見えるか?」


「見える。早く食事」


 メロは本当に駄々っ子のようにせがむのだった。


────自動販売機など知らんくせに。メチャメチャな奴だ。


 そう翔は呆れ果てた。


「見える見える」


 アメリアまで相槌を打ち出す始末だ。


 翔は、大きくため息をついた。


────メロではないが皆で野宿も楽しいかもな。


 そう考えている自分が可笑しなった。


「夜になると、寒くなるかもしれん。手頃な廃屋はいおくを探して中に入るぞ」


 翔達は、廃墟の中から屋根が未だに残っている、手頃な廃屋はいおくを見つけると中に入った。


 翔は、マジックバックに手を突っ込こんでゴソゴソした。


────仕方がない。宿で買っておいた保存食を出すか。


 翔は、マジックバックから保存食として用意していた食料を出しはじめた。


 メロがすかさず飛びついて来た。


「ヤッタァ〜。食事! 食事!」


 メロは、子供のようにはしゃぎだした。


「ほれ」と翔は、パンと干し肉をメロとアメリアに渡した。水筒も傍らに出しておいた。


 アメリアには、メロの天真爛漫ぶりが眩しい。彼女は、メロの真似をしてわがままを言ってみてメロがなぜ、翔にわがままばかり言っているのか理由が分かった。


 その気持ちを伝えるためにアメリアは、翔に見えないようにメロに合図を送った。


 女の子の勘でメロは、アメリアが何を言いたいのか直ぐに察知した。メロもニコリと笑顔を返えす。


────翔は、わがままを言われるのを喜んでいる。


 アメリアは、そう感じたのだ。彼女が見ていると彼は、口ではいろいろ言うが顔が嫌がっていないのだ。


 翔は、メロとアメリアがにこやかにパンを食べているのを見ながら呟いた。


「お前達は本当に能天気でいいな」


 翔がそう呟いたのは、自分達の致命的な弱さを思っての事だ。苦戦した相手は、急成長中の異例ゴブリンとは言え、たかがゴブリンだ。そんな奴にあれ程手こずるとは思ってもいなかった。


「俺達が今まで倒して来たのは、蝶々。モグラ。野ネズミとかそんなくだらん奴ばかりだ。今回もちょっと変な奴も一匹混じっていたが、ただの小鬼にすぎん。魔物とも呼べない弱小共だ」


 翔の話をメロもアメリアもパンをかじりりながら聞いていた。


「俺達は、まだまだ呆れるほど弱い。これほど苦労したのに今回のように、ほんの少しか経験値は稼げない。このままでは、目標値まで届くまで何年かかるか分からん。何かいい方法が無いかしばらく一人で考えさせてくれ」


 翔はそう言った。アリスとじっくり相談したかったからだ。翔は、二人の了解も足らずにさっさと目を閉じてアリスとの会話に集中し始めたのだった。


「翔は、ああやって頭で誰かと話すといいアイデアが出ると主張している」


 メロは、翔の奇行きこうについてアメリアに説明した。


「頭の中の人はアリスと言う設定らしい。時々ブツブツ独り言を言うのが気持ち悪い。近くと病気が移る」


 メロは顔をしかめてそう言った。


 アメリアも顔をしかめて翔を見た。


 確かに目をつむって何かしきりに考えている様だ。設定が女の子だとかはメロではないが気持ち悪いが、昨夜もそんな事を言ってから、アメリアの呪戒と奴隷紋章を消し去っていた。


 翔独特の瞑想法と考えたら良いのか。


────メロといい、翔といい。本当に変わった者達と関わってしまった。


 自分の事は棚に上げてアメリアはため息をついた。


 メロは、パンを食べ終わったが、翔は瞑想を続けていた。メロはまだ物足りなかったので翔に飛びついて勝手にマジックバックを開いてゴソゴソやり始めた。傍若無人とも言える行為だが、翔は全く動じずアリスとの会話に夢中だった。


 翔は、メロが小さな身体で飛びついたのを受け止めて、瞑想したまま器用に、メロの頭をなでなでした。


 翔は、少しだけ薄目を開けてメロの様子を見た後、メロの要求を理解したので直ぐにマジックバックを取り外してメロに渡してやる。


 メロは、翔から渡されたマジックバックに頭を突っ込むように食べ物を探し回した。


「有った。これ美味しそう」


 取り出したのは生ハムとパンだ。それをアメリアに二つに分けて渡した。


「はい。アメリア」


 アメリアはそれを「うむ」と頷いて受け取った。


 アメリアの態度もどうしてそんなに偉そうなのと聞きたくなる態度なのだがメロは、全く気にして無いようだ。


 ある意味二人は気が合うのだ。一人は超天然娘。もう一人は気位の高いハリネズミ娘。あまりにも異質すぎて接してもお互いを傷つけ合うことが無いのだ。


 そしてこの桁外れな女の子達をスッポリ包み込んでしまうほど大きな桁外れの器をもった男の子、それが翔なのかもしれないとアメリアは思った。


 アメリアは、メロからパンと生ハムを受け取って食べながら瞑想に入った平凡極まりない外見の翔をぼんやりと観察を続けるのだった。



☆☆☆



 翔は、その間。アリスと、今後をどうするかについて、話し合っていた。


────アリス。ゴブリン如きにこれ程手こずるのは俺達が弱すぎるからだな。


《翔様達はレベルからすると十分強いのですが、まだまだルーキーの域を出ていないのも事実です》


────あれ程手こずる最大の原因は何だと思う?


《戦力が偏っていると思われます。最大の攻撃力、防御力となるはずの翔様の精霊魔法が残念ながらMP不足のせいで使えていないのが辛いですね。翔様のはMP仕様はレリエル様の仕業で、あまりにも低すぎます。何らかの方法で上げないと今後も戦いがかなり不利になるでしょう》


────MPを上げる? しかし俺達がれる程度のザコをいくら魔核に変えても俺のMPの伸び率はたかが知れているぞ。何か起死回生きしかいせいのいい方法はないか?


 魔核の効果は微々たるもので、なかなか成果として現れてくれなかった。


《私は、転生車輪の一部です。私には転生により、能力の配分をやり直す能力があります》


────もう一度転生しろと?


《さすがに天使の力がなくてはそこまではできません。しかし、二人のステータスの値を少しトレードすることぐらいならできるでしょう》


────交換ってことか?


《メロさんには有り余るMPがありますが魔法を翔様のようにうまく使えません。一方、翔様はMPが不足しているせいで精霊魔法の高いステータスを役立てることができていません。そこで二人の役に立っていない能力をトレードするのです》


────メロは精霊魔法を使えるようになる。それは良いとして、MPを増やすだけでは俺はまともな魔術師にはなれんぞ。


《承知しています。MPが増えたものの精霊魔法の能力が無くなってしまった翔様を想定しますと、残った付与魔法師としての才能を活かすしかありません。その能力を使って、武器に魔法を付与して攻撃に活かすことが一番実行可能性の高い戦い方となります。槍なり、剣なりに魔法を付与して攻撃すればかなりの効果が期待できます》


────うーむ。剣士はアメリアがいるし槍使い(ンサー)は剣士と被るからな。何かもっと良い職業は無いか?


弓使い(アーチャー)などはいかがですか。沢山の矢に色んな攻撃魔法を付与したものを用意しておき、状況に応じて攻撃に使うのです。武具に施す付与魔法の工夫次第ではかなりの応用が効くのではないですか》


────うーむ。パッとせんな。お前がくれた付与魔法師の能力とは具体的にどんなものなのだ?


《魔法を物に付与することは普通の魔術師でも可能です。付与魔法師の特徴は物自体が永続的に同じ効果を維持する事です。必要ならその物自体が魔力を作り出すことすらします。魔術師にはそのような事はできません。マジックバックなども一度作られると永遠にその効果が使えます。付与魔法師と魔術師との最大の違いです》


────つまり、その物の物理法則を変えてしまうようなものか?


《付与魔法師の能力次第ですが、その物の性質や特性を変える事ができます。例えば、ただの鉄の棒に魔法を付与し、ある条件下でロープのようにふにゃふにゃにする。などでしょうか》


(なるほどな。使えそうじゃないか)


《翔様なら、私が考えもしない凄い付与魔法師の技を開発されると確信しています》


────確かにMPの低さはあらゆる意味で致命的だな。MPが無ければ、精霊魔法どころか武闘家の特技も大して使えんからな。


《一つだけトレードには多きなペナルティーがあります》


────何だ?


《レベルが半分になってしまう事です。ただレベル半減に伴うステータスの低下がほとんどありませんから、その後のレベルアップ効果などを考慮すると単なるペナルティと言えないかもしれません》


────レベルの低い間はレベルアップが早いからな。今のままのステータスでレベルを下げる事ができれば、レベルアップ後の能力の底上げになるな。しかし、高レベルからのレベル半減は時間がもったいないな。


《おっしゃる通りです。この方法はまだ転生されたばかりの今なら有効ですが、これきりにされることをお勧めします》


────メロは、何だか甘やかされてレベルアップしたせいかレベルの割に魔法が使えんから丁度良いような気がするな。


《さらに、もう一つ改善できる点があります。メロさんにしろ、アメリアさんにしろ能力や特性が全く活かされていないのです》


────と言うと?


《メロさん、アメリアさんはどちらも白系魔術師なんです。しかし、就いている職業が黒系なのでうまく機能しないのです。お二人とも凄い才能を持っているのにもったない事です》


────白黒?


《ユグドラシル世界では、魔力は世界樹ユグドラシルから得ています。魔力は発生する世界樹ユグドラシルの位置から性質が異なるのです。上部の葉や枝からは白系魔力、下部の根や幹からは黒系魔力が得られるのです。別の系列で言えば上部は精霊系、下部は魔物系です。メロさんもアメリアさんも上部の葉や枝から魔力を得るタイプの様です》


────俺はどうなんだ?


《翔様は、ユグドラシルそのものと相性が悪いようです。ユグドラシルのどこからも魔力を取っておらず。世界そのものから魔力を吸収するとても特異か仕様のようです》


────まぁ、異世界人だからな。それじゃあ、早い話がこいつらは白系の職業に転職した方が良いという事か?


《メロさんは、精霊系の四大精霊魔法師エレメンタリストに、アメリアさんは白系の聖騎士パラディンなどがおすすめです》


────まぁ、職業は本人の自由だからなぁ。そう勧めてみるよ。


 実際にはメロやアメリアの能力が低いと考えていたのは翔の大きな勘違いなのだ。


 実際、二人は能力も素質も一般人の中では比較にならない程高いのだ。しかし異世界人の翔にはこのユグドラシル世界の常識的な物差しが無いので判断を誤っていた。

ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

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