007 奴隷少女とナイスバデーな妖精王女
奴隷商は、道具屋と瓜二つだった。外見だけで道具屋の肉親だと誰もが気付くだろう。
「お前が奴隷商か?」
翔は、一応聞いておいた。
奴隷商は、ギロリと翔を睨みつけた。その眼光の強さが道具屋とは一味違った。
「何だ? 生意気そうな奴だな。口のきき方も知らないのか」
奴隷商は、翔の横柄な態度にムッとしたようだ。
──────これほど似ているんだから間違えるはずないな。
翔は、そう判断して、道具屋からもらった手紙を渡した。それを読んだ奴隷商は「ふん」と鼻で笑った。
「甥っ子の紹介とあっちゃあ、会わせねぇ訳にはいかないが、あまり勧めらん奴隷だぞ。見た目は可愛いんだがなぁ。勿体ないが処分するしか無いって諦めてんだ」
奴隷商は、困り果てているようだった。
☆☆☆
翔達は、奴隷商の店の奥にある豪華な小部屋に案内された。
その部屋は、とても豪華な部屋だった。広さは八畳ほどで、内壁は、チーク材のような滑らかな板で覆われいた。真ん中に大きな机が有り。黒色の革張りの巨大なソファーのような椅子が一方に設えてあり、もう一方には、質素な椅子が数人分置かれていた。
翔達は、部屋の様子を物珍しそうに見渡した。ここで奴隷を買うようなお金持ちの客と商談するのだろう。
「ここに、その奴隷を連れてくる、もし気に入って引き取ってくれんなら、金額は、十五金貨にしてやろう。これは元々の一割の値段だ。観賞用にするって手もあるしな。あるいはずっと優しくしてやれば、あの反抗的な態度も変わるかもしれん」
奴隷商は説明した。
奴隷商の話からすると、奴隷は、元々金貨百五十枚もするらしい。
────アリス。奴隷の値段ってそんなに高いのか。
《普通は、五十金貨ぐらいでしょうか。しかし、エルフの少女となると、三倍以上の値段でも不思議ではありません。一割と言うのは嘘ではないでしょう》
五十金貨と言えば日本円で五百万円。人一人の値段だが高いのか安いのか判断に苦しむ。
人身売買しているような奴が、それ程値引きしてでも売ろうとしているという事は、その奴隷は、本当に酷い欠陥を持っているって事だ。
翔が、酷い欠陥を持った奴隷が登場することを覚悟していると、奴隷商が一人の美しい少女を連れて入ってきた。
奴隷商は、美しいと言っていたので欠陥は、外見以外なのは、間違いない。さて、どんな欠陥を持っているのやら。
翔は、初めて見るエルフなので、感心して見ていた。
イメージの通りのエルフとは、大分違うようだ。
美しい代名詞のように言われるエルフだが、この娘は、驚くほどの美しさだった。
背には美しい蝶々の様な透けた二対の羽を広げていた。
まぁ、羽の有るエルフも有りだろう。
そして、細い体は、そのまま宙に浮きそうなほど細い。それもエルフの定番だ。
しかし、何よりも、それは、巨大だった。
そう。このエルフの少女は、凄い巨乳の持ち主だったのだ。細い女性が巨乳だとエロいものだ。
思わず舌舐めずりしたくなるのを堪え、翔は、別の事を言った。
────アリス。エルフは美しい生き物だな。
《これは、エルフではありません》
しかし、アリスは、そう否定した。
ちょうど同時に、横からメロが翔の耳元に口を添えて呟いて来た。
「翔。この娘には妖精みたいな羽が生えている。エルフには見えない」
メロにも、その少女がエルフには見えないようだ。
どうやら、少女は、エルフとは、別の生物らしい。
しかも、少女の雰囲気は、とても威厳があって、奴隷になど貶めては、ダメな種類の生き物って感じが半端ない。
「親父。俺には、この娘はエルフには見えんのだが?」
二人の意見を受けて、翔は、奴隷商に尋ねた。少し声が冷たくなってしまったが仕方がないだろう。
────この親父は、こんな生き物を奴隷にするのか.......
翔は、商売とはいえ、こんな後光をさすような神々しい生き物を奴隷などと言う身分に落とした、目の前の男を軽蔑した眼差しで見た。
しかし、奴隷商の親父は、怪訝な顔をして、首を捻った。
「何を言ってるんだ。確かに傷だらけで薄汚れているが、立派なエルフだぞ。エルフ独特の黄金の髪の毛が美しくキラキラしてるだろう。エロ貴族がこの娘をこんな可哀想な姿にしなければ本当に可愛らしかったんだぜ」
奴隷商は、本当に残念そうに言った。
「その娘は、どんな体罰を課してもエロ貴族に指一本触れさせなかったらしいぜ。偉いと言やぁ偉いんだが、ちょっとばかり異常だ。ご主人様の、しかも貴族様に逆らうから、こんなにボロボロにされた上に、二級奴隷なんかにされちまうのさ」
奴隷商は、大きなため息をついた。
確かに、ボロボロだが、どう見ても金髪ではない。美しく輝く薄紫だ。
────どうやら奴隷商には本当にエルフに見えているようだ。しかしなぜ、俺とメロにはそう見えない。
翔は、訝しんだ。
《精霊魔法が使えるからでしょう》
アリスが翔の疑問に答えてくれた。
《精霊魔法の能力は精霊のような形の無い物を捉える能力も含まれますから》
翔は、なるほどと納得した。
「親父。少し俺たちだけで話させてもらっても良いか?」
翔は、思い付いて、尋ねて見た。
「ああ。しかし、悪いがドアには鍵をかけさせてもらうぜ。
この部屋には何重にも脱出防止の魔法がかけられているので念のため言っておくよ。それと、この娘は触れられると恐ろしく反発するからな。まぁ、そこの娘っ子も一緒だから大丈夫だろうが。そこの紐を引っ張ると迎えに来てやるよ」
そう、奴隷商は、説明しながら出て行った。
奴隷商は、ドアを閉めると、鍵が閉まる音がした。
☆
「突っ立ってられると鬱陶しいので、お前もそこに座ってくれ」
翔は、自分達が座っている豪華なソファーの端を勧めた。
「馬鹿め。お前の命令など聞くものか」
しかし、正体不明の奴隷少女は、美しい顔にお似合いの綺麗な声に似つかわしくないきつい言葉で吐き捨てる様に反発した。
翔はここで初めて怪訝な顔をした。
「過激な発言の割に言うことが幼稚だな。
俺は命令などした覚えはない。俺の希望を言っただけだ。お前がそれこそ、馬鹿みたいに突っ立ていたいなら、面倒だがそのまま話すだけだ」
翔はそう言うと、首が疲れるので、奴隷の美しい顔から目を外して胸のあたりに移した。
奴隷は、薄い透けるような服を着せられていて体の線が見えた。商品の具合を少しだけ見えるようにしているのだろう。
細い体には似つかわしく無いたいそう豊満なバストが目に入って来た。
翔は、慌てて目を逸らした。
その様子を見て、メロはジト目で翔を睨みつけた。
「翔。ダメ」
翔は、肩をすくめて見せた。全く動じていないように見えるが、メロの目は誤魔化せない。
「翔。エッチ」
メロが決めつけた。
翔は、大きなため息をついた。
「すまん。あんまり綺麗なのでつい見てしまった」
翔は、素直に奴隷の少女に謝りながら頭を下げた。それから頭を下げたまま付け加えた。
「お願いだから座ってくれ。俺も男だから、目がお前の体に吸い寄せられてしまう」
メロは頬をプクリと膨らませて翔を睨みつけながら「エッチ」ともう一度つぶやいた。
その様子を見ていた奴隷の少女は、鋭い視線で翔を睨みつけたままだったが、黙って座った。
メロが、胸を隠せと、仕草で示すと、奴隷の少女は急に恥ずかしくなったのか慌てて胸を隠して頬を染めた。
「翔。顔を上げて良し」
ここでようやくメロの許しが出た。
翔は、いつもの様に踏ん反り返って見せたが、バツが悪そうに視線が泳いでいた。
メロは、翔から奴隷の少女に視線を移した。
「あなたは、とても大変だったね。私は、メロ・アルファード。この男の子はショウー・マンダリンという偽名の、本名は橘・翔って言うんだよ。変な名前だし、自分をいい男と、どうしてだか勘違いしているし、魔法の能力はゼロの癖に天才だと言い張ってる。酷い暴言は本当に最低な男。
そんなどうしようも無いダメな欠陥だらけの男の子だけど、私の様な美しい女の子と一緒にいても何もでき無い根性無し。だから安心」
メロは、そこでなぜかガッツポーズを取って見せた。
「おい。どうして俺が根性無しなんだ」
翔が慌ててツッコんだ。
「しっ、しっ」
メロは、そう言いながら、犬を追い払うような仕草をした。
「翔は黙ってなさい。私は、この女の子と話してるんだから。
お嬢さん。あなたは、どうしてそんなに、つっ張っているの?」
メロが上目遣いで奴隷の少女を見て尋ねた。人付き合いが苦手なメロは、初対面で恥ずかしいのだ。
「お前達は、私を買いに来た下衆だろう。人を見下し、金で買うなど許されると思っているのか」
奴隷の少女は、逆にメロを詰問した。
「私達は、さっきの奴隷商の甥があなたを助けてほしいと言うのできた。このままではあなたは処分され殺されてしまうるらしい。
可哀想だから助けてほしいと、翔にお願いした」
メロが明らかに恐る恐ると分かる言い方で話した。
メロの言葉に、少女が不思議そうな顔になった。
「お前達は、私を助けに来たと言うのか?」
奴隷の少女の口調が明らかに柔らかくなった。
「すまんが、俺達では、完全に助けてやれん」
翔は、最初に断っておいた。あまり希望を持たれて後でガッカリさせるようなことになると返って罪だからだ。
「お前は、偉い貴族に逆らったから二級奴隷とやらになった。二級奴隷は、金では、自由にしてやれんそうだ。俺が出来るのは、お前を普通の人間として扱ってやる事ぐらいだな。
ただ、一つだけ断っておくが、俺流の普通が他の者の普通と同じかは分からんぞ」
翔は、偉そうに言った。
「この子が誤解するから、翔は黙ってなさい」
メロが怒って言った。
「この男の子は、口が悪い。でも大丈夫。悪い口調で誰にでも一緒の態度。奴隷扱いなんてしない。
私もあなたを奴隷なんて思わない。安心して私達といれば良い」
「何も信じられない」
奴隷の少女はポツリと言った。
「なぁ。お前は、他の奴等にはエルフに見えるらしいが、俺達にはお前がエルフじゃないとわかる。どうしてそんな風になったんだ?」
翔が尋ねた。
「さきほど、奴隷商の男にも言っていたが、本当に、私の本性がみえるのか?」
不思議そうに、奴隷の少女は言った。
「ああ。俺達二人ともな」
事も無げに翔が答えた。
「お前の美しい顔も、綺麗な金髪でないやや紫色の髪も、それに何より美しい羽が良く見える」
「本当に私が見えるのか?」
奴隷の少女がもう一度同じように言った。
「お前は何者なんだ?」
翔が尋ねたが奴隷の少女は警戒しているのか話そうとしなかった。それならばと、翔は自分の身の上話を始めた。
「お前は、かなり変わった身の上があるのだろうが、俺も相当なもんだ。お前の話の前に俺の身の上を話してやろう」
奴隷の少女は、興味が無いのか翔の方を見ようともしなかったが、メロは珍しく興味を持ったみたいで目を輝かせた。
「俺は、このユグドラシルとは似ても似つかぬ世界で生まれた。そもそも、その世界は物質世界などと言って、お前達が見たら腰を抜かすような巨大な建物が立っていたりする風変わりな世界だ。最も大きな建物は山のように大きくて、大勢の人間が出入りしていた。
俺はその世界で、裏の世界の魔術師の古い家で生まれた。まぁ、俺の家では魔術は当たり前だったがな。
俺の世界では昔は魔術師は詐欺師と同義語だったほどで魔術など信じられないおとぎ話だったんだ。
しかし、俺の世界の魔術師は頑張ったんだな。ユグドラシルの冒険者ギルドみたいな組織を作り、魔術の技を子孫に伝えるだけでなく、研鑽し、進歩させた。
俺はその最先端の魔術を習っていた。もともと魔術師の家に生まれた俺は、他の奴らと比べて子供の時から飛び抜けて魔術が得意だった」
翔は、それから、転生の話を始めた。
奴隷の少女は、天使レリエルに、能力を取られて無理やり転生されられたと言う話になると、興味が湧いたのか翔の方を真剣に見て耳を傾けているようだった。
「こうして、俺はユグドラシルで生きている」
そう、翔が自分の話を締めくくった。
次にメロが話し始めた。
「次は私が話す。私は今は魔術師だけど本当はボリホイ火山の魔女の養女たった。ボリホイ火山の魔女の名前はカロン。カロンは優しいけどとても強い魔女。
彼女は、第九番目の蝕の時に生まれた魔族が魔王になるのを阻止し、退治した勇者のパーティーメンバーで有名なゾングアルスの大賢者と共に旅をした事も有ったと言っていた。
それほどカロンは、凄い魔女だった。私はカロンに育てられた。それからある日……」
そして、メロは目を真っ赤にして、賊がメロ達の山小屋に侵入しカロンを殺したことを話し、その侵入した賊の手に刺青がされていたなどとまとまりなく話した。
「私は、必ずカロンを殺した賊や、その全ての関係者に復讐する。以上が私の話」
メロは、自分の話を締めくくった。
「じゃ、次はあなたの番」
メロの振りがあったからか、あるいは翔の奇想天外な話とメロの可哀想な話しに、感じるところが有ったのか。奴隷の少女は、ようやく話し始めた。
「私は、アメリア・ラサーン。アールフヘルムにすむオプティマス」
────アリス。オプティマスとは?
《至高者と言う意味です。エルフ族の最高者と言う意味だと考えられています。アース神族やヴァン神族と同じぐらい古い種族だと言われています。世界樹ネットにもあまり情報がありません》
「私達、偉大なオプティマスは、古い昔、アールフヘルムの上位の世界を作ろうとしてアース神族やヴァン神族と戦ったと言う誇り高い民族だ。今は、一般的には、エルフとして知られる低級オプティマスを支配している小さな勢力に過ぎぬがな。
世界樹は上に行くほど面積が狭く、上に行くほどに得られる魔力が濃厚なのだ。世界の上位種は、全て世界樹の頂点に住みたがったのだな。多くの上位種が、世界樹の頂点を支配しようとして争ったそうだ。その戦いは、壮絶を極めたと聞いているぞ。
戦いに破れた我らの祖先は、不死性を奪われアールフヘルムに落とされた。
これは単なる伝説に過ぎんが、我々オプティマスはこの伝説を信仰している。我らの王は、今もエルフを組織して強い軍隊を作り上げ、上位種に挑戦したいと考えているのだ。
オプティマスの王オベロン様は、神々に対抗するために、ヘルヘルムの魔族やヨットゥンヘルムの巨神族と手を組もうとも考えた。
その一環としてオプティマスの王オベロン様は、ヘルヘイムの魔界貴族の一人ウコバクと盟約を結んだのだ。
しかしウコバクは、我らの同胞を拉致し魔神復活の儀式のための生贄とする事を画策していたようだ。
ウコバクは、魔界に於いて大戦争が勃発したと嘘の報告を行い、オプティマスの王に魔界への出兵を要請した。最後には盟約を逆手に取ってエルフの部隊を半ば強制的に送るように脅してきた。
幸いにして王は、大軍は送らず、私を隊長とする二十名の使節団を送るに止めた。
しかしウコバクの悪巧みを利用しようとする輩がいたのだ。
そいつは、ウコバクよりもさらに厄介な奴だ。力天使として強大な力を持つ堕天使にして魔界の高級貴族公爵であるバルバルスだ。
バルバルスの目的は、より世俗的なものだった。我らを拉致し、お金に換えるために人族の奴隷商人に売ったのだ。
私は、バルバルスから直接、ウコバクの悪巧みについて聞かされた。バルバルスは、魔界に出兵したのは野心からかとオプティマスの王を脅したら、オプティマスの王オベロンは、簡単に私達を見捨てたと言っていた。
私の部下の一人、エルフの隊長は、強力な呪術を用いる優秀なシャーマンエルフだった。
こいつは、頼みもせぬのに、命を賭してまで、私達全員に、恐ろしい呪戒を施してしまったのだ。死んだそいつを今更呪っても仕方ないが、その呪戒は、私達に触れるもの全てに呪を課すとともに、私達の容姿を貶めると言う呪術だったのだ。
今では、私と同行した者は全て処分され、残ったのは私だけだ」
そこで、奴隷少女、アメリア・ラサーンは薄っすらと笑った。翔もメロもアメリアの悲惨な話を驚愕しながら聞いた。
アメリアの悲惨な話を聞き終わってしばらく黙っていた翔は、意を決して尋ねた。
「お前もこのまま、処分されたいのか?」
「馬鹿を言うな。私達をこんなにしたのは、その馬鹿なシャーマンだが、そもそもの原因を作ったのはオプティマスの王だ。
私は、オプティマスの王と大悪魔ウコバク、堕天使バルバルスも含めて相応の報いを受けさせねば死んでも死にきれん」
アメリアが訥々(とつとつ)と反論した。
☆☆☆
翔は、アメリアの決意を聞いて、やはり面倒な奴だと判断した。メロに目配せして、首を横に振って見せた。買取を否定しようとの意識表示だ。
メロは、頬を膨らませて、翔を睨みつけた。
「翔。助けてあげて」
翔は、なぜかこの言葉に弱い。そう言われると助けない訳にいかない気分になるのだ。他人から見たら美徳なのだが、翔にしてみると重大な欠点だ。
「しかし、メロ。オプティマスの王がどれほどの強者かは知らんが、ウコバクにしろバルバルスにしろ俺の世界ですら、どんな魔術師でも知っているような有名な大悪魔じゃないか。
俺は、今よりもずっと能力の高かった時ですら、第七位の権天使レリエルですらかなわなかった。ましてやバルバルスは、それよりも上位の力天使第五位天使なんだぞ。そんな奴に勝てるとは思えんぞ」
さすがの翔も否定するしかなかった。
「当然の主張だ。私に関わると、ろくな事はないぞ。私も偉そうな事を言っても、まだ生まれたてのオプティマスでしかない。能力もほとんど無く、王族の末席に連なっていたから、お飾りとして使節団の長をしていただけの無能者だ」
アメリアもあっさりと認めた。
「私の本性を見ることができ、全く足りないが、少しはましな尊重を示してくれた。人間族達よ。お前達の身の上話は作り話としても面白かったぞ」
「ダメ。翔。この娘を助けてあげて」
翔は、その言葉に弱かった。しかも二度も言われてしまった。
翔は、大きなため息をついた。
「メロ。お前は、この娘を助けるために、自分の復讐に支障をきたしてもいいのか?」
「復讐はしたい。でも、それよりも大切な事がたくさんある。この娘を助けるのもそう。助けられるならどうにかして助けてあげて」
メロは、珍しく真剣な目をしながら強く言った。
翔は、大きくため息をついた。
「俺もこのメロもまだまだ駆け出しの初心者冒険者に過ぎん。お前は俺たちのパーティーに入って一緒にレベルをあげることになる。
俺はレリエルを排除できる力を得て楽々お気楽に暮らせるようになりたい。そして、お前達は、復讐を達成したい。
それぞれの希望は大きく違うが、俺達は、限りなく強くなりたいと言う目的だけは一緒だ。
それを目指して協力し合うと言うことだがアメリア。仲間に入るか?」
アメリアが翔の言葉に薄く笑った。
「お前達は不思議な奴等だな。暗い未来が、お前達といるだけで何だか明るく楽しげな物に感じる。私は、オプティマスが一番偉い種族だと思っている。お前達を対等だなどと絶対に思わない。
そんな私の言動を許すというならパーティーに入ってやってもよいぞ」
「わーい!」メロがアメリアの両手を取ってはしゃぎだした。「仲間! 仲間! アメリアは仲間」
この時、アメリアは、美しい顔に初めて楽しげな笑みを漏らしたのだった。