#53 強制っすか
決闘その後です。
「それでは、こちらがうちの受付が勝手に決めた報酬の30000モルに、トール様が昨日精算出来なかったフツキ草の1950モルと、ジョウマ草の2535モルの合計4485モルとなります。お確かめ下さい」
決闘のあと、俺はギルドマスターの執務室に呼ばれ、決闘の報酬と昨日受けた依頼の達成料金を受け取っている。
にしても、副ギルドマスター…「勝手」って強調するくらいだから、怒ってんだろうな~
受付さん・・・南無三!!
「さて、トール君。今回の決闘であなたを遊ばせておくことが出来なくなりました」
と、ギルドマスター。
「遊ばせる?どういうことですか?」
「遊ばせるというのは、実力とギルドランクの差のことを言うの…余裕代と言えばいいかしら。
つまり、ギルドランクが強制的に上がりますよってこと」
「え!!なんでそうなるんですか!?」
「魔の森の間引き」
なんか知らん単語を副ギルドマスターが言っておる。
「へ?」
「魔の森には、基本ランクCからしか入れないように規制されてるの。あの森、魔力溜まりが出来やすいから危険なのよ。で、実力がある人は魔の森で活動して、魔物の氾濫を防いでほしいのよ」
そこまで言ったなら全部説明しなさいよ…という感じのうらめしい視線で、副ギルドマスターを見つつ、ギルドマスターが説明を繋いだ。
「え?じゃあ、強制的にランクCになるんですか?」
「いいえ。ギルドもそこまで甘くはないわよ。ランクCに成るには、必ず試験を通さないとダメだもの」
「では、ランクDですか?」
あいつら--「草原の狼」--と一緒か?
「ほぼ、そうなるわね」
「なんですか、その「ほぼ」って…」
「1度だけ、ランクEの討伐依頼を成功させれば、ランクDになるわ。これは、所謂見極めよ。これを達成出来なければ、実力が到ってないと判断し、ランクはEの成り立てに落とすわ」
案外、考えられてるな…
「わかりました。では、しっかりと準備をして依頼に挑みたいと思います」
「そうしてちょうだい。くれぐれも、先日みたいにハーゼ50匹連続討伐なんて無茶は止めてちょうだい」
「ハハハ…肝に命じます。ところで、ランクDの「草原の狼」はなぜ魔の森の近くの街に行ってないんですか?」
「君が倒した男…ゲルトって言うんだけど、そいつがこの街で結婚して落ち着こうとしてたみたい。そういう奴は結構いるのよ」
「へー、そうなんですね」
「ゲルトっていえば、さっきの決闘の最後!!あれなに!?初めて聞く魔法だったけど…バク、エン、ケンだったかしら?」
「『爆炎拳』ですね。一応、『火魔法』ですが、それ以上は秘密です」
「初めて聞くキーワードだし、言語も違うみたいだから気になるんだけど…仕方ないわね「情報は武器」ですものね」
早速、使いますか…
「ハッハッハ!そうですね」
「フフフ、話は以上になります。受付に話は通しているので、ギルドカードの更新を忘れずに行って下さいね」
「わかりました。では、失礼します」
バタン
「では、ギルドマスター。私も職務に戻ります」
「ええ、ご苦労様」
「失礼します」
バタン
「独特な魔法か・・・それに無詠唱…
彼は渡界者なのかしら…もしくは子孫。
どっちにしても、先が楽しみではあるわね」
トールの所持金:77005モル
(金貨7枚、銀貨6枚、銅貨9枚、鉄貨10枚、石貨5枚)
※報酬:34485モル
次回、ランクEの依頼




