#36 理不尽な“殺し”
う~ん…上手く表現できないよ~
「“死”は誰にでも訪れるわ。それが、寿命や病死ならば、自分の心を納得させることは可能よ。貴方もそうだったでしょう?親しい人を亡くしたとき…」
「確かに、病死や寿命で親しい人と別れた時は、悲しかったですが、心が沈んでた時間は短く感じました。」
「でしょうね。寿命や病死は、憎む相手が居ないもの。
でも、それが“殺し”だと…親しい人を“殺し”た人が生きていると…憎しみはその相手に向かうわ。
そして、憎しみの“復讐”は色んな人を巻き込む。探索者への盗賊退治依頼しかり、暗殺依頼しかり、最悪で戦争になるわ。」
それは…何となく分かる・・・
日本でも、怨恨による殺人や、過去の戦争でも似たようなことはあった。
「そして、複雑なのはここから…
“死”の原因を根本まで持っていき、理不尽な“殺し”を企むヤツがいるのよ。
例を挙げると、
ある人が喧嘩をして怪我をしたとするわね。その人が、狩猟の為に魔物や獣と戦い、“死”んでしまった。
その人が、“死”んだのは何故か…その人が弱かった、いいや違う…怪我をしていたからだ・・・
と、原因は無謀にも狩猟に行ったバカ、もしくは狩猟相手の獣にもかかわらず、怪我をさせた喧嘩相手に全て擦り付ける。
そうすると、“死”んだ人と親しくしていた人が、突然“殺し”に来るという現象が発生してしまう。
知らない人が“殺し”に来ると、“殺意”が見えにくく、対応が遅れて“殺される”。
例として挙げたけど、こんな理不尽な“殺し”と“死”があるの。
一種の見えない“殺意”よ。
このようなパターンは多すぎて、気を付けてとしか言えないわ。
心の中に留めておいて。
でも、考え過ぎはダメよ、疲れちゃうからね。
以上で話は終わり。どうだった?」
うーん…
「・・・最後の話は対応が難しいですね。しかし、大まかな対応策を考えた方がいいと感じました。そして、ギルドマスターが言っていた“人としての覚悟”ですが、正直判らなかったです。」
「じゃあ、宿に帰ってからでもいいから、出来れば今日考えておいて…お願いよ。」
「…はい。分かりました。」
そんなに真剣な目をした人のお願いなんて…断れるわけないじゃんか・・・
断る気持ちなんて、そもそもないんだけどね…
俺達は席を立ち、資料を片付け、出口に向かう。
「じゃあ、私は部屋に戻るわね。」
「俺も、やど…じゃなくて飯食って宿に帰ります。」
いい加減腹減ったわ・・・
「ふふ、食べ過ぎないようにね。」
ハーイ!!
「ローマンさん、お騒がせして、すみませんでした。」
「ゴメンね。ローマン。」
出る前に2人して、ローマンさんに謝ったが・・・
「・・・」
睨まれました…
俺達は急いで資料室から出ましたよ…怖かったです。
「そういえばトール君…」
「何ですか?」
別れる直前にアイリーンさんから呼び止められた。
「何であの時、私の意図が解ったの?」
「あ~それはですね…」
…お前は何の為に武術をやる?
~
…馬鹿者!!武術はそんなことの為にあるのではない!!
~
…やっと間違っていると気付いたか、馬鹿者が。その覚悟忘れるな!
「武術の師匠に、似たような雰囲気で、覚悟を問われたことがあるからですよ。」
「・・・素晴らしい師匠ね…」
「…はい。」
「じゃあ、またお話しましょうね。」
「はい。その時は是非…ありがとうございました。」
そうして、俺はギルドをあとにした。
とりあえず、長かった資料室編終わりました。
次は、一先ずの結論です。




