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そこは白い空間だった。

だからといって眩しいわけじゃなくて不思議と落ち着くような感覚がするのはどうしてだろう。

私はそこにいることも不自然に思わずにそこにいた。


「あ・・・れ」


そしてその空間に誰かがいた。

私と背は同じくらいだろうか、パールがかった水色の髪に青い瞳、明らかにこの世界の人間の配色だ。

10代後半の女の子、顔立ちはうん、すっごく綺麗とかじゃなくてかわいらしい感じ、目が大きくて幼げだけれど不思議と大人びた雰囲気を持ち合わせている。

格好はなんというか旅人のようで、短いショートパンツにニーハイブーツ、とても動きやすそうだ。

彼女は薄い笑みを浮かべながらこっちを見てる。


「ど、どちらさまで」

「ん?あー、うん。私の名前はシンフォニア。よろしく」

「あ、どうも」


シンフォニア、名前としてはえらく名詞な感じだ。確か合奏するとか奏でるとかそういう意味合いだった気がする。


「シンフォニアさんは何でここに?」

「そうだな、閉じ込められてる・・・うーん、閉じこもってる?」

「引きこもり!?」

「あははは、そう、引きこもり。ところで貴方、自分の状況わかってる?」


自分の・・・状況?

あれ、そういえば何で私ここにいるんだっけ?確か、おっさんに頼まれたお使いに出て、ラスティアさんのところに行く前に街の人たちと世間話をして、その後子供に絡まれて遊んで、路地で鬼ごっこして後・・・ん?あれ、そっから何だっけ・・・。

確か路地の暗がりに人を見つけたんだ。

小さな子供で、ボロボロのローブを着てた。暗くて色は判別できなかったけれど、どこか痩せこけて見えたその子は、じっとこちらを見て、そして指さしてた。

ただ、こちらを指差して見ていた。

その目はまっすぐに貫いて、そしてその瞬間息苦しくなって、目が耳が締め付けられるような感覚に陥って・・・。


「気絶した?」

「そう、君は気絶した。あの子が酸素濃度を一気に下げたせいで呼吸困難になったんだね。そんで酸欠になって倒れた」

「あの子が、やったんですか」

「そうだろうね。彼は風の精霊との愛の子だろうから」


風の精霊との愛の子が何で私に危害を与えたんだろう。っていうか私あの子に何かした覚え何もないんだけど・・・。


「何で・・・」

「そうだねぇ。愛の子達はいい意味でも悪い意味でも純粋で、情が深い。情が深いのは精霊の特性なんだけど、一度情を抱くとそうそう裏切れないんだ。だから利用されやすいの」

「もしかして、ロギサス・・・?」

「そうだろうね。目を覚ましてもあの子たちを叱らないであげて、あの子達も私の大切な」


そこまできてシンフォニアの声が途切れだした。

風で耳が叩きつけられるような音でかき消されていく。


「待って!シンフォニアッ!貴方もしかして」


もしかして、私をこの世界に呼んだのは貴方?そう聞こうとしたのに声は続かなくて、白い空間は一瞬で閉ざされ真っ黒に染め上げられた。

一瞬の浮遊感、そして落ちた。




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