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次の日、夜中ずっと警備してくれてた団員さんには悪いんだけど、全然眠れなかった。
あんなことがあって興奮していたのか、怖かっただけなのかはわからないけど、移動されて何がどこにあるかわかなくなった木箱の備品とかを片付けるのにずっとかかりきりになってしまった。
おっさんが来たのは朝方になってからで、被害はなかったことに安堵する一方今後の警備体制をどうするか、警報装置みたいなのをどうするかを考えた。
「で、お前は何作ったんだよこれ」
「え、見てわかりません?」
「うん、全然わからんな」
おっさんが後ろで呆れた目を向けてくる。
一方の私は扉上部に取り付けたフックにかけた縄をえっこらおっこら引き上げ、それが入ったバケツを上へと持ち上げる。
「これはですねぇ、何か期限切れになった薬品をそのままブッ込んで煮詰めた物です。ちなみに豚の角煮状の物体ができました。色は緑ですよすごいですよね」
「んで?それどうするんだ?」
「もちろん侵入者対策に、こう、糸を切ったらぶっかかるようにするんですよ!」
「ただの手の込んだ嫌がらせだろうがそれ」
「えー、でも手持ちのものでできそうなことってこれぐらいじゃないですか」
「いやいや、古典的でも鳴子とか取り付けるとか」
「なるこって何ですか?よさこいのあれですか?」
「よさこいってなんだ」
それはあれですよ、じじいもばばあもよく踊る土佐へ来てみんやー的なあれ。鳴る子ってそれに使う楽器じゃなかったっけ?
とりあえずそれはやめとけと言われたので渋々下ろす、バケツの中身がちょっと臭った。
激励なのか、おっさんは朝パン屋で買ったパンと奥さんが持たせてくれたというハーブティーをくれた。こういうところだけ上司らしい。
「お前を襲ったあいつらな、おそらくロギサスだ」
「ああ、そういえば昨日街で見かけましたよ」
「だろうな、あいつらこの近くの屋敷を巣穴にして何かやってるらしい。騎士団が近々一斉検挙するんだがな、そこへきてこの大胆な行動か・・・」
「何かって」
「まあ、実験だろうな。精霊を使っての」
あれ、ロギサスって精霊一番な組織じゃなかったの?それが精霊で実験するの?おかしくない?
「ロギサスって、精霊王を頂点とする世界を作ろうって集団ですよね?」
「おう、ついでに愛の子とっ捕まえて操って自分たちが王様気取りしようって集団だな」
「ゆ、歪んでる」
「長く存在してる組織ってのは最初の理念が段々人の意思の介入でいくらでも歪むもんだ。ちなみにもっと言うとやつらが狙ってるのはもっと大物だ」
「え。精霊、とか?」
「それはもうある程度手に入れてる。違う、あいつらが手にしたいのは精霊王自身だ」
「・・・王様?」
精霊は精霊王を頂点としている。
精霊王は誰も見たことがなく司精教会にある石像とかは想像で作られているほどに謎な存在、それを捕まえる、とか・・・本当に阿呆の集団としか言い様がないじゃないか!!
「ま、馬鹿げた思想だがな。できない話じゃない、とは思うぜ、俺はな」
「な、何で?だって精霊だって普通この世界にいないんでしょう?」
「確かに精霊はこの世界にいない、精霊師が呼び出さない限り、だが精霊王が介入したとされる歴史的事件は各国にいくつか例があるんだよ、しかもこの数百年結構頻繁に。だからやつらももしかしたら、とか考えるようになったんじゃないか?」
「無茶がすぎる・・・」
「まあな、でもそうやって求心していくのが宗教ってもんさ。自分たちがトクベツになれるんだってさ」
「・・・」
ロギサスって、私が思う以上にブッ飛んだ奴らかも・・・。
そう思った瞬間昨日の奴の目を思い出して底冷えしたようにぶるっと震えると、おっさんに「なんだ小便か」とか言われたのでとりあえず顎の髭三本くらい一気に引き抜いてやった。
ドアの修理を業者に頼むことになって連絡をつけに行こうということになって場所を聞いてお使いに行く前、練習場に行くと休憩中の先輩と遭遇した。
先輩は肩をグルグル回したり、首をひねってみたりなんだかあまり調子が良さそうにない。
「先輩、何か体の調子悪いんですか?」
後ろから話しかけると金色の瞳がこちらを見た。
赤い眉はひそめられて三割増で機嫌が悪そうに見える。これは私が昨日ずっと泣きはらして傍についててくれて寝不足だからとかそういうことじゃないと思う!!多分!
「ああ、今日はサクの日だから気分悪いんだよ」
「さくのひ?」
「精霊の力が一番衰える日のこと、日が沈んでからが一番辛いんだけどな・・・。さすがに覚醒したてじゃ今でもしんどいか」
「そんな日があるのか・・・大変ですね」
「ま、覚醒しちまったからには精霊に近い要素はらんでもしゃあねえだろう」
よくわからないがそういう事らしい。
すると練習場の宿舎方面からざわついた声が聞こえた。
奥の門から誰かが入ってくるのが見える。
一人は身長が高く筋骨隆々、大体40代くらいかな右頬に大きな傷であって口元から目の下まできている。明るい茶色の髪をオールバックにしていて、アルベイン様みたいにちょっと無理してる感がないのがすごい。遠目からは目の色まではわからないけれど、着ている鎧は白いけれど傷もあって歴戦の戦士です!っていう雰囲気がばしばし伝わってくる。
連れ立っているお供の二人のうち一人には見覚えがあった。
それはこの前街であった黒髪の騎士。
「おお、リバレード騎士団長だ・・・久しぶりに見たな」
ぼそっと呟く先輩にそそそ、と寄って行って「騎士団長って騎士団の?」と聞いた。
「当たり前だろうが、王都に行ってたみたいだが帰ってきたんだな」
「でも何で騎士団の団長さんが竜騎士団の支部に?」
「さあな、あんまいいことじゃないっぽいな」
「ももしかして昨日のことかな!?簡単に泥棒にはいられすぎてたから怒りにきたとか!!」
「いや、騎士団そんな暇じゃねえから」
「でもあながち関係ないってことでもないだろうなぁ」
ふらふらっと近づいてきたデュオさんが言うのを聞いてザッと血の気が背中を引いていくのがわかった。
しかし、デュオさんの言葉の意味は私が思っていたものと違っていたらしい。
「陛下がロギサス殲滅に腰をあげたって話、聞いたか」
「あ?そうなのか」
「ああ、最近のやつらの動きは目に余るもんあるしな」
「そういうのって、殲滅・・・とかできるもんなんですか・・・?戦争になるんじゃ」
「わからん」
ちょっとちょっと、戦争は嫌ですよ!!
こちとら100年近く戦争から無縁の生活を送っていたお国の人間なんですから、いきなりそんな物騒なこと言われたら逃げ腰になりますって!!
でも現代でもこういう問題ってなかなか解決しないのに、軍とか動かして大丈夫なんだろうか。
まがりなりにもロギサスって世界最大の宗教の一部なんでしょう・・・?
「あ、おっさんにおつかい頼まれてるんだった」
私は、おつかいを思い出して竜騎士団から出て行った。
その数分後、慌てて私を呼び出した人がいるのも知らずに。




