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平穏な高校生活を送っていたらなぜか銀髪碧眼転校生(幼馴染)に全力で言い寄られるようになってしまった件  作者: 夜空 叶ト


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第13話 可愛い後輩とドス黒い独占欲

「はぁ。昨日は酷い目に遭ったよ」


「お疲れ様です。詩織先輩」


「本当にね。アレ? 今日、幼馴染君はどしたの?」


「呼び出されたらしいです」


「誰に?」


「男子生徒に」


「なるほど」


 これだけの会話で詩織先輩は天雲さんがどのような状況に置かれているのかを察してくれたらしい。

 察しの良い人は嫌いじゃない。


「詩織先輩は告白とかされないんですか?」


「う~ん、昔はよくされてたけど。最近では全くないね」


「それはどうして?」


「僕はつまらない人間が好きじゃないんだ。だから、僕は告白してきた男子生徒たちを容赦なく振ってきたんだけど。そうしているうちに気が付けば……」


「絶対に普通の振り方をしてないですよね」


 詩織先輩が可愛らしく人を振る姿を想像できない。

 完膚なきまでに酷い振られ方をしたに違いない。

 そして、その噂を聞きつけた他の男子生徒たちは告白をしなくなったと。

 なるほど。


「君……今、非常に失礼な想像をしたんじゃないか?」


「いえ、そんなことは特に」


「絶対に嘘だろう。次僕を不快な気分にさせたら、全校集会で割り込みをして僕と君が付き合っていると公言してやるからな?」


「ガチでやりそうなのが怖すぎる」


 詩織先輩ならマジでやりかねない。

 この人には羞恥心と言うものが欠片も存在しないし、行動力の塊みたいな人だ。

 俺に嫌がらせをすることが生きがいと、前に言っていたほどだ。


「もちろん、やると言ったらやるとも」


「やめてください。というか、自分を不快な気持ちにさせたら何ですか。マジの暴君じゃないですか」


「そりゃあ、文芸部では僕が王様だからね。ちゃんと圧政をしいてやるさ」


「なんて人だ」


 この人は絶対に人の上に立たせちゃいけない。

 俺はそう思いながら、詩織先輩を見つめていると部室の扉が開かれる。


「疲れたぁ~さっくん、癒してぇ~」


「さっくん呼ぶな。で、何があったんだ?」


「普通に屋上に呼び出されて告白された。熱量が凄かったけど、話したこともないし。ちょっと怖かった」


「そかそか。お疲れだね幼馴染君」


 詩織先輩が天雲さんをよしよしと頭を撫でている。

 美少女が仲良くしている光景は見ていて飽きないけど、俺がこんな状況下に置かれていると学校の人間にバレたら……

 考えるのはやめておこう。


「俺は少し用事があるんで先に失礼しますね」


「おや珍しい。部活が始まってすぐだというのに。一体何の用時だい?」


「それを言う必要は無いでしょう。俺にもプライベートはあるので」


「ふむ、一理あるね。あまり圧政をし過ぎて君に嫌われるのは僕としても望ましくない。いいだろう。今日は帰りたまえ」


「ありがとうございます。それじゃ、失礼します」


 詩織先輩と天雲さんに挨拶をして部室を後にする。

 そして、そのまま目的地に向かう。


「ごめん、待ったか?」


「いえ、全然待ってないですよ。むしろ、こうやって足を運んでもらって申し訳ないです」


「それは良いんだけどさ。今日はどこか行きたい場所があるか?」


「これと言ってないんですけど。強いて言うなら、いつものカフェが良いです」


 俺が向かった場所は一年生の教室。

 放課後になってからそれなりに時間が経っているという事もあって、俺と彼女以外に人の姿は見えない。

 鮮やかな金色の髪を肩付近まで伸ばしていて、顔は前髪で隠れている。

 長い前髪から少しだけ見える瞳の色は紅色。

 天雲さんとは違い、可愛いという表現が良く似合う一つ下の後輩だ。


「ユアは本当にあのカフェが好きだよな」


「まあ、先輩と会ったカフェですし」


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど。たまには別の場所でもいいんだぞ?」


「いえ、私はあそこが良いんです。ダメ……ですか?」


 上目づかいで見つめられては、断ることなんて出来ない。

 この後輩は本当に天然でこのような仕草をしてくるから困る。

 百瀬ももせ ユアはクラスで一番の人気者になれる容姿を持っていると思うが、彼女の性格的にそれができない。

 どころか、避けられてしまっているらしい。


「ダメなわけないだろ。じゃ、いくか」


「はい! 朔夜先輩!」


 彼女のカバンを肩にかけて、俺たちはいつも行っているカフェに向かう。

 こんな風にユアとは一ヶ月に数回カフェに行くことがあるのだ。


「カバン、持ってくれてありがとうございます」


「別にいいよ。それよりも、最近の学校はどうだ? 変な事されてないか?」


「はい。朔夜先輩がたまに来てくれるようになってから、なくなりました。本当にありがとうございます」


 知り合ったのは本当につい最近。

 だけど、ずっと昔から一緒にいるかのような安心感が彼女といる時には得られるのだ。

 なんでなのかはわからない。

 単純に波長が合うだけって可能性もある。


「よかったよ。また、虐められるようなことがあったら遠慮なく言ってくれていいからな」


「ありがとうございます。朔夜先輩」


「……もう少しでゴールデンウィークか」


「そうですね。朔夜先輩はなにか予定があったりするんですか?」


「特にないな。家でゆっくりしたり中間考査の勉強をしたりとかかな」


 五月に入ってすぐの大型連休、それが終わって五月の中旬くらいから中間考査が始まる。学生にとっては、酷く嫌なイベントだ。


「ちゅ、中間考査ですか」


「ああ。そう言えばユアは次の中間考査が高校に入って初めてだったよな」


「そうなんです。だから、結構不安で」


「ユアなら赤点を取るようなことは無いと思うけど」


 ユアはかなり真面目な性格で、普段の授業もちゃんと受けてるだろうから酷い点を取っている姿が想像できない。

 だから、そこまで心配しなくても良いと思うんだけど。


「でも、不安なんですよ。やっぱり」


「そういうもんか」


 言われてみれば、俺も初めての中間考査は緊張した覚えがある。

 あの時は点数がそこまで取れなかったんだよな。


「どういうもんです。朔夜先輩は最初の中間考査何点くらいだったんですか?」


「平均八十点だったな」


「めちゃくちゃ高いじゃないですか」


「最近は平均九十点取ってるから、最初の中間が一番低かったな」


「やっぱり朔夜先輩は頭いいんですね」


 ユアは感心したようにそう言ってくるけど、別にそんなことは無い。

 人と遊んだりすることが無いから、空いた時間で適当に勉強してたらこうなっただけ。特段俺の頭が良いとかそう言うのはないと思う。


「そんなことないさ。ユアも多分これくらいとれるぞ?」


「買い被りすぎですよ。やっぱり朔夜先輩は凄いです」


「そこまで褒められると流石に照れるな」


 そんな話をしていると、目的のカフェに着いた。

 俺たちはいつもみたいに注文を済ませてから、また雑談を始める。

 話す内容はたくさんあって、今の学校生活とか、最近会った楽しい事。

 中学時代のことなどだ。


「朔夜先輩って彼女さんとかはいないんですか?」


「いないな。前も話したけど、中学の頃の女性トラブルで色々あってね」


「ああ~言ってましたね。朔夜先輩も大変なんですね」


「ユアも大変そうじゃないか。まだ、クラスで話せないんだろ?」


「そうなんです。朔夜先輩とはこうやって話せるのに」


 ユアはコミュニケーションが苦手で、教室では全く話せないらしい。

 そのせいでクラスでは浮いてしまったらしいし、容姿が良い彼女の攻撃材料になってしまっていた。

 顔は良いけど、全く話さなくて不気味とか。

 散々な言われようだった。


「焦らずに自分のペースでやって行けばいいさ。俺は応援してるからさ」


「はい。ありがとうございます」


 こんな風にいつもの穏やかな時間を過ごして解散になった。

 送って行こうかと言ったのだが、断られてしまったのでそのまま帰ることに。

 やっぱりユアとの時間は落ち着くなと改めてそう思った。


【理奈視点】


「なんか怪しくないですか」


「幼馴染君もそう思うかい?」


「はい。なので尾行してみませんか?」


「面白そうだね。じゃあ、行くとしようか」


 用事って言ってたけど、さっくんの用事がどんなものなのか。

 私達はそれが気になってさっくんの後をつけてみることに。

 そして、さっくんが向かったのは一年生の教室。


「あれって……」


「女子生徒だね。まさか、彼女かな?」


「そんなわけないじゃないですか。さっくん彼女いないって言ってたし」


「わからないじゃないか。僕たちに嘘をついていた可能性だってある」


「ぐぬぬ」


 さっくんが親しそうに話しているのは一年生の女の子。

 綺麗な金髪、長い前髪から覗く紅色の瞳。

 さっくんってああいう子が好きなの!?

 いやでも、私の方が胸大きいし? スタイルだっていいから!

 待って、もしさっくんが大きな胸よりも小さい胸の方が好きだったら……

 私の負け!?


「幼馴染君? 凄い顔をしているところ申し訳ないが、二人が移動したよ。僕たちも行こう」


「は、はい」


 いけない。決めつけは良くないよね!

 まだ、そうと決まったわけじゃないし。

 私が気を取り直して二人の尾行をしていると、二人が入って行ったのは雰囲気のよさそうな喫茶店。

 完全に放課後デートじゃん!?


「幼馴染君? なんかドス黒いオーラが出ているよ」


「気のせいじゃないですか」


「それは無理がある」


 水城先輩にツッコまれたけどそんなことはどうだっていい。

 さっくんがあんなに楽しそうに話してる。

 あの子との関係を問い詰めたい。


「水城先輩、あの子文芸部に入れませんか?」


「ほう。それは面白いかもしれない」


「ですよね。じゃあ、さっくんと別れたところを捕まえて入部させましょう」


「いいだろう。僕は面白いことが大好きだからね」


 満面の笑みを浮かべてサムズアップしている水城先輩を無視して、私は食い入るように二人を見つめていた。

 私が知らないさっくんの顔。

 ズルい。

 私も、あんな風に自然な笑みを向けて欲しいのに。

 胸の中から湧き上がるドス黒い何かを感じながら、私は喫茶店のガラス越しに二人を見つめ続けるのだった。


【理奈視点終了】



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