第11話 理奈が朔夜を好きな理由
「そこの綺麗な彼女〜俺らと一緒に回らない?」
「絶対に楽しませるからさぁ〜」
なんて、古典的なナンパ男たちなんだ……
あそこまで古典的なのは初めて見た。
しかも、金髪に染めてるし。
なんと言うか、チャラそうに見えるし水族館と言う空間内において浮いてるな。
「いえ、今日は一緒に来ている人がいるので結構です」
「そう言わずにさぁ。そいつといるよりも絶対に楽しいから」
男たちはめげずに天雲さんに絡み続ける。
そんな彼らを天雲さんは酷く不快そうに睨みつけながら、見つめていた。
「あんな顔も出来たんだな」
って、こんな感想を抱いてる場合じゃないよな。
早く助けに行かないと。
「すみません。その子の連れなんですけど。彼女に何か用ですか?」
「……チッ彼氏連れかよ」
「つまんねぇ」
ナンパ男たちは俺を見るなり悪態をついて何処かに行ってしまった。
去り際まで古典的だなおい。
「大丈夫? 天雲さん」
「うん! さっくんが助けてくれたからね!」
「俺の助けが無くてもなんとかなりそうだったけどね」
実際、俺が割って入らなくても天雲さんは自分でなんとかしていたと思う。
そんな気迫をさっきの彼女からは感じた。
「そんな事ないよ! それよりも気を取り直して水族館デートの続きをしよ!」
「わかった。ほら」
「へ? 手繋いでいいの?」
「怪我人だからな。嫌なら別に良いけど」
「嫌なわけない! ありがと! えへへ」
差し出した手を天雲さんはぎゅっと握る。
自分の手よりも一回り小さくて、なんだか柔らかい。
いや、なんで繋いだ手の感想なんか考えてるだ俺は……
「さっくん手が大きくなったね」
「そりゃな。結構時間が経ってるし、俺だって成長するんだよ」
天雲さんが転校してから約四年が経っている。
成長期の男子なのだから、成長して当たり前だ。
「そっか〜だよね。そんなに時間が経つんだよね」
「一つ、聞いても良いか?」
「何でもいいよ! 答えられることなら答える!」
「なんで天雲さんは俺のことを好きなんだ?」
ずっと気になっていた。
俺は天雲さんに好かれるようなことをした覚えはないし。
「ああ~そういう事ね。そりゃあ、気になるよね」
「答えたくなかったら別にいいんだけどさ」
「いや、答えられることは答えるって言ったし。隠すような事でもないからね」
天雲さんは歩く速度を少しだけ落として、俺の目を見つめてくる。
綺麗な青色の瞳はどこまでも澄んでいて、見ているこっちの心が洗われているような気分になる。
「私はさっきも言ったけど、さっくんに救われたの。いつも一人だった私に手を差し伸べてくれて、一緒に遊んでくれたから」
「……それだけか?」
「さっくんにとってはそれだけでも、私にとってはそれだけじゃないってことだよ。さっくんは私の憧れで一番好きな人だよ!」
「そ、そうか」
あまりにも真っすぐな物言いに流石にドキリとする。
こんなにも可愛い子から真正面に好意をぶつけられると照れる。
でも、どうしてもわからない。
確かに、彼女の言う昔の俺は憧れるに足る人間かもしれない。
だけど、今の俺は誰かに憧れられたり好意を向けられうようなできた人間じゃない。
「だから、私はさっくんが振り向いてくれるまで絶対にあきらめないからね!」
「頑張ってくれ」
もし、彼女に俺が本気で惚れたなら。
その時は俺のトラウマも払拭されているのかもしれない。
そうなってくれると俺としてもありがたいな。
「なんで他人事!?」
「だって、俺が何かするわけじゃないからな」
「だとしても、もう少しなんかあるんじゃないの!?」
「悪い。何か言った方が良かったか?」
だって、これ以上いう事もないしな。
にしても、やっぱり天雲さんは目立つな。
「いや、う~ん。なんでもない!」
彼女は笑顔を向けているが、その様子が更に水族館内の男性たちの視線を釘付けにしていた。
やはり、この銀髪に青い瞳。
高い身長にスラっとした体。
この見た目はかなり人目を引くな。
「どこか行きたいところはあるか?」
「じゃあ、イルカショー見に行きたい!」
「わかった。この時間ならちょうど次のイルカショーに間に合うな。行こうか」
「うん!」
こうして俺たちはイルカショーを見に行くことになったのだが、移動中も水族館内の男性の視線を集めすぎていて怖かった。
中学の頃は女子に背中を刺されて、高校生は男に刺されでもしたら目も当てられない。
そんな事を全く気にしていないような振る舞いで彼女はイルカショーを心の底から楽しんでいるようだった。
「俺、視線を向けられるの苦手なんだけどな」
「ん? 何か言った?」
「何でもない。それよりほら。イルカジャンプしてるぞ」
「ほんとだ! 凄い」
子供のような表情で純粋にイルカショーを見ている天雲さんを見て俺は、やっぱりこの子とは付き合えないのかもしれないと。
心の中でそう思うのだった。




