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第20話 理性の怪物

祝! FF発売!!


早速私は毎日プレイしています!

睡眠時間を削って……

 底冷えのするような冷たい声音に温かい笑みが共存するそれは同じ人間ではないのではないかとも思えてしまった。


 頭と尻についている耳と尻尾は商店街などで良く売られている子供の玩具だと盗賊達はすぐに気が付いたが、それが本物のように見えてしまいそうにもなった。


「……止まれ!」


 緊張で固まっている者達の中で一番に回復した頭は持っている斧を少女の眼先にまで持って言って威嚇した。


「……」


 少女は怯えるでもなく、ゆっくりと視線を上にあげて、大人達と目があった。


「ッ!」


 そこには人間の瞳なんてものはなかった。


 幾つもの負の感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ったような、理性的でもあり狂っているようでもある、矛盾を内包している瞳を彼女はしていた。


「おじさんは、だれ?」


 無邪気な子供らしい笑みと声音でそれは首を傾けて聞いてきた。


「俺達は……いや、俺達の前に、聞きたいことがある」


「ねぇ、これどうやってついてると思う?」


 それは話など聞こえていないかのように徐にその頭についている耳を指さした。


「人の話を……」


「アハハハ、これね、縫い付けてあるんだぁ」


 男の言葉はそれの笑い声で中断させられてしまうが、続けざまに言われた言葉に盗賊達は目を見開き硬直した。


「服を縫う糸で、裁縫用の糸で、針で、無理やりに付けられたんだぁ」


 それが耳を手で引っ張ると黒い糸らしきものが頭皮と耳についているのが分かった。


 見ていてとても痛々しいそれは悪行を積みかさねてきた盗賊に冷や水を被せたかのような衝撃を与えた。

「これね、最初はすっごく痛かったんだ。痛くて痛くてすっごい泣いたんだ。泣いて、喚いて、暴れて、抵抗して……でも、痛いことは止まらなかった。けど、もう大丈夫」


 何が大丈夫なんだと一人が答えようとしたが先にそれが答えた。


「私、痛みを感じなくなったんだ」


 それは人間の体のもっとも重要な痛覚が消えたことに心の底から喜んでいた。


「足で蹴られても、頬をぶたれても、爪を剝がされても、皮膚を焼かれても、もう痛くないの。だから、だからねぇ……」


 三日月のように吊り上がった口角をしたそれは耳を掴むと、力強く引っ張った。


 ブチブチと糸が切れる音を響かせながら笑う狂気の少女は湧き水のように流れ出る血で瞳を彩りながら呟いた。


「こんなことしてもねぇ、全然、痛くないんだぁ、アハハ、ハハハハ!」


 あまりの光景に自分が傷ついていないのに頭を抑える者が出るほどに、今盗賊達が見ているものは痛々しかった。


「アハハ、フフフ」


「ひっ!」


 笑いながらそれは脇に座っている両足の骨が折れた一人の少女に視線を向ける。


 向けられた少女は血の薄くなった顔をさらに薄くして小さな悲鳴を上げた。


 頭から流れ出る血を床に垂らして痕を残しながらそれは少女に歩み寄る。


 床を鳴らしながらゆっくりと近づくとそれは少女の目線に合わせるために膝を曲げる。


「私ね、もうすぐ死ぬんだ。私の中がね、もうボロボロなんだって。だから、先にあの世で待っててよ。後から行くからさぁ」


 小さい子供に言い聞かせるような声音で呟かれたそれは少女の耳に入っているかも怪しい。


 それが部屋に入ってきてから、部屋の中にいた子供は全員、体を震わせ、目から涙を流している。


 今至近距離で相対している少女の体や眼球など、生まれたばかりの小鹿のようにガタガタと震えている。


「あ、心配しなくてもいいよ。あの世でも私を虐めていいから! 痛みがないからもっと耐えられると思うんだよね!」


 血を流しながら元気に言うそれは本当は人間ではないんじゃないかとすら思えて仕方がなかった。


「またこれを付けてもいいよ。飼い犬にかみ殺されるのも、いいんじゃないかなぁ」

 言い終わるとそれは少女の髪を無造作に掴み取った。


「い、いや……いやぁあああああああ! ごめんなさい! やめて! やめっ!」


 少女の悲鳴の狂女の歓喜が混ざり合った空間は悍ましいの一言では言い尽くせなかった。


 それは少女を床に叩きつけた。


 痛覚と一緒に感覚もなくなってしまったのか思いのほか力強い一撃になってしまい、床が陥没するほど

の力で叩きつけられた少女は一回で死んだように気を失ってしまった。


 だが、それで満足したのかそれは次の得物へと足を向けた。


「お、お願い! 止めて! た、助けて! お願い! 何でも言うこと聞くから、何でもしますから!」


「うん、ありがとう」


 次の少女の泣きながらの懇願にそは笑みを浮かべると錆びた鉄パイプを少女の腹に突き刺した。


「ウグ! うっ、げえぇ!」


 顔を下に向けられない少女は吐いた血を口から出すことができず、溜めることになり呼吸ができなくなって苦しみ悶え始めた。


 それは再び笑みを浮かべるとまた次の得物へと視線を向ける。


「お、お前! もう止めろ! なんでこんなことしているんだ! 彼女達がいったい何をしたっていうんだ!」


「おい!」


 それの行う行為に溜まらず声を上げた元神父の言葉にそれは笑うのを止め、動きを止めた。


 仲間が肩を掴むが男は無視して言葉を続けた。


「この世に殺していい人間なんていない! こんなことをしてもいい人間なんていない! 今君はしてはいけないことをしているんだ! 君はまだ子供じゃないか! 今すぐ今している好意を止めるんだ! 君なら俺達と違って、まだ間に合う!」


 言っている男自身でも自分が何を口走っているのかわかっていない。


 まだ間に合うと口にしているが、すでに手遅れなのだと男は思っているし、確信している。もう引き返すことができないまでに彼女は堕ちていることに。


 だが、男はそんなことを考えるよりもまずは彼女が行っている悪行を止めることしか頭になかった。

 一刻も早く彼女を止めなければならない。


 そんな義務感が彼を動かした。


「……」


 男の言葉を聞き終ったそれは後ろを振り返り、盗賊達と再び目を合わせた。


 そこには笑みが張り付いている。


 笑顔の仮面を皮に縫い付けてあるかのようにそれは常に笑顔だ。


「見るかい?」


「……は?」


 それは男に尋ねた。


「私の作品、特別に見せてあげよう」


 雰囲気が変わった。


 先ほどまで狂った化物のような姿をしていたのに、今それは正に知的な少女という言葉が似合いそうな人間らしい笑みを浮かべていた。


 それが、盗賊達、子供達には気持ち悪かった。


「……?」


 言い終わると少女はゆっくりとした動作で壁に向かい、手をついた。


 すると少女は、壁を掴み、勢いよく剥がした。


「ッ!」


 剥がれた壁はただ壁のように見せるための紙に描かれた背景だった。


 そして壁の後ろから現れた本当の壁は、壁ではなくなっていた。


「……!」


 誰もがそれに魅了された。


 周りが血の匂いや死臭が充満していても気にならなくなるほどにも、その壁だった物は芸術的だった。


 そこには二枚の花が重なって咲いていた。そしてそれを囲むように作り出された付属品達がその花達を更に印象付けるように置かれていた。


 決して絵で書いているわけではなく、それは壁を掘って作られていた。



 これこそが芸術。



 誰にも真似ができるとは思えない作品に盗賊達は自分が盗む者であるはずなのにその作品の虜となった気分を味わい、それを苦とは思わなかった。


「やっぱり、あなた達もそうなった」


 魅了されつつあった盗賊達を正気に戻したのはあきれたような言葉を吐いた少女だった。


「私はね、周りの大人からは神童って呼ばれていたんだ。私は今までいろんな呼ばれ方をしてきた。〝百年に一度の天才〟〝芸術の頂点〟〝神の子〟よくもぁ子供にいろいろな言葉を付けるものだ。大人の考えることは、まぁ理解できるはできるんだけど、理解しがたいねぇ」


 少女の喋り方が変わった。雰囲気も変わった。


 今までが演技だったのか、それとも今が演目の最中なのかは彼らには分からない。


「うん? ああ、この喋り方かい? フフフ、これが私の素だよ。大人っていうのは子供が子供のようにしているのが好きなんだろう? だから、私は大人の望む子供、世間が教えた子供を演じてきたのさ」


 盗賊達が唖然としていることに気が付いた少女は彼らが何を考えているのかを察して淡々と説明を入れた。


 彼女のそのセリフに大人達は戦慄した。


 彼女は、否、それは正に神童であった。


 こんな子供が世の名にいるのだろうかと大人達は思った。


「さて、もういいかな? 私は復讐と言うものを達成した後に来るものが何なのか確認しなければならないんだ」


 話すことが終わると少女の皮を被ったそれは再び子供達に向かって歩み始める。


 その時、それの言葉に大人達を同時に疑問に思った。


「かく、にん……だと」


 確認。


 確かにそうだとはっきりと認める事。


「お、お前は、お前は! さっきまであんなに狂っていたじゃないか! そんなお前が確認!? お、おまえは……え、あ……」


 一人の男が先ほどまでのギャップに今更ながら戸惑いを覚え怒鳴り散らすが、自分で何が言いたいのか分からなくなり言葉を詰まらせる。


「……」


 それは呆れたかのようにフン、と鼻で息を吐いた。


「確かに私は狂っていたよ。復讐をするものは決まって何処か壊れている。狂っている。だから私も狂うのさ。復讐を果たした少女が、『傷女』かな。が、いったい何を感じるのか、気にならないかい? 大人君達」


 赤い目を瞑ってウインクをしてきたそれは確かに狂っていた。目の前の少女は狂っていた。おかしくなっていた。ただし、理性を持っておかしくなていた、理性的に狂気に走っていた。


 強すぎる理性が怪物を作り出していた。

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