第397話 謝罪
「ガレスさん」
「今回は色々助かった……悪いな、お前の怪我の中に俺が殴ったのもあるみたいでよ」
「いえ、あの時は仕方なかったですから」
ノンの怪我の大半はバンデルの狙撃によるものですが、肋骨の骨折はガレスに殴られたものによるものでした。あの時、彼に殴られたことでアドレナリンが分泌しており、痛みに鈍くなっていた上、体に巻きつけていた包帯をきつく締めることで骨折部分を圧迫。応急処置を自然としていたことでノン自身も気づくことなく、戦っていたのです。
「いや、謝らせてくれ。俺が魔族の流した噂に流されなければもっと万全な状態であの魔族と戦えたはずなんだ」
「噂?」
「ナーティの闇ギルドたちを捕まえた時点でこっちの方の実行犯たちを捨て駒にするつもりだったみたいなの。そこであえて、ガレスに闇ギルドの拠点を伝えて私たちと鉢合わせたってわけ」
魔族が流した噂を聞きつけたガレスはあの入り江付近を捜索。しかし、魔力を感知する魔道具が大量に密林に仕掛けられていたせいで近づくことができず、真夜中に奇襲することにしたそうです。
そして、密林を駆け抜けた先にいたのは包帯で獣人たちを連れ去ろうとしている小さな人間の男の子。獣人が連れ去られるところを目の当たりにした彼は相手が子供であっても全力で拳を振るい、ノンを海まで吹き飛ばしたのです。
「そんな根も葉もない噂に踊らされてここにいる全員を……いや、人間や獣人たちを危険な目に遭わせた。だから、すまなかった」
「ガレスさん……」
ガレスはそう言いながらその場で深々と頭を下げました。彼の態度にノンは驚いてしまいます。
「お前たちのおかげで魔族を撃退できた。誘拐事件もこれで解決。それどころか魔族と闇ギルドが繋がってることもわかって人間だけの問題じゃなくなった」
「え、それって……」
「これから俺は……獣人は人間側につく。いや、獣人だけじゃない。他の種族たちにも魔族の危険性を訴えるつもりだ」
「ッ――」
ガレスの真剣な眼差しにその部屋にいる全員が息を呑みました。獣人が人間に味方をする。そして、彼の説得が上手くいけば他の種族も手助けしてくれるかもしれない。そんな彼の言葉はまさに魔族と戦争をしている人間たちにとってあまりに――心強いものでした。
「まぁ、まずはその怪我を治すことに集中してくれ。俺は一旦、獣都に戻って事の顛末を皆に伝える準備をする。その間、悪いがお前たちはお前たちで獣都に来て欲しい。怪我人を連れて旅をするのは大変だろうけどな」
「えっと……すみません、僕ってどれくらいで治るんですか?」
今もなお、ベッドの上でほとんど身動きが取れないノンは困ったような顔をしてアレッサに問いかけました。今はダレッツの街にいるのでガルモ国の首都の別名である獣都まで旅をした場合、一か月ほどかかるはずです。
しかし、それはあくまで普通に旅をした場合の話。ノンは怪我を負っているため、その歩みは遅くなってしまうのは間違いありません。そのため、完治までの期間が短ければそれを待って出発した方がいいでしょう。
「あー……」
ですが、ノンの質問にアレッサはどこか気まずそうに目を逸らします。そういえば、アレッサも足を骨折しているため、ノンと同様に旅をするのは難しいでしょう。それが気がかり――。
「――全治半年」
「……は?」
「順調に回復したとしても全治半年よ。あなたの怪我はそれだけ大きいものなの」
「……え?」
――そんなことを考えていると想像以上の言葉がアレッサの口から出てきたため、ノンは間抜けな声を漏らしてしまいました。
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