第396話 反省点
「ノン!」
「ノン君!」
アレッサが去ってから数分後、ドタバタと足音が聞こえ、ベッドへアゼラとミアが勢いよく駆け寄ってきました。二人の手は包帯で覆われていますが他に怪我はないようです。
「アゼラ、ミア。無事でよかった」
「よくねぇよ! お前、こんなボロボロに……俺、何も役に立てなくて」
アゼラとミアはガレスとの戦いでは自分の役割をきちんとやり切りました。そのおかげでガレスはノンの話を聞こうとしてくれたのです。
しかし、バンデルが現れてからは違いました。彼らはアレッサが戦っている隙にノンが下敷きにされてしまった小屋の残骸を退けて彼を救出。その後はただ見守ることしかできなかったのです。
「でも、アゼラたちが助けてくれなかったら皆、あの魔族にやられてたよ」
ですが、あの時、彼らがノンを助けていなければバンデルの魔法を止められず、全員殺されていたのは間違いありません。
きっと、バンデルもアゼラたちがノンを助けに向かったことに気づいていたでしょう。それを見逃されたのは子供だったから。何をしても子供のやることだからどうにでもなる。そんな慢心を引き出したのかもしれません。少なくともノンを助けにいったのがアレッサやグレイクだったら止められていたでしょう。
「それでも……私はちゃんと戦力として役に立ちたかった」
ノンの励ましにミアは苦しそうな表情を浮かべて呟きます。彼女は船上でも砲撃を止める術を持たず、補助に回るしかありませんでした。だからこそ、余計に悔しいのでしょう。
「それならオレもだ。最後の一撃以外、何もできなかった」
「グレイクさん……」
アゼラたちとの会話に夢中でグレイクがいたことに気づくのが遅れたノンは思わず彼の名前を漏らしてしまいます。グレイクもアゼラやミアと同様、悔しそうに顔を歪めていました。
「でも、ガレスから聞いたわ。最後の一撃はとんでもなかったって」
「使ったら気を失う欠陥品だ。あの時もほぼ自棄だったのは間違いない」
連結は強力な技ですが獣人であるグレイクが使用すれば矢を放った瞬間、魔力切れによって倒れてしまいます。これまでに使ったのも片手で数えられるほどであり、決まって使い終わった後に気を失ってしまいました。意識を取り戻すまでの間に魔物に襲われなかったのは運がよかったとしか言いようがありません。
「それを言うなら私だって怒りに任せて後先考えずに攻撃しちゃったし……今回の戦いは皆、反省するべきことばっかりよ」
今回、バンデルとの戦いで最も活躍したのはアレッサなのは間違いありません。しかし、冷静に考えればノンがやられたことで切れてしまい、暴走したとも言えます。それがたまたま魔族の回復力の限界、という弱点を見つけるきっかけになっただけであり、それがなければ今頃、ノンたちはこの世にいません。
「あ、そうだ。あの魔族ってどうやって倒したんですか?」
「ああ、それは――」
バンデルと戦っている間、ほとんど気絶していたノンはその内容を知らず、首を傾げてしまいます。このまま話をしても食い違いが発生してしまいそうだと判断したアレッサは手短に魔族との戦いを説明しました。
「そっか……師匠の本気、見てみたかったです。今度、見せてください」
「嫌よ、疲れるもん」
「おう、邪魔するぞ」
面倒臭そうにノンのお願いを却下するアレッサですが、その後ろから大きな人影が現れます。ノンはその人に見覚えがありました。
「あなたは……」
「元気か……っていうのは違うか。とりあえず、無事でよかった」
そう、彼はガルモ国国王、獣人の頂点に立つ男――獣王ガレス。その人がどこか居心地悪そうにしてノンに声をかけてきたのです。
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