第392話 証明
「ぎゃあああああああ!」
【轟雷】を受け、体の内側から雷を浴びせられたバンデルは悲痛な叫びを上げながら砂浜へと落ちていきます。彼の体はアレッサの読みどおり、回復する兆候は見せず、全身黒焦げのまま。
「せ、めて……あなただけでも!」
「やっぱ、駄目か」
しかし、それでもバンデルは気を失うことなく、自由落下を始めたアレッサへと右手を向けました。普段なら炎を噴出して逃げられる彼女ですが、今の一撃で魔力が底を尽き、視界が歪むほどの倦怠感に襲われています。
「だが……もう終わりだ」
それでも、彼女は勝ち誇ったように口を歪ませ、目を閉じます。自分にできることはやった。だから、あとは仲間に任せよう。そう考えながらアレッサはそっと意識を手放しました。
「……」
アレッサの大きな声でバンデルの身に起こっている現象を知ったグレイクは悔しげに拳を握り締めました。魔族と初めて対面し、アレッサにあれほど痛めつけられてもなお、立ち上がった不死性の厄介さにいつの間にか恐ろしさを覚えていたのです。
ですが、彼女は諦めていなかった。ノンがやられ、何度も殴っても立ち上がってくる魔族を前にし、体力も魔力もギリギリ。そんな状況でも何かできることはないか、とバンデルを観察し続けたから気づけた、一発逆転の可能性。
そして、何より砲撃の魔法を使われそうになった時、アレッサは生きているかもわからなかったノンを信じた。彼ならきっと、助けてくれる。そう、信じていたからこそ、グレイクを止めたのです。
また、立っていることすら難しいほどダメージを受けていたノンもその信頼に応え、砲撃の魔法を食い止めた。あの時、それが最適解だったとしてもアレッサの顔には焦りの色は見えなかったのを覚えています。
「……」
ノンとアレッサと出会って早一ヶ月半。まだそれほど長い時間を共に過ごしたわけではありませんが、人間を信じられないグレイクでも二人のことは信頼しているつもりでした。
しかし、あの時、グレイクは≪破魔≫を使おうとした。それはノンとアレッサのことを信じていない証拠。自分の力でどうにかしようとして仲間に頼らなかった証。
「……」
はっきり言いましょう。グレイクは悔しい気持ちで胸が一杯でした。なし崩しについてくることになったこの旅ですが、この短い時間の中でいつの間にかノンたちを本当の仲間だと認識するようになっていたのです。
「……まったく」
そんな仲間を信じることができなかった。それが悔しくて、悔しくてたまらないのです。
だから、これは改めてノンたちを仲間だと認める誓いのような行為。使うことをためらっていたとっておき。それを今ここで使う。それが自己満足だとしても、彼にとって必要なことでした。
「連結」
バンデルはすぐそこまで落ちてきています。魔法を使おうとしているのか、彼から凄まじい量の魔力が放出されていました。時間はありません。
「……」
グレイクはスキルを使い、目の前に一本の矢を作り出します。その矢は白く輝き、砂浜を優しく照らしました。
「すぅ……はぁ……」
その矢を弓に番え、深呼吸。そして、それを落ちてくるバンデルへと放ちます。放たれた矢は不自然なほど静かに宙を駆け、吸い込まれるようにバンデルに刺さりました。
「は?」
横腹に刺さった白い矢にやっと気づいたのか、バンデルは焦げた顔をそれへ向け――その瞬間、小規模な爆発が彼を包み込みます。とっておき、と言っておきながらあまりに地味な攻撃。
しかし、この矢の真骨頂はここからでした。
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