第366話 疑問
「っ! ほんと、いつも突然なんだから!」
甲板へと落ちていく中、ノンがアレッサへ叫ぶと何故か裸足になっていた彼女は文句を言いながら甲板を蹴ってノンに向かって跳び上がりました。そのまま空中で態勢を変えます。
「無理そうなら言いなさいよ、ね!!」
そう言いながら落ちてきたノンの靴底にドンピシャで右足を当てて全力で彼を蹴り上げました。
「こ、のっ!」
再び、空に戻ってきたノンは左の盾を前に押し出して九発目の砲撃を止めます。もちろん、その間に右の盾の修復は終わっており、数秒後に飛んできた十発目の砲撃も防ぎました。
「グレイクさん、次お願いします!」
「わかった」
右の盾が崩壊するのを見ながらノンが叫ぶと甲板でグレイクが白い矢を作り出して弓に番えます。そして、十一発目の砲撃を左の盾で受け止めた彼は再び、二枚の盾を作り始めました。
「今!」
「≪破魔≫」
ノンの盾が完成するまでの間、時間を稼ぐためにアゼラの合図に合わせ、グレイクが破魔の矢を放ち、十二発目の砲撃を打ち消します。そのおかげでノンの両側には巨大な盾が再び姿を現します。これで少なくとも四発の砲撃を防げるでしょう。
「……?」
いつでも右の盾を前に出せるように準備していたノンですが、数秒、十数秒、数十秒、と時間が過ぎても一向に魔力感知は反応しません。その間にもう一度、アレッサに蹴り上げてもらいましたが結局、数分経っても砲撃は飛んできませんでした。
「……終わった、んでしょうか?」
「……どうだろうな」
とりあえず、甲板に降りて様子を伺いますが何も起きません。おそるおそる仲間たちへ話しかけてみますがグレイクも困惑しているようでジッと砲撃が飛んできた海の向こうを睨みつけています。
「アゼラ、何か感じる?」
「……ううん、何も。さっきまで感じてた嫌な予感も消えた」
沈黙が続く中、唐突にアレッサがアゼラに問いかけると彼は顔を青ざめさせながら首を横に振りました。アゼラだけでなく、ミアも体を震わせながらもなんとか立っている状態。あれだけの砲撃が何度も飛んできたのです、恐怖を覚えても不思議ではありません。
「とりあえず、グレイクは魔力を回復させるために休んで。ここは私とノンで監視しておくわ」
アレッサは今もなお、上空にある二枚の盾を見上げながら提案します。ノンの盾は強力ですがあの砲撃を連続で防げるのは四発まで。必ず、五発目を誰かが防がなければならず、グレイクの破魔の矢が有効なのは間違いありません。砲撃がいつ、飛んでくるかわからない現状、少しでも魔力を回復しておくに越したことはないでしょう。
「……すまない」
「アゼラとミアも休んでて。眠れないかもしれないけど横になるだけで違うわ」
「……ああ」
「わ、わかりました……」
アレッサの提案にグレイクたちは素直に頷き、客室へと戻ってきます。船員たちも砲撃が止んだからか、甲板の様子を見に来ましたが詳しい話は夜が明けたらするとアレッサは追い返しました。
「……」
結局、甲板に残ったのは二枚の盾を維持するノンと彼の補助をするために残ったアレッサ。二人の間に会話はなく、夜風と波の音だけが響きます。
(でも、どうして途中で止めたんだろ……)
そんな中、ノンはぐるぐると思考を巡らせていました。その内容は主にあの砲撃についてです。
何故、いきなり砲撃が止んだのか。魔力の限界。そう結論付けるのが普通です。むしろ、あれだけの砲撃を十二発も休みなく、放てたこと自体がおかしいのでしょう。
しかし、それはあくまで普通の魔法使いだった場合の話。相手は十中八九、魔族でした。彼らは頑丈な体と膨大な魔力、そして、不死性を持つ恐ろしい相手です。そんな相手ならもっとあの砲撃を撃てても不思議ではありません。
では、どうして、砲撃を止めたのか。何より、相手はノンの魔力感知範囲外にいました。まるで、ノンが広範囲の魔力感知を使えることを知っていたように。
「……」
そんな疑問が何度も頭に浮かびますがその答えは見つかりません。そして、気づけば海の向こうから太陽が顔を出し、朝がやってきました。
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