第365話 破魔
グレイクが稼いでくれた時間は数秒。ですが、ノンが状況を把握して心を落ち着かせるには十分でした。
魔力を注ぎ、包帯を伸ばし、盾の形を作って、硬質化。やることは変わりませんがその速度は先ほどとは比べ物にならないほど速く、砲撃を視認できた時点で盾が完成しました。
そして、着弾。最初は簡単に破壊された盾でしたが十分に魔力を込められたので半壊程度にまで抑えることができました。
(修復!)
五発目の砲撃を防いだノンですがもう油断はしません。即座に崩れかけた盾を修復します。シュルシュルと包帯と包帯が擦れる音が夜の海に響く中、六度目の魔力反応を感知しました。
「グレイクさん! 次はお願いします!」
そうノンが叫ぶと同時に砲撃が盾に激突します。しかし、修復した盾は砲撃を受けきることはできましたが崩壊してしまいました。もちろん、ノンもそれがわかっていたからこそ、ノンはグレイクに次をお願いしたのです。
「アゼラ、合図」
バラバラになった包帯が舞う中、グレイクの低い声が不思議と響きました。その手にはいつもの弓と真っ白な矢。それを番え、前を見据えます。
「……今!」
アゼラの声とノンの魔力感知が七度目の魔力反応を感じ取ったのはほぼ同時でした。
「≪破魔≫」
間髪入れずに放たれる白い矢。それは真っすぐ前に進み、海の向こうから飛んできた砲撃と当たった瞬間、それらは嘘のように消えてしまいました。
(やっぱり、あの矢は)
破魔の矢。魔法を打ち消す効果を持つ強化装備。どれだけ強大な魔法だろうと無効化してしまう魔法使い殺しの矢。ノンの魔法の無効化は魔法が形になる前に干渉しなければ効果のない技術ですが、この矢は形になった魔法をかき消してしまいます。ノンとグレイクが揃えば魔法使いは完全に機能が停止してしまうでしょう。
「ッ……」
ですが、それだけ強力な強化装備を作り出すにはそれなりの魔力を使うのでしょう。まだ二本しか放っていないのにグレイクは苦しそうに顔を歪めました。
(可能な限り、僕が防がないと!)
砲撃はすでに七発。それなのに砲撃が飛んでくるペースやその威力は落ちていません。普通の魔法使いでは絶対にできない芸当。つまり、この砲撃を放っているのは――。
(――魔族!)
海の向こうにいる敵にノンは顔を歪め、続けていた作業を終えます。グレイクが稼いだ数秒。今度は最初から盾を作ることができたため、先ほどよりも大きく、頑丈に――それが二枚。そう、左右の包帯で一枚ずつ巨大な盾を作ったのです。そんな二枚の盾が彼の両側で白く輝いていました。
「う、らああああああ!」
すっかり慣れてしまった強大な魔力反応。その反応に合わせてノンは絶叫しながら空中で右腕を振るうとその動きに合わせて右の盾が前へと突き出されました。その大きさ故、凄まじい風が巻き起こり、甲板にいた仲間たちの髪や服がバタバタとなびきます。
巨大な盾と砲撃の激突。そして、今度こそノンの盾は砲撃を完全に防ぎました。ですが、再びノンは重力に捉われ、自由落下が始まります。
(砲撃を防ぐなら絶対に空中にいないと駄目だ!)
しかし、包帯は盾に使っており、跳躍するための包帯を伸ばすことはできません。
「師匠、蹴り上げてください!」
だから、彼は仲間を頼ることにしました。
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