第362話 検証
「へぇ、スキル! それが本当だったらすごいわ!」
正午過ぎ、お昼ご飯を食べたノンたちは甲板に移動し、事情を知らないアレッサとミアにアゼラがスキルに目覚めた可能性があることを伝えました。すると、その希少性を知っているアレッサは目を見開き、少し離れた場所でスキルのことをグレイクから聞かされているアゼラへと視線を向けます。
「そんなにすごいことなんですか?」
それに比べてミアはアレッサの驚く姿を見て首を傾げました。ですが、彼女は故郷で無数の本を読んでいたため、様々なことを知っています。そのため、ミアが不思議そうにするのはこの一か月間、ほとんどありませんでした。
「ミアはスキルに関する本とか読まなかったの?」
「うん、あまりなくて……あ、そっか。スキルを持ってる人が少ないから文献に残りにくいんだ」
ノンの質問でスキルに関する本が少ない理由に行きつくミア。やはり、知識や考えることが得意な彼女はほんの少しのヒントだけで答えを導けるのでしょう。きちんと訓練を積めば優秀な斥候になるのは間違いありません。
「でも、確証がないのよね? どうやって確認するの?」
「確認すると言っても確定させるわけじゃありません。どれくらいの精度があるか、とか。どんな条件で発動するか、を少し試すだけです」
「まぁ、今のところ、ノンが見つけた大きな魔力反応と同じ場所に嫌な予感を覚えたってだけだもの。でも、『危険察知』かぁ」
ノンの提案にアレッサは腕を組んで唸ってしまいました。危険察知系のスキルはアレッサも聞いたことはあります。しかし、そのスキルが発揮するのはあくまで危険が迫った時だけ。陸上であれば適当な弱い魔物と戦うことでその効果を確かめられるかもしれませんがここは海上。都合よく海の魔物に出会うのは難しいでしょう。
「あ、大丈夫です。いい考えがあります」
「考え?」
「はい、こうやります」
そう言ってノンは右の袖から包帯を勢いよくアゼラに向かって射出。それは当たれば怪我は免れないほどの勢いでノンに背中を向けている彼へ――。
「ッ――」
「え!?」
――突き刺さる直前、アゼラは何かに気づいたように振り返ることもせずにその場でしゃがみました。視認すらしていない状態でノンの包帯を回避した彼を見てミアが大きな声を上げてしまいます。
「よっと」
しかし、それでもノンは止まりません。驚いたようにこちらへ振り返ろうとしているアゼラへ左の包帯もプレゼント。その先端が彼の肩へと迫る中、アゼラは振り返る勢いを利用してその包帯の下を潜るように体を動かしてやり過ごしました。
「お、おい! いきなり何すんだよ!」
「ごめんね、ちょっと確かめたいことがあって」
包帯で攻撃されたアゼラはノンへと詰め寄ります。そんな彼に対し、申し訳なさそうにしながら謝った後、視線をアレッサに向けました。
「今の見てどう思いました?」
「……危険察知系のスキルを持ってる可能性は高いわね」
アゼラは攻撃を目視していませんでした。しかし、それでも彼は見事に包帯を避けたのです。アゼラにあの攻撃を回避するほどの技量はないため、スキルの恩恵を受けていると考えるのが妥当でした。
「なんだ? スキルを試すために不意打ちしたのか?」
「うん、ビックリさせちゃってごめんね」
「まぁ……いいけどよ」
スキルの検証をするための行動だとわかったのか、アゼラは納得できていない様子ですがノンのことを許しました。
「でも、やっぱり確証はないわ。危険察知系のスキルかも、ぐらい。ひとまず、アゼラが嫌な予感を覚えたら参考にする程度で様子を見ましょう」
「そうですね……わかりました」
アレッサの結論にノンは少し肩を落として頷きます。やはり、『ステータス』がなければ確証を得られず、その日の検証は終わりました。
しかし、この日の夜、アゼラの力は本物だと認めざるを得ない事態が発生するのです。
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