一致団結!
「玲央! 剣一!」
「母さん!」
近づくのを止められていた直美も校庭を走って息子二人に駆け寄る。
「剣一!」
「母さん、ごめん」
蘇る際、椿の血で不死になってしまった。
産んでもらった身体が変化してしまった。
その事を考えると母への罪悪感で剣一の胸が痛む。
「何も謝る事なんかないのよ……帰ってきてくれただけでいいの……良かったわ」
自分より背の小さな母親に兄弟は抱き締められ、二人はそっと震えて泣く母を支えた。
「玲央もありがとう……篝の守護が解けたのね」
「そうみたいだ」
「顔をよく見せてちょうだい」
両手で顔を包まれ、口元の血を拭われる。
直美にとっては、真実の顔を見るのは初めてだった。
どこかボヤケて認識できない顔の息子でも、ずっと愛し続けてきた。
「思ったとおり。篝にそっくりで、すごくすごくかっこいいわ」
先程まで死闘をしていたのに、くすぐったさで照れてしまう。
「直美にもよく似ているよ」
三人の後ろで雄剣が言う。
「父さん」
血の繋がりはない。だが直美と雄剣から引き継がれたものが沢山ある。
ほんの数分だけの取り戻せた家族団欒。
この場所に椿も必ず連れ戻す!
「じゃあ行ってくるよ!」
「待って! 二人とも団服を着替えていきなさい、少しでも身を守れるように!」
麗音愛の団服も切り裂かれ、剣一は軍服を脱ぎ捨てたのでシャツ姿だ。
「俺の特注団服ある? 今こそ着る時だよな」
「持ってきてはいるけど……白い団服、さっきのと同じで縁起が悪くない?」
「形も意味合いも全然違うじゃん! 白夜団で白い団服、当然だろ。聖騎士としての活躍見せつけてやるさ!」
「兄さん、そんなもの作ってたの?」
「そっ! 今後に広報で使うかもしれないって派手なの作ってたんだよな……お前も欲しかった?」
「兄さんは白が似合うけど、俺は黒でいいや」
直美が白夜団の団服を剣一に渡す。
白夜団・団服のデザインそのままで純白だ。
マントも白く華々しい。
麗音愛も新しい団服に袖を通す。
普段の黒色が落ち着く。
「それじゃあ急ぐぞ! えっと……爽子はいないか……!?」
白い手袋を嵌めた剣一が辺りを見回す。
「いるに決まってるっす! あんたこそどこ行ってたんすか! このロリコン部長!」
爽子が双眼鏡を首からぶら下げ、詰め寄るように剣一の元へ走ってきた。
「誤解だって! ……そんな事よりプロジェクトはどこまで進んだ!?」
「もう施設自体は全国で急ピッチで設置したってんだぁ! あとは青炎結界石だけ! ……でも椿ちゃんが……」
椿も戻ってくるかもしれない……そんな期待が裏切られたと、爽子は下を向く。
「よし、よくそこまでやっていてくれた! 大丈夫だ。青い炎なら俺が創れる!」
片手を差し出した剣一の周りに青い炎が生まれた。
「ひゃ!? ロリコンファイヤー!!」
「風評被害やめい!」
「兄さん、炎まで出せるのか。チートかよ」
椿の血が入ったとはいえ、此処まで桃純家の能力を操れるのは剣一が天才ゆえだろう。
「お前には負けるよ。爽子、急いで青炎結晶を作るぞ!」
「了解っす!」
「じゃあ俺は先に街へ行く!」
「気をつけろよ、後で俺も行く」
「了解!」
既に白夜団の団員が妖魔の降り立った場所へ向かっているが、あれだけの数だ。
すぐに駆けつけなければ、団員にも危険が及ぶだろう。
「玲央ぴー!!」
「剣一君!」
「剣兄!」
「サラー!!」
麗音愛と剣一の元に高校生組が急ぎ駆け寄ってきた。
皆が剣一の生還を喜ぶが、今は時間がない。
「龍之介! 鹿義! 街に妖魔討伐へ行くぞ!」
「おう!」「オッケーじゃん!」
皆が力強く頷く。
紅夜や妖魔に怯えている者はいない。
「まずは街の妖魔を駆逐して、そっから椿を助けて紅夜をボコりに行くんだな!」
「そうだ!」
「やってやろー! あたしら人間舐めるなってのぉ! こっちは準備万端なんだからね!」
龍之介と梨里がそれぞれの斧と棍棒の明橙夜明集を空に掲げる。
「美子と佐伯ヶ原はこの本部にいて母さん達をサポートしてくれ! 兄さんからの指示もある」
「わかったわ……!」
「サラ、ご武運を! お前らも気をつけろよ!」
頷いた麗音愛が空へ飛び立とうとした時、名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「咲楽紫千さん! 待ってください!」
「宿目さん?」
「摩美が! 話があると……!」
「摩美が?」
少しの時間で摩美との話を終え、麗音愛は街へ飛ぶ。
空から見ると、暗い街であちこち炎があがり悲鳴があがっている事がわかる。
剣一から紅夜の城へ乗り込む手段があると聞いた。
街の妖魔など一掃して、すぐに椿を助けに行きたい。
「椿……あともう少し待っていてくれ……!」
麗音愛は晒首千ノ刀を構え、渦中へ降り立った。
妖魔が一斉に牙を剥く――!




